第7話②~オフィシャル・プレイヤー現る!~
「―――ごめんね、剣くん。私の為に」
みのりは先程の妨害プレイに巻き込まれて、険悪ムードになったことにしょんぼりしていた。
「みのりが謝る事あらへんし、あんなアホ共気にすることないさ。それより凄かったやん!
一回アドバしただけでドリフトをマスターするなんて、結構レースゲーム向いてるんちゃうか?」
「……えへへ、そうかな?」
あら良かったわ。剣のフォローもあってみのりはすぐに元気を取り戻したようだ。
「それにさ、ちゃんとプレイしたから『プレイヤーステータス』もレベル上がってる」
「あ、ホントだ!」
みのりはプレイギアの『プレイヤーステータス』の画面で確認した。
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☆河合みのり/プレイヤーレベル:4→5
[プレイヤーステータス]
・アクション:111・シューティング:113
・ロールプレイ:116・タクティクス:112→114
・スピード:110→113・ブレイン:114
・ハート:120→125・ミュージック:111
・ラック:115→116
[プレイヤースキル]
・なし
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「勝ち負け関係なしにプレイしていきゃ、着々にレベルアップして強くなるさ。焦らないで気張りぃや」
「そうだね」
塵も積もれば山となる。苦い経験もいつかは笑い話になっていく。今はただゲームに挑み、進むは我道・最強への道なのだ。
「ねぇ剣くん、今度はどうするの?」
「今度は俺が行く。違うゲームで口直しや。見てろよ、みのりの仇は必ず取るからな」
そして剣達が向かったゲームは、こちら。
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PLAY GAME No.7
【|ソニックバトル・F-MAX】
・ジャンル『レースゲーム』
・プレイヤーレベル:21
概要・ルール
普通のレースゲームと特異な所は『アイテムによるレーシングカーのパワーアップ』と『多彩なドライブテクニック制度』である。
ドライブテクニックは、スタート時にタイミング良くアクセルを吹かしてスタートすると加速する『スタートダッシュ』や、ドリフトを継続すると一瞬加速する『ミニダッシュ』などを採用されている。
またコースの各箇所に『アイテムボックス』が設置されており、走行中取るとレースを有利にするアイテムがゲット出来る。
アイテムは
・『D』(ダッシュ)一定時間レーシングカーが加速する。
・『M』(ミサイル)前方または後方から一直線にレーシングカーを攻撃するミサイルを発射する。
・『T』(トラップ)相手を低速させる罠を後方から仕掛ける
など約30種類のアイテムが使える。
・クリア報酬/5000円&アイテム・スキル金宝箱2つ
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「随分破天荒なレースねぇ~、マリ◯を実写化したみたい」
何とも分かり易い例えか。みのりは少し呆れながらルール説明を傾聴する。
「そのリアルなカートに無茶やれるのがこのゲームの面白さやねん。マシンもリアル重視な分、レース技術もしっかりしてるし、妨害はあってもアイテムでリカバー出来る。良くできたゲームや」
早速剣はそんな破天荒ゲームに挑もうとするが……
「――オイッ、てめぇら!!」
主人公らに怒号を浴びせるは、見た途端に不興を買いそうなチャラチャラとした不良大人達。
彼奴らは先程『F-1レーサー』でみのりとプレイしていた陰険プレイヤー。剣が皮肉を浴びたのが頭にきたのか、寄って集って因縁を付けてきた。
「なんすか? アンタら」
「さっきはよくも俺達を侮辱してくれたな、クソガキが! お陰で周りから変な目で見られてイライラしてんだよ!!
――このゲーム時代の世の中、ゲームは勝つことが全て!! その為なら妨害でも、何でもやって勝てば良いんだろうが!!!」
短気で清楚の無い大人の陰険プレイヤーが、大人気なく理不尽に怒鳴りたてるが、こういったタイプの人間が大嫌いな剣には全然動じない。
「そりゃアンタらが妨害しか取り柄が無いからやろ?
