昼休みの集まり
キーンコーンカーンコーン。
無機質に響くチャイムが、四限目の授業の終了を告げる。
授業担当の教師が居なくなったのを見計らってから、教室の中に入った。
昼休みになり、いつも通りにすぐに騒がしくなる教室内。
身近になりつつある日常の中でも、転入してきてからの流れはここ数日で身に付いたものとまったく同じものだった。
「恭弥ぁー、飯行こうぜー」
そう言って近付いてくるのは、午前中の授業をずっと爆睡して過ごしていたであろう武。こいつの合間合間の休憩の時間だけ起きる姿は、異様を通り越して異常だと思えた。
なにしろ、授業の終了を報せるチャイムが鳴れば起きる。そのままこちらに来て馬鹿騒ぎしておいて、次の授業の始まりを報せるチャイムが鳴ると同時に自分の席へと戻り、眠りの世界へと旅立つ。それからまた終了のチャイムでムクリと起き上がり、こちらに来て騒ぐ。
その繰り返しだ。武の異常な姿を見て、「お前、本当に寝てたのか?」と訊きたくなるほどだった。
どうせ変わらず四限目も寝ていたはずの武。寝起きにも関わらず、相も変わらぬテンションの高さには呆れを通り越して脱帽させられてしまう。
「早く行こうぜー」
「残りの二人が来てからな」
そう言っている間にも舞華や秋人も来て、いつも通りのメンバーで集まった。
「それじゃ行こうか」
「あぁ」
オレがそう返事したところで、再びチャイムが鳴る。
だが、それは無機質な授業の終了のチャイムとは違い、ピンポンパンポンという軽快なものだった。
ここに来てから初めて聞くタイプのものだ。何の報せだろうと思い、聞き耳を立てる。
チャイムが鳴って数秒後、小さなノイズがはしり、スピーカーから内容が報じられた。
「生徒会からの呼び出しだよっ。シロちゃんにマイちゃんっ! 今すぐダッシュで生徒会室に―――」
明朗かつ明るすぎる声音での放送。
そんな放送の最中で、ゴチン! と硬い物で頭をどつくような音が聞こえた。
それに加えてその後すぐに、
「あいたっ」
という声がスピーカー越しに響く。
たったそれだけのことで、声の主が誰か悟ってしまった。
あとそのすぐ近くにいる人物のことも。それだけ濃い人物だということだ。
凪城学園生徒会執行部に所属。
一つ歳上の二年生である村雨六花先輩。
オレと同級生である一年生の村雨那月。
苗字から分かるように二人は姉妹である。
ただ姉の方が妹より落ち着きがない。先日も妹に頭をどつかれ、諌められていた。
アホな姉としっかり者な妹。そのような表現がピッタリな姉妹である。
放送の内容にオレは早くも頭を抱えていた。
オレがそんな風にを苦悩している内にも、
「いたいじゃないっ」
「姉さんは馬鹿なんですか? 今の放送で、きちんと伝わると思ってるんですか?」
「バカって言った方がバカなんだよっ! なっちゃんのバカっ! アホっ! オタンコナスっ!」
「馬鹿でアホなのは姉さんです。あなた以上の馬鹿でアホな人はこの世に存在しません。少しは現実を見て下さい。このオタンコナス」
こちらの気が抜けるような姉妹コントをスピーカー越しに繰り広げる彼女達。
何やってんだよ、と少し呆れてしまう。
「とにかくさっさとそこを退いて下さい。すごく邪魔です。それとも馬鹿語で言わなければ理解できませんか?」
「うぅ……なっちゃんのばかぁ………」
村雨の辛辣な言葉の後、村雨先輩の声はフェードアウトしてしまった。おそらく辛辣な言葉を受け、いじけてしまったのだろう。
妹に口論でねじ伏せられる姉。中々シュールな構図だ。
それよりもシロちゃんってのは不名誉ながらオレだとして、マイちゃんというのは舞華の事だろうか?
