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【GAMEWORLD ONLINE】極限遊戯戦記 ゲームウォーリアー  作者: Kazu―慶―
第1章【シャッフル・オールスターズ編】

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第9話⑤~諦めない者への報酬~

 ―――更に進んで15分後。




 レベルは既に100を超え、落下するテトリミノは流星の如き速度に達していた。スコアは着実に積み上がり、100万点の大台まであと2万点。




 しかし、戦略の要である『ハーフピラミッド戦法』も限界ギリギリまで来ていた。




「ハァ……ハァ……ッ!」


 開始から20分。レミの集中力は削れ、体力も底を突きかけている。




 だが、フィールドにはテトリス待機の縦四段直列空白が、八段目まで組み上がっている。


 これで2回は『テトリス』が撃てる。しかし、その代償として積み重なったブロックの頂点は、ゲームオーバーの天井を突かんばかりの高さだ。




(……レミはここでケリを着ける気だ。2連続でテトリスを撃てば、ボーナスで一気にスコアを稼げる! だがそれまで、この盤面を維持できるか!?)




 剣の言う通り、後はテトリスの鍵であるI型テトリミノを待つのみ。


 だが、肝心の「棒」が来ない。焦れったい処理が続くなか、ついにやってきたI型テトリミノ。しかし――。




「―――あッ!!!」




 僅か0.4秒。超高速化した落下速度と、安堵が生んだ一瞬の隙。レミの手元が滑る。


 頂上中央にテトリミノが突き刺さり、窒息死ゲームオーバーする寸前、レミは食らいついた。




『私は……最後まで諦めないで欲しい事かな』




 脳裏に、みのりのアドバイスが過る。




(まだよ……。こんなあたしの為に、二人は手伝ってくれた。100万点取るって約束したんだから!! ――最後まで……諦めないッッ!!!!)




 固定されるまでの刹那、レミは回転ボタンを連打してI型を右端へと滑り込ませた。溝にテトリミノが辛うじて収まる。


 危機を脱したのも束の間、剣は次に降るテトリミノの枠を見て目を見開いた。




(―――!? I型が二つ連続だと……まさか!!)




 1発目のテトリスが炸裂し、間髪入れず追撃の2発目――。




「2連釘打ち!! ダブルテトリスだーーーッッッ!!!!」




 二つの楔を打ち込むが如く、連続消しが決まった。


 テトリスを連続で発動させることで得られる高額ボーナス【Back to Backバック・トゥ・バック】。加算されるスコア。そして――。




『………えッッ!!? 【999999】点で止まってる―――!!??』




 100万点まで、あと1点。


 レミが動揺した瞬間、BGMの『トロイカ』がピタリと止まり、画面が静止した。


 ボタンを押しても反応はない。ゲーム続行不可能フリーズか。




「………そんな、あんなに頑張ったのに……」




 レミの瞳が潤み、悔しさが声に滲む。だが、剣がその悲哀を断ち切った。




「―――違うな。これは『カウンターストップ』だ!! つまり、これ以上は得点が加算されないって事さ!」


「えっ!? じゃあ、って事は……」


「完全攻略や!! レミはテトリスで正真正銘、スコアの頂点に立ったんやで!!!」




 その直後だった。




「オイ! テトリスでカンストしたってよ!!」


「マジかよ、久々の快挙じゃねえか!!?」


「よくやったなぁ!!!」




「「「―――!!?」」」




 気づけば背後には、数十人の野次馬プレイヤーが集まっていた。




「あんた畠田レミだろ!? ランキング1位の常連だからいつかはやると思ったが、ついにやったな! 【殿堂入り】だぜ!!」




「え……? 殿堂入りって何??」


 呆然とするレミに、プレイヤーの一人が興奮気味に教える。




「知らなかったのか? どんなゲームでも完全攻略したプレイヤーは、ランキングを超越した名誉の象徴として【殿堂入りプレイヤー】の称号が与えられるんだよ!」




「うそ……本当!!?」




 50年以上にわたるゲームワールドの歴史の中で、テトリスでカンストを果たし【殿堂入り】したのはわずか23名。


 レミは今、24人目の伝説となったのだ。野球でいう完全試合にも匹敵するこの偉業は、未来永劫語り継がれる。 その証明として、端末プレイギアのプロフィールには≪TETRIS(テトリス) ―殿堂入り達成―≫の文字が刻まれ、エリア中央の黄金のスクリーンに『畠田レミ』の名が掲げられた。