人の邪魔して勝ち取る勝利の何処に美学があんねんな。ハッカーでも就職してみっかワレェ!?」
大人相手でも容赦無く煽りに煽る剣。当然沸点の低い大人の怒りは最頂点に達する。
「何だとゴラァ!!!!」
「剣くん、危ない!!」
陰険プレイヤーが剣の胸ぐらを掴み、今にも理不尽な鉄拳が主人公の顔面目掛けて降りかかろうとした、その時―――!
「―――やめませんか?」
剣に殴りかかる陰険プレイヤーの腕を片手で掴み止めて、制止させる者がいた。
「あ……お前は、【オフィシャル】か――!!」
「……おふぃしゃる? 何やそれ?」
陰険プレイヤーはその男を見て狼狽え、当の剣はその男を知る由もなく、興味有り気に尋ねる。
「失礼。僕は『天野槍一郎』。関西地方を中心に【オフィシャル・プレイヤー】をやっている者です」
――はい、ここで私Mr.Gが説明しましょう!!
【オフィシャル・プレイヤー】とは、ゲームワールドを管轄管理しているWGCが公式で認められたプロゲーマーの事。
日本でも地域ごとに数人いる他、世界各国にもオフィシャルプレイヤーが存在するのです。
そしてこの天野槍一郎は、剣と同じ高校生にして16歳。だが剣とは対称的に長身で優しそうな面構え、そしてスタイリッシュなメガネが目印のインテリジェントな雰囲気を醸し出していた。
「先程の『F-1レーサー』から一部始終を見ていました。確かにこの人達の妨害行為には目に余る所が感じます。しかし暴力では何も解決されません。
ちょっとここは僕に免じて、事を収めてくれませんか?」
槍一郎は剣と陰険プレイヤーの乱闘を起こす前に事を丸く収めようとした。しかし陰険プレイヤー達は、「あんなの反則のうちに入らないだろ!!」と、猛反発。中々非を認めてはくれません。
「そもそもアンタらの嫌がらせで、ウチのみのりを不快にさせたんやろ? ゲームに弱えーからって憂晴らししてんじゃねーよ」
あららら、止しなさいよ剣さん! 皮肉吐いたらまた暴動の種になりますよ!
「何ぃぃ!? だったらお前は俺らに勝てんのかやってみろよ!!」
「上等じゃねぇか! ブッ飛ばしてやんよケジラミが、あ゛ぁ!?」
顔をゼロ距離で近づけて、強面眼圧にメンチを切り合う高校生と大の大人。
(やっぱ関西ヤンキー、こわい……)
ほらほら、みのりちゃんも引いてますがな!
「――ちょっと待ってください! これじゃ収まりが着かないですよ。……こうなったらゲームでの揉め事は、ゲームで着けるしか解決できませんね」
これぞ大人の対応と言うべきか、槍一郎の方が一番大人というか。提案一つで互いのフラストレーションを急速に下げていった。
「………ゲームで、ってどんな風に着けるんだよ?」
メンチ切った剣はしかめっ面を緩めつつ、槍一郎の案に乗り掛かる。
すると何故か、槍一郎の方が剣に興味を向くように熱い視線で彼を尋ねた。
「――君が『桐山剣』だね?」
「な……!? 何でお前が俺の名前知っているんだよ!」
剣が驚くのも無理はない。誰でも初対面の人に名前を知られていたらぎょっとするだろう。
「大した事じゃない、風の噂で君の名を知っただけ。そこで決着の付け方なんだが――――
君の”切り札を呼び起こす“ゲームセンス、飛び抜けた実力とやらを僕に見せてほしい。君とこの人達で『F-MAX』で勝負して確めさせてくれ!!」
「――!!」
剣は力量を試されているのか、或いは陰険プレイヤーの悪事の決定的瞬間を見たいのか。その真意は定かでは無いが……
「………あぁ分かった、その案に乗るぜ」
剣はそんな槍一郎に対し、嫌悪感や取っ付きにくさ等は殆ど無く、彼自身にも槍一郎に興味を持ち始めていた。一体何故か?
それは剣が並外れたセンスを見抜いていたこと、そして槍一郎自身にも放つ“強者の威圧”を感じ取っていたからだ。
――桐山剣と天野槍一郎。この二人の出会いの先には何を意味するのか………!?