それを確かめるために舞華の方に視線を向けると、彼女は苦笑いしながら首肯で肯定をした。
ってことはさっきの放送はオレと舞華の呼び出しってことでいいんだよな?
そう疑問に思っていると、
「訂正させていただきます。生徒会執行部からの呼び出しです。一年生の東雲恭弥さん、天堂舞華さん。以上、両名は連絡があるので至急生徒会室まで来て下さい。繰り返します――――」
と、しっかり者な妹が分かりやすく訂正した。馬鹿でアホでオタンコナスな姉は頼りにならないようだ。
姉が妹にフォローされてどうすんだよ。そう本人に言ってやりたいが、さっきの村雨とのやり取りで既に果ててしまっているに違いない。
オレは流石に死者に鞭を打つ行為は可哀想だなと思い、会っても言わないことにした。
「―――以上、生徒会執行部からの連絡でした」
再びピンポンパンポンと軽快なチャイムが鳴り、放送は終わりを告げる。
オレは秋人と武の方に向き直った。
「悪い、呼び出しらしい。今日は二人で行ってくれ」
「シロちゃんはまた何かやらかしたのかい?」
秋人の言葉にガックリときてしまう。
どうやらオレの残念な渾名は周知のモノとなってしまったようだ。
なにせ、シロちゃんにマイちゃんという組み合わせの後、訂正してオレと舞華の名前を呼んだのだ。
マイちゃんがどちらか考えるまでもない。必然的にシロちゃん=オレになる。
口許を楽し気ににんまりさせている秋人に、オレはやや憮然として返した。
「秋人まで止めてくれ。そんな変な呼び方をするのは、あの人だけでお腹一杯だ」
「つれないこと言うなよ、シロちゃん! 良い名前じゃねぇか!」
良い笑顔で肩を組んできた武。
オレはとっさに右手を武の額にあてがった。その瞬間、思いっきり力を入れてやる。
「あだだだだっ! ちょっ、いきなりそれは無いだろ!? 大体なんで俺だけ!?」
「うるせぇ。オレがどんだけ恥ずかしいと思ってんだよ、この馬鹿野郎」
なにしろ今の放送にて、『シロちゃん』という不名誉な渾名が、学園全体の周知のモノになってしまったのだ。恥ずかしくないわけがない。
「それでどうしてシロちゃんなんだい?」
「白銀の髪だから、白を文字ってシロちゃんだそうだ」
「へぇー、良い呼び名だと思うよ」
「……秋人もこいつと同じ目に遭いたいのか?」
「それは勘弁だね」
飄々と肩を竦める秋人を見て、オレは一つ深いため息をつく。
「……もういい。そろそろ生徒会室に行ってくる」
「そうだね。僕達も移動しようか」
秋人は武に向けてそう言い、連れたって行ってしまった。
オレたちも生徒会室に移動した方がいいだろう。
「んじゃ、行くか」
「うん、そうだね」
オレも舞華を連れたって教室の扉へと向かう。
その最中にも、
「問題を起こすのもほどほどにしろよ、シロちゃん」
「頑張ってねシロちゃん!」
「その内、良いことがあるさ、シロちゃん」
等とクラスメイトから、ありがたいお言葉の数々を頂戴し、目からは熱い液体がこぼれ落ちそうになる。
同時に決心した。あの馬鹿(村雨先輩)をシメてやろうと。
そうと決まれば、善は急げだ。さっさと生徒会室に行こう。
オレは教室を後にして足早に歩き出す。その歩くスピードは、走り出す寸前といったところだ。
廊下でも「シロちゃん」が周囲に浸透してやがった。
オレは声をかけられる度に、こぼれ落ちそうになるものを必死に我慢して愛想笑いを振り撒き続ける。
そうしている内にも目的地に辿り着く。
そこは本校舎の隣に存在する特別棟。三階の廊下、その突き当たりに存在している場所。
オレはノックもせず、そこの扉を開けた。
「やっと来たねっ、シロちゃんにマイちゃんっ。待ってたよっ!」
そう言ってオレたちを出迎えたのは、天真爛漫な笑顔を浮かべた村雨先輩。