 さらに『殿堂入り報酬』として、賞金50万円と5つのレア宝箱、そして膨大な経験値が舞い込む。


 次々と現れる報酬を目の当たりにし、レミの目から溢れるものは、悔し涙から嬉し涙へと変わっていた。




「……あたし、こんな事今までなかった。あたしみたいな取り柄なしが、こんな記録を残して、皆に凄いって言われたことなんて一度も……!! ――嬉しいッッ!!!!」




「殿堂入りおめでとう、レミちゃん!!」


 みのりが惜しみない拍手を送る。




「本当にありがとう二人とも! 貴方達がいなかったら果たせなかった。感謝しきれないよ!!」


 剣は照れくさそうに鼻をこすった。




「……俺達はただアドバイスしただけや。称号を掴み取ったのは、紛れもなくレミ自身の力や。それに、大事なものもレミから教わったしな」


「大事なもの……?」




「それは【諦めない心】や! 目標に向かって突き進むプレイヤーにとって、それが一番の武器なんだ。俺もお前みたいに夢を諦めないで、『マスターオブプレイヤー』を目指すぜ!!」




 レミはその称号の重みを知らなかったが、彼の真っ直ぐな覚悟は、心に深く届いた。




「……貴方も本気でゲームに挑んでいるのね。その夢、きっと叶うよ!! 私も……貴方達みたいな優しい人達と、友達になれたら良いな……」


 レミは少し自信なさげに口ごもる。




 そんな彼女を、みのりが背後からガバッと抱きしめた。




「はわっっ?!」


「恥ずかしがる事なんてないよ、レミちゃん!」


 そして剣が、真剣な眼差しで告げる。




「―――俺達、もう友達だろ?」




 レミの目尻から、また涙が溢れ出した。それを手で拭い、最高の笑顔で返す。




「……最後の最後まで、貴方達には敵わないな。あたし、また二人に会いに行くわ! 現実でも、ゲームワールドでも友達として!! ――ねぇ、最後に二人の名前を教えて!!」




「俺は桐山剣!」


「私は河合みのり!」




「俺達、大阪の浪速区でゲーミングチーム『シャッフル』を作って、メンバー募集してるところや!! 縁があったら、また会おうぜ!!!」




 二人はそう言い残してログアウトし、現実世界へと帰還していった。




(………『諦めない心』。でも、その気持ちを思い出させてくれたのは……剣くん、みのりちゃん、貴方達よ――!!)




 畠田レミ。この日、彼女は初めて心の底から【親友】と呼べる存在に出逢った。




 ◇◇◇






 ―――翌日。天童学苑高校にて。




「へぇ~、パズルファクトリーで殿堂入りね……」




 他のゲームワールドのエリアのパトロールをしていて出番も解説も無かった槍一郎に、剣は昨日の件の話をしていた。




「あのブラックボックスなプレイヤー、滅多におらんからな~。今度会ったら絶対チームに入れようと思ってんねん。でも、何処に住んでるか分かんなくてさ」




「でも名前は聞けたんだろ?」


「うん。畠田レミちゃんってゆーの!」


 レミの名前を聞いた瞬間、槍一郎の顔色が変わった。




「………ちょっと待て。その子、僕の組のクラスメイトだぞ!?」




「「……はぁ゛!!!???」」


 急いで槍一郎のクラスの5組へ剣達は向かった。




 ――天童学苑の制服に黒髪ポニーテールの女の子が一人。間違いない、ゲームワールドで出逢った畠田レミが、現実世界でもまた逢えた!!




「おい、レミ!! また逢えたなぁ!!!」


 剣の叫び声にレミは気づいた。




「―――あっ!!?」






 ―――あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああああ!!!!!




 身近にいるのに気づかない事って、本当にあるんですね~☆






 その後、剣から直々の誘いで畠田レミは『シャッフル』の4人目のメンバーとして入団したことは……言うまでも無かった。

【作者 余談話】

改稿作業していて、テトリスの事をまた調べていたら凄いことが書いていました。


『2023年12月21日、アメリカ・オクラホマ州在住の13歳の男性が任天堂版テトリスをプレイした際に「999999」の得点を叩きだし、完全攻略した』んですって!


これまで人工知能(AI)がテトリスを完全攻略した事例はあったが、人間による完全攻略は初めてとの事。


レミちゃんが達成したカンストを、現実で初めて達成したこの快挙。人類がコンピューターを超える、これがあり得ない事では無い事を証明したような気がします。


人類の極限を賛歌する作品が、このゲームウォーリアー。僕は挑戦を諦めない全ての人を応援する為に執筆を続けていきます!! 2024年10月6日 ―慶―

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