第7話①~サイバーターボシティは止まらない~
ゲームワールドオンライン。今宵もまたルール無用のアウトローなプレイヤーも蔓延る弱肉強食の世界に、剣達は敢然と立ち向かう!
そしてレースゲームの未来都市で、新たな出逢いが剣達を待ち構えていた! 魂の限り突っ走れ!!
第7話へ、ゲート・オープン!!!
ゲームワールドオンラインには、タイトルの数だけ冒険があり、未知のエリアが広がっています。
――ゲートを開けば、アクションゲームのジャングル。
――またゲートを開けば、パズルの大規模工場。
地球規模の広さを誇るこのVRMMOにおいて、各エリアの情報は数あれど、その全てを知る者は存在しません。
そして今日もまた、全世界80億以上のプレイヤーがこの仮想空間に集い、時に競い合っています。ゲームクリアの報酬で賞金を稼ぐ者、レアスキルを手に高みを目指す者――抱く思いは十人十色です。
それは、この物語の主人公である二人も例外ではありません。未来のゲーム戦士、剣とみのり。さらなる冒険を求めて、二人は現実世界から電脳世界へとダイブしました!
「よっしゃ、着いたで!」
剣が操作するプレイギアから展開されたのは、ハニカム状に設置されたゲームエリアのマップ。
拠点『プレイヤー・バザール』から真北。ゲートを開いた瞬間、エンジンの轟音が鼓膜を震わせます。天翔ける龍の如く続くマシンの地平線。常闇の夜空をネオンが彩るメガロポリス。超音速の残像が摩天楼を駆け抜ける!
「ここがレースゲームで造られた未来都市――」
「そう、【サイバーターボシティ】だ!!」
新エリア【サイバーターボシティ――CYBER TURBO CITY――】。
スーパーカー、フォーミュラ、オフロードバイク。風を切り裂き我道を突っ走る、レースゲーム特化エリアです!
ここに来れば誰もがスピードを追い求めるレーサーとなり、ただひたすらエンジンを唸らせ、チェッカーフラッグまで突き進むのみ。この速度に乗れない者は、時代にもレースにも取り残されるでしょう……!
「ここでプレイしてる奴らは大体気性が荒いスピード狂やからな。変に絡まれないように気を付けろよ」
「そーゆー剣くんこそ、煽られてトラブルにならないでね! あなた、いっつも喧嘩っ早いんだから」
「わーったよ!」
短気は損気。血気盛んで人情に厚いゆえに喧嘩腰が目立つ剣にとって、それは耳にタコができるほどの忠告でした。
「でも、レースゲームだけでもたくさんあるのね」
「純粋に遊ぶだけじゃなくて、最近じゃ運転教習やF−1のライセンス試験に使われるゲームもあるからな」
本格的なシミュレーターから、子供でも遊べるゴーカート、移動固定型のドライブゲームまで。休日は親子連れにも人気のエリアですが、今は平日の夜。剣の言葉通り、場には殺伐とした空気が漂っています。
「どのレースにする? 剣くん」
「んー、じゃあ基礎から始めっか。変に凝ったのより『F-1レーサー』ならみのりでも行けるだろ」
『F-1レーサー』のルールは至ってシンプル。オーバルコースを2周して順位を競います。
操作性の良い『Aタイプ』か、スピード重視の『Bタイプ』。
推奨プレイヤーレベルは11。みのりのような初心者でも安心の設計です。
「よーし、私やってみる!」
みのりは意気揚々とエントリーしました。選んだマシンはAタイプ。
1周2キロのコースを10台で競います。みのりは後方から2番目のグリッドに着きましたが、周囲のプレイヤーからはどこか陰険なオーラが漂っていました。
『――READY?』
カウントダウンが始まります。3、2、1……。
『START!!』
ブザーと同時に10台のマシンが弾け飛びました!
Aタイプは最高時速450キロに達するモンスターマシン。みのりは慣れないハンドリングに車体をフラフラさせながらも、必死にコースに食らいつきます。現在の順位は6位。
「みのり、ドリフトを使え! アクセルを踏んだままブレーキを叩くんだ!!」
コース脇から剣が叫びます。轟音の中でもその声は真っ直ぐに届きました。
(アクセルを踏みながら、ブレーキ……こうね!)
――キュイイイイイイイイ!!
みのりが咄嗟にドリフトを試みた、その瞬間でした。
「きゃっ!!」
後方から来たマシンが故意に追突。バランスを崩したみのりのマシンは障害物に激突し、最下位まで転落してしまいます。
「――っ! 諦めるな、そのまま行け!」
剣の鼓舞を受け、みのりは前を向きます。
レースはファイナルラップ。みのりは驚異的な集中力で直線コースを駆け抜け、先行車を次々とゴボウ抜きに。一気に5位まで浮上しました。
先程の妨害を警戒しつつ、学習能力を発揮して巧みに車間距離を取ります。1位まであと1台。最後の直線400メートル!
しかし、トップのマシンが不自然に減速し、みのりの進路を塞ぎ始めました。
(あの人、わざと寄せてきてる……!?)
みのりが左へ逃げれば、相手も左へ。右へ行けば右へ。
そして残りわずかの地点で、相手のマシンが強引に体当たりを仕掛けてきました。
「――ダメッ! ぶつかる!!」
相手の後輪がみのりのフロントに接触。時速400キロを超える衝撃にマシンはスピンし、再びクラッシュ。
妨害したプレイヤーがそのまま1位でゴールし、みのりは立て直したものの4位に終わりました。
「そんな、酷すぎる……」
幸い怪我はなかったものの、卑劣なプレイの連続にみのりは戦意を喪失してしまいます。対照的に、汚い笑いを浮かべる勝者。その様子に、剣は怒りで声を震わせました。
「みのり、出るぞ! こんなゲーム、もうやる必要ねぇ!」
「……剣くん」
「こんなクズの相手すんな! 上手い下手以前の問題だ!」
勝利のためなら他人を傷つけることも厭わない。そのやり方が、剣には許せませんでした。
「勝ちに執着して嫌がらせに徹するような奴と、ゲームやる価値なんてねぇんだよ!!」
睨みつける周囲のプレイヤーを無視し、二人はその場を後にしました。
……しかし、その様子を遠くから見つめる影がありました。
「――あれが、桐山剣か……」
立ち聞きしていた眼鏡のプレイヤー。彼を軸に、サイバーターボシティで新たな物語が動き出そうとしていました。