生徒会室にはその人の他に凛姉と村雨が居た。
二人の存在はこの際置いておく。オレは一目散かつ真っ直ぐに村雨先輩へと近付き、頭にチョップを叩き込んでやった。
「あいたっ! な、なんでいきなりチョップするのっ!?」
「そうですか、分かりませんか、ふざけんなよこの野郎!」
オレは再び頭にチョップを叩き込む。
しかし見事なことに、村雨先輩はそれを真剣白刃取りの要領でキャッチしやがった。
彼女は怒ったように叫ぶ。
「私は野郎じゃなくて、れっきとした女の子だよっ!」
「それなら訂正してやる。さっさと用件を言いやがれ、この馬鹿女!」
もう敬語とか気にしてる余裕がなかった。とにかくこの馬鹿を説教してやりたい気分だ。
「シロちゃんがひどいっ!?」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いんだ! この馬鹿が! 全人類に馬鹿であることを謝罪しろ!」
「……うぅ……シロちゃんまで私にバカって言ったぁ…………」
村雨先輩は涙目になった。というか、もう半分以上泣いている。
その姿は小さな子どもを泣かしてしまったような錯覚にとらわれ、妙な罪悪感を感じてしまう。
なんだか一気に怒りが冷めてしまった。
「……あー、その……すいません、少し言い過ぎたかもしれません。これをあげるから泣き止んで下さい」
オレは謝りながらポケットから飴を一つ取り出し、村雨先輩の手に握らせた。
今朝、授業の合間にでもと入れておいて、それを食べる気にならずにポケットに入れっぱなしにしていたのだ。
その結果。
飴を受け取った村雨先輩は、すぐに笑顔を取り戻した。
「わーい、飴だーっ」
……本気でこの人のことが心配になってきた。
この歳になって飴一つで懐柔されるとか、小学生か。
呆れている間にも村雨先輩は飴を頬張り、幸せそうな顔をしていた。
「で、結局なんでオレと舞華を呼んだんですか? 何か用があったんでしょう?」
「うんっ、シロちゃん達と一緒にお昼ご飯を食べようと思って!」
無邪気に笑ってそう言った村雨先輩。
その言葉を聞き、思わず脱力してしまう。
その誘いだけのために、全校放送でオレの恥ずかしい渾名を広めたのかよこの人は。
オレは気付けば、三度目のチョップを振り下ろしていた。
「うきゅっ!? だ、だからなんでチョップするの!?」
「私用のために全校放送を使ってんじゃねぇよ! そのせいでオレの不名誉な渾名が広まっちまったんだぞ!」
「だってその方が早かったんだもんっ」
むんっ、とご立派な胸を張って村雨先輩は言い返してきやがった。
「やっぱり馬鹿だろこの人……」
オレは手で顔を覆い、天を仰いだ。
なんと言うか、この人と喋っているとペースが崩れてしまう。多分、まともに相手すると疲れるタイプだ。
もう十分既に気疲れしながら考察しつつも、オレは建設的な提案をする。
「それじゃさっさと学食に行きませんか?食べる時間も無くなりそうですし」
「その必要はないんだよっ」
村雨先輩は『じゃじゃーん』や『ばばーん』といった効果音が付きそうな勢いで、近くに居る村雨を指差した。
「なんと! みんなの分のお弁当を作ってきたのですっ!」
村雨の手には大きな包みが携えられていた。
「はぁ、そうですか」
呆れた風にもとれるような抜けた返事しか出来ないオレを、グイグイと引っ張ってソファーへと導く村雨先輩。
オレはもう色々と面倒になり、されるがままにソファーに腰を下ろした。
その後、次々に腰を下ろす四人。
二つあるソファーの片方にオレと村雨先輩。机を挟んで、対面のソファーに舞華と凛姉、そして村雨が座っている。
「それではそれではご開帳~」
村雨先輩は高々と宣言して包みを解く。
