第8話③~決戦は土曜日!!~
「――で? 何が理由で揉めとったんや、新喜劇みたいに」
大人同士のいざこざに割り込み、いつの間にか騒動の主導権を握ってしまった高校生、剣。
状況を整理するとこうだ。ゲームジム『ビッグウェーブ』に借金取りが押し入った騒動に見かねた剣が、痺れを切らして介入した……というわけである。とはいえ、高校生に場を収められる大人たちというのも、妙な構図ではあるのだが。
「早い話が、この『ビッグウェーブ』が赤字で借金を抱えていたんだ。ジムの会員がまだ少ないことと、ここの『ゲームと筋トレの融合強化プログラム』が、まだ世間に浸透していないのが原因の一つだね。それで僕は何とかWGCを説得して立て直そうとしていたんだが……中々承諾が得られないところに借金取りが来て、揉め事になったってわけさ」
仲介役に回った槍一郎の説明に、剣は納得したように頷いた。そして、ジムの第一印象を率直に述べる。
「そりゃまぁ、馴染みのないプログラムにピンと来ないのも判るわ。てか、来て早々ボルダリングは酷やろ」
――グサッ!
オーナー・高橋豪樹の胸に、図星を突かれたような音が響いた。
「俺らスポ根やってるんやないし。ガチ勢狙いすぎて客を置いてけぼりにしとったら、借金取りに返す金も入ってこんよ。運動音痴にいきなり『SASUKE』やれ言うてるようなもんや」
歯に衣着せぬどストレートな指摘。思わず借金取りの面々までもが、剣の意見に深く頷いていた。
(……この兄ちゃん、見かけによらず言いたいことよー言いまんな……)
(仕方ないですよ、剣くんはそういう人ですから。でも……!)
豪樹とみのりが密かに囁き交わす中、剣は真剣な眼差しで言葉を継いだ。
「――でも、俺は興味があるんです。ゲームと『心・技・体』の強化がどう関わるのか。俺みたいな青びょうたんプレイヤーに足りないものがそこにあるなら……ここを潰させるわけにはいきません」
生意気な態度の裏にある、真っ直ぐな情熱。
(剣くんのゲームにかける情熱は本物です。どんな相手にも決して屈しない、騎士のようなプレイヤーなんです!)
その言葉が、豪樹の心に強く響いた。
「槍一郎、要は借金と経営難をどーにかすれば、この施設は存続できるんやな?」
「え? あぁ、そうだけど……」
「よし。じゃあ豪樹さん、もし経営が続けられるなら、場所がここじゃなきゃいけないって拘りはないですよね?」
「そりゃ別に構へんけど……兄ちゃん、一体何をする気や?」
「俺に良い考えがある……!」
◇
翌日。剣とみのりは、ジムの近くにある巨大アミューズメントパーク『ギャラクシー』を訪れていた。
「そうなんだよ。近頃はバーチャルゲームのやりすぎで、プレイヤーの体力低下が問題になっていてね。ちょうどニーズ改善のために、三階のアスレチックエリアを拡張しようとしていたところなんだ」
面会した相手は、『ギャラクシー』のメインオーナー・松坂茂之。多忙な身でありながら、剣の頼みとあって直々に時間を割いてくれたのだ。
「お忙しい中、ありがとうございます。それで、お願いというのは……」
「そう畏まることはない。私は君のスポンサーだ、大抵の無理は聞くつもりだよ。言ってみなさい」
「はい! 実は――」
◇
「「えぇ!? 『ビッグウェーブ』を『ギャラクシー』に経営吸収させる!?」」
報告を聞いた槍一郎と豪樹は、驚愕の声を上げた。
「三階の拡張に合わせて、『ビッグウェーブ』を新設して新規会員を増やす。そうすれば借金も返せるし、豪樹さんの理念も広まると思ったんや」
剣に続いて、みのりも補足する。
「最初は松坂さんも驚いていましたけど、新しい話題作りになると判断して承諾してくれたんです。借金の肩代わりも移設費の負担も、松坂さんが保証してくれました」
「あのギャラクシーのオーナーと知り合いだったとは……よく承諾が取れたな。剣、あの方とはどういう繋がりなんだい?」
槍一郎の疑問に、剣は事も無げに答えた。
「別に。ただの親戚やし。お互いにね」
「とにかく! 移設準備をして契約を交わせば、経営を続けられるってこと。これで借金取りさんも、もうボルダリングしなくて済むでしょ?」
「へぇ、お陰さまで……」
借金取りも、内心こりごりといった様子で応じた。
「でも、一つだけ条件があるんです」
「条件?」
みのりが不安げに切り出すと、剣がその内容を引き継いだ。
「吸収の前に、松坂さんが豪樹さん自身の実力を見たいと言ってる。次の土曜日、ギャラクシーで格闘ゲームの大会があるんや。そのエキシビションマッチとして、豪樹さんのプログラムを用いた対戦を披露してほしい……それが条件や」
豪樹はその言葉を真摯に受け止めた。
「つまり……ワイにお客さんを魅せる実力があるか、試されるっちゅーことやな」
アミューズメント施設として取り込む以上、エンターテインメント性は不可欠。常に客の楽しみを第一に考えるオーナーらしい提案だった。
「そういうことです。豪樹さん、受けてくれますか?」
「……ええで! だが、ワイの相手は兄ちゃんを指名させてもらうわ!」
「――!」
提案者である剣への、直々の指名。それは咄嗟の思いつきではなく、彼なりの意地だった。
「このまま助け船を出されっぱなしじゃ、ワイの沽券に関わる。ワイだってまだ二十五、現役のゲーム戦士や! “鉄拳魂”の誇りにかけて、格ゲー勝負、受けてもらうで!!」
豪樹の瞳に、プレイヤーとしての闘志が再燃する。
「……望むところですよ、豪樹さん!」
(剣くんの目が変わった……本気で挑む時の目!)
(剣の魂が光りだしたな。さて、豪樹さんをどこまで本気にさせてくれるか……)
二人の間に迸る覇気に、みのりと槍一郎は圧倒されていた。
――決戦は、土曜日。舞台は『ギャラクシー』へと持ち越された。
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次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




