第9話②~天才? パズル女子プレイヤー現る!!~
テトリスの厳しさを思い知らされた剣とみのり。
一旦筐体から離れて、休憩用のベンチに二人きりで休んだ。
「でもテトリスも奥が深いわね。どんな形のテトリミノが降るか分からない上、咄嗟の判断で、テトリミノをどこに置くか決めなきゃいけない。難しい世界だわ!」
みのりはお手上げな感じで頭を抱えた。
「それだけやない。いくら綺麗に積み上げても、俺みたいに肝心の落とす位置を間違えたら、大きなミスになるから余計に焦んねん。パズル好きがやり込む気持ちも分かるよ」
剣はそう言いながら、ベンチから少し離れた場所に設置されたモニターボードを見つめている。
(≪テトリス日間スコアランキング1位 畠田レミ スコア:996450≫、か……)
ゲームを上達させるためには、実戦を積み重ねるのもそうだが、最強プレイヤーのプレイを見て、模範プレイを参考に勉強するのも手である。
≪畠田レミ≫……!!
剣はハイスコアボードの頂点に刻まれた名前に、狙いを定めた。
「……何ボーッとしてるの? 剣くん」
みのりは剣をジーっと見つめた。
近くで見つめられているのに剣は後から気付き、たじろいだがすぐに平静を装った。
「……やっぱり上達するには、トップから学ぶのが近道やな!」
「トップ??」
「トッププレイヤーを探そう! ああいうタイプは毎日ゲーセンに通ってるって相場が決まっとる」
剣の持論が当てになるかはさておき。剣達はテトリスのトップスコアを取った『畠田レミ』なる人を探すべく、『パズルファクトリー』内のプレイヤー達に徹底的に尋ねていった。
「――畠田レミ? ああ、その人ならまたやってるんじゃないかな。この時間になると毎日のように現れるし」
「どんな姿してました?」
「君たちと同じ高校生くらいかな。それもお嬢ちゃんみたいな、今どきの女子高生って感じ!」
(私と同い年くらいかしら)
剣達はプレイヤー達の情報を元に、無我夢中で彼女を探しにテトリス筐体のあるエリアへと戻った。
「剣くん、あの人じゃない!?」
そこには、テトリスの筐体にしがみつくように集中している黒髪ポニーテールの女の子が一人。みのりの思惑通り、彼女らと同い年の16歳、畠田レミがそこにいた!!
「に゛ゃぁぁぁああ!! またスコア100万点逃しちゃった~!!」
見つけたと同時に鳴り渡る喚声。どーやら丁度ゲームが終わったようだ。
「……あの~、もしかして貴方が畠田レミさん……?」
みのりが恐る恐るレミに話しかけた。
「だったら何? あたしの『テトリスで100万点取っちゃるけんね作戦』を邪魔しないで!」
貴方何処の生まれですか。と言わんばかりのノリだが、自称してる通り、間違いなく畠田レミ御本人のようだ。
「いや、邪魔するつもりはないんや。日間のテトリスランキング1位の人がどんな人か、見に来たんや。俺らはただの野次馬や」
しかし当のトッププレイヤーの反応は、意外なものだった。
「……あたしが1位? 何それ、いつの間に」
(え? 意識してなかったの??)
剣とみのりはきょとんとしていた。
一方のレミは、赤の他人にいきなり話し掛けられて、疑わしい感じもした。しかし自分と同年代であるのを察して直ぐに打ち解けた。
「……あたしね、小さい頃からテトリスとかパズルゲームが大好きなんだけど、スコアを競うとか、そーゆー争い事は好きじゃないのよ。
ここ最近ゲームワールドでテトリスばっかりやってて、周りがワーキャー言うと思ったら、このことだったのね。知らなかった!」
「じゃ、この『パズルファクトリー』でしか、ゲームしてへんのか?」と剣。
「うん。パズル以外興味ないもの」
「え、じゃあ、公式大会とか出たことないの!?」とみのり。
「無いわよ」
「あ、俺も」
(剣くんも乗っかかるんかい)
棚からぼたもちのような、思いがけない情報である。
「……まぁせっかくやし、レミの技を見せてくれよ。邪魔はせぇへんから」
「いいわよ。でも集中したいから静かにね?」
「勿論や」
そう言うとレミは再びテトリスを始めた。
バージョンはさっき剣達がやっていたシンプルな初期型タイプである。
―――ゲームスタート!!
(実際、他のプレイヤーを大きく引き離して100万点近く稼ぐやつが、大会に出ないのは惜しい話だが――見せてもらうぜ、その実力!)
剣は無言で視線を光らせながら思った……
―――その刹那に!!!
――ガチャン、ガチャン、ストンッッ!!
素早いレバー捌きと、軽やかなボタン連打。流星のごとくテトリミノが降り注ぐ!
ジグソーパズルのように隙間なく四段ラインを積み上げ、あとは長い棒を待つのみ。
そこへ落ちてきたのは、I型テトリミノ!
四列の隙間へ、釘を打つように正確に突き刺さった!
「―――はいっ、『テトリス』!!」
積み重ねたブロックが、一列残らず消え去った!
「な、何で!? 何であんなにあっさりとテトリスできちゃうの!?」
(……初手で全消し(パフェ)だと……!?)
一見強者らしいオーラを感じないその裏に、見せつける畠田レミの実力。
それは彼女が無意識の内に身に着けていた能力【ブラックボックス思考】にあった……!!