出てきたのは少し大きめの漆塗りの二段重箱。
上段には、ふんわりとした卵焼きにタコさんウインナー、ミニハンバーグ、白身魚のフライ、といった見てるだけで食欲をそそるメニューの数々。もちろん弁当を彩る野菜を使ったおかずも入っている。
下段にはオニギリ。炊き込みご飯のオニギリや梅干し、おかか、昆布と種類も豊富だ。
これからピクニックに行くのか? と言いたくなるような豪勢さである。
「もしかしてこれ村雨が作ったのか?」
「いいえ、作ったのは全部姉さんですよ」
「そうなんだよっ。どうどう? すごいでしょ?」
えっへんと胸を張る村雨先輩はどこか誇らしそうだ。
一瞬だけ、たゆんと揺れ動く双丘に魅了されかけたものの、首を振ることでどうにか煩悩を追い出した。
「で、本当のところは村雨が作ったんだろ? 村雨は偉いよな。こんな人のフォローまで出来るなんて」
「私の扱いがひどいっ!?」
ショックを受けたように叫ぶ村雨先輩を見て、村雨はやれやれと首を振った。
「残念ながら本当に姉さん作ですよ。私は一切関与していません」
「嘘だろ? だってこの人だぞ?」
到底信じられなかった。
何故かと訊かれればこう答える。一重に村雨先輩だからだ。
会長にそそのかされて刀で襲い掛かってきたり、私用で全校放送を使ったり、飴一つで懐柔されるような人なんだぞ?
これで信じられる方がおかしい。
「確かに姉さんは基本的に馬鹿でアホで残念な人です」
村雨は遠慮のない辛辣な言葉を紡ぐ。
オレも頷いてそれを肯定してしまう。
「うん、それはもう知ってる。『将来の夢は?』って訊いたら、『可愛いお嫁さん!』とか平然と答えそうな人だからな」
「な、なんで私の夢を知ってるの!?」
村雨先輩はオレの言葉に驚愕を露にする。
なんとなくそんな気がするから言ってみたにも関わらず、どうやら本当に的を射ていたらしい。
この歳にもなって本当に将来の夢が可愛いお嫁さん。何処まで残念な人なんだ……。
「まぁ、普段が普段ですから信じられないかもしれません。ですが、姉さんは料理と剣の腕だけは一級品なんですよ」
「そうだよっ! 論より証拠なんだよっ!」
そう言って村雨先輩は箸を取り出し、卵焼きを一切摘まんだ。そしてそれをこちらに付き出してくる。
綺麗に焼き色の付いた卵焼き。見た目はとても美味しそうだ。オレはその卵焼きをひょいと指で摘まみ、舞華の方へと差し出した。
「舞華、あーん、だ」
「え、えっと、なんで……?」
困惑する舞華に「ほら」と促す。
すると頬を赤く染めながらも、ぱくっ、と。舞華は可愛らしい小さな口で卵焼きを頬張る。
その後、舞華を真剣に見つめて訊ねた。
「舞華、体には異常は無いか? 頭痛、目眩、吐き気があるなら早めに教えてくれ。ちゃんと薬を買ってくるから」
「べ、別になんともないけど」
「ってことは、毒は入ってない……いや待てよ、遅延性の可能性もあるか……?」
「シロちゃんがひどいっ!? 毒なんて入れてないのにぃ……」
悲しそうな声を漏らす村雨先輩は、今度こそ本当に泣きそうだった。
その様子を見て、思わず慌ててしまう。
「じょ、冗談ですから! 食べますから! 泣かないで下さいってば!」
オレは慌てて発言を撤回し、彼女から箸を受け取り、卵焼きを口に運んだ。
パクリと一口。
オレは無意識に口を開いていた。
「……うまい」
無意識に呟きが漏れるほどに美味しかった。少し甘めの味付けやふんわり具合が最高だ。
思わずもう一度、「本当にあんたが作ったのか?」と訊きたくなる程だ。
だが、流石に同じことを二度も繰り返すほどオレも馬鹿ではない。オレはその質問をそっと胸の奥に仕舞った。
「本当にうまいですよ、これ」
「でしょでしょっ。どう? 私のこと見直した?」
村雨先輩はオレの言葉を受け、さっきまでの泣きそうな顔が嘘のような、眩しい笑みを取り出した。
「そうですね」
オレ以外のメンバーも次々に箸を運び、口々に「美味しい」と口にする。
「どうどう? 私のことお嫁さんに欲しくなったでしょっ?」
そう言ってキラキラと期待の視線を送ってくる村雨先輩。
オレは彼女を見て満面の笑みを浮かべ、ハッキリとした口調で言った。
「いりません」
「そんなぁ……」
意気消沈してガックリと肩を落とす村雨先輩は哀愁漂っていた。
彼女はどうも喜怒哀楽の起伏がかなり激しいらしい。
笑っていたと思えば怒り、怒ったと思えば泣き、泣いたと思えばまた笑う。ころころ表情が変わるおかしな人だ。
オレは百面相な彼女にため息混じりに返す。
「大体、オレと先輩はこの前、初めて会ったんですよ。それなのにその相手に面と向かって普通訊きますか? そんなこと」
「えぇー、だって運命とか感じない?」
「運命ですか?」
「だって同じ刀剣創者の保有者が巡り会えたんだよ? こんなに広い世界の中で。これこそどう考えても運命でしょっ!」
拳をグッと小さく握って力説する彼女は、とても興奮しているようだ。
オレは興奮している彼女に、「いや、別に」とは一概に言い返せなかった。
なにしろ刀剣創者は固有魔法に属している。つまり世界規模で見ても、同じ固有魔法を使える人は滅多に居ないのだ。というか居る方が稀だ。
オレの知っている刀剣創者の使い手でも、自分と目の前の人を含め、三人しか確認したことがない。それも仕事にて世界中を色々と回っているにも関わらずだ。
それ故に全人類数十億の中で、同じ固有魔法を保有している人に巡り会うことは、運命と言っても差し支えないだろう。だからこそ、この人の言うことが分からないわけでもない。
まぁ、尤も、オレのは村雨先輩と違って天然物の刀剣創者ではないが……。
そのような具合に思っていると、箸を黙々と口に運んでいたメンバーが口を開いた。
「さっきから五月蝿いわよ、六花。少しは落ち着きを持ちなさい」
「そうですよ姉さん。食事中くらいは静かにして下さい。どつきますよ?」
「恭弥はどう思ってるの?」
凛姉と村雨は村雨先輩を諫め、舞華はオレに質問をしてきた。舞華から異様なプレッシャーを感じるのは気のせいだろうか?
「んー、まぁ、確かに感じないこともないかな」
「やっぱり感じるよねっ」
ぱぁっと表情を輝かせる村雨先輩に対し、凛姉や舞華の視線は突き刺さるように痛かった。
「なんだよ? なんかオレ可笑しなこと言ったか?」
「別に」
二人揃ってそうは言ってるものの、じとっとした視線は緩むことはない。居たたまれなくなったオレは、空気を変えるために話題を振った。
「そういえば、いつから剣の指南をしてもらえるんですか?」
話題を変えたことに対し、二人分の抗議の視線が突き刺さるが当然スルーだ。
「別にいつでもいいんだけど、今は生徒会の仕事を片付けないといけないんだよね」
「その仕事はどのくらい残ってるんですか?」
「う~ん……いっぱい?」
その答えに思わず嘆息してしまう。
オレが答えて欲しかったのは具体的な量だ。そんなあやふやな回答じゃないんだよ……。
「それなら仕事を終わらせれば良いんですね?」
「うん、そうなるね」
「じゃあ、オレにも手伝わせてもらえませんか? 少しは役に立ちますよ」
「本当っ? それなら助かるよ。会長やリンちゃんだけじゃ大変だったからね」
おい、あんたは頭数に入ってないのかよ。
そうツッコミかけたが、どうにか飲み込み、口を開いた。
「その代わり、終わったら剣の指南して下さいよ」
「もちろんっ」
それを聞いて満足した。
そうと決まれば、面倒事はさっさと終わらせるに限る。




