赤紅の真価
土煙が宙を舞い、視界を覆う遮蔽物に身が覆われていく中、切迫した悲鳴にも似ている叫び声が耳に届いた。
「東雲君っ!」
朦朧としていながらも、顔を確認するまでもなく声の主を理解した。
これはもしかしなくても舞華の声だ。
当主が近くに居たはずなのに、どうしてこっちに来てるんだ。ちゃんと舞華のこと見とけよな。そんなのだから舞華が拐われたんじゃないか。
ぼんやりとした意識のなか、オレは藤十郎を罵った。
「ついてないな……」
オレは小さな声で吐き捨てるように呟く。
それはなぜか。
なぜなら、さっきの出来事があったにも関わらず、オレの身体には傷一つとして見当たらなかったからだ。それどころかさっきよりも格段に身体が軽い。
それは一つの真実が明るみに出た結果だった。
「はぁ……仕方ないか……」
思わず諦めの呟きが出てきてしまう。
土煙の中から、うっすらと見える影がオレの元に近付いてくるのが分かる。できれば来ないで欲しいものだが、もう遅い。
その影の主はついにオレの元へと辿り着いてしまった。
「ねぇ、生きてるよね……? 返事してよ、ねぇ……」
砂塵に埋もれた、大の字で倒れているオレの傍らに膝をつき、心配をする舞華。
その瞳からはポロポロと大粒の涙が溢れて、頬を濡らしていた。
まったく、何で泣いてるんだか。
舞華の方へ手を伸ばし、指で涙を拭った。
「ほら、そんなに泣いてると綺麗な顔が台無しだぞ? お前は笑ってるのが一番だ」
助けに来たときとまったく同じ台詞。なんとなくその台詞が出てきた。
舞華は弾かれたように顔を上げて、枷によって不自由になっている両手でオレの手を取った。
「東雲君!? 大丈夫なの!?」
「あぁ、大丈夫だ。どこも怪我してないよ」
「よかった……」
安堵を含んだ舞華の声。
その声を聞きながらオレは身体を起こした。
「ごめんな、舞華」
「え? なんのこと? それに今、私の名前……」
オレの何の脈絡もない突然の謝罪。
戸惑う舞華の言葉が終わる前に、辺りを視認し辛くしていた土煙が完全に晴れていく。
「――――っ!?」
クリアになった視界の中。舞華は驚愕に目を見開いていた。
その瞳に映るオレの姿がさっきまでと違うからだろう。
オレの外見は既に白銀の髪と琥珀色の瞳ではなくなっていた。
燃えるような紅蓮の炎を体現する赤髪と、同色に染まった紅き双眸。
五年前と寸分たがわぬ本来の色。舞華の知るであろう、かつての姿に戻ってしまっていた。
舞華は言葉が出てこないらしく、肩を震わせている。彼女は何度も口を開き、何かを言おうとするが、結局は口を閉ざしてしまう。
そうなっている理由は分かっていた。
「ごめんな」
舞華に向けてもう一度謝って立ち上がる。
「ま、待って! 一つ聞かせてっ!」
やっと絞り出された舞華の上擦っている声。
その声には非難の意は込められてなかった。込められていたのは緊張、期待、そして不安。それらの感情が入り交じっていた。
今、舞華が訊きたいことはわかっている。だけど今はその時じゃない。
「全部これが終わってから話す。だから……今は待っててくれないか?」
「……で、でも……」
「大丈夫だって。オレは最強だ。誰にも負けないから、安心して見てろ。すぐに帰ってくるからさ」
安心させてやるようにやんわりと笑い、舞華の頭をクシャっと一撫でした。
それから反応を待たず、自分が立つべき場所へと歩を進めた。
崩れた瓦礫を乗り越え、複数の倒れた人間を横切り、そして遂にその舞台へと辿り着く。
これからが本番の闘いだ。
「それは何のつもりだ?」
オレの頭を指差す男。おそらく髪の事を言っているんだろう。
「これが本来のオレだ」
そう告げると同時に、これまでと比にならないくらいの高密度の魔力で身体強化を施す。
それから今までの何倍にも強化された脚力で強く地面を踏みしきった。男との距離を一瞬で詰め、この拳を振るう。
オレの拳が男の頬を捉えた。
バキャッ!
鈍い音を立てて男は後方に吹き飛ぶも、見事なことに空中で体勢を立て直した。
「お前の魔力はオレが全て奪ったはずだ……!? それなのになんでお前は魔力を使っている……!?」
オレを睨み付けて唸っている男。
「Fact is stranger than fiction」
そう肩を竦めて苦笑いで返した。
「だから言っただろ。これが本来のオレだって。大体これはあんたが無理矢理引き出したんだぞ?」
本来の自分。それは自分自身に魔法をかけて制限していたものだ。
自身の魔力の量を制限し、
本来の姿である紅蓮の髪と双眼を制限し、
使える魔法を制限していた、自分を制限するための魔法。
それをこの男が、オレの中にある魔力を全て吸収して奪い取ったことで完全に解けてしまった。
だから今まで抑えていた多量の魔力が駆け巡っている。
だから今は本来の髪や瞳の色に戻った。
だから今は制限なしに魔法が使える。
何もかもが解放されて自由な姿。それが今のこの状態だ。
「意味が分からないな」
そりゃそうだ。言って分かるもんじゃないからな。それに分かってもらうつもりも無いし、分かって欲しくも無い。
「分からなくて結構だ。それよりオレも一つ訊いていいか?」
「むろん断る……と言いたいが、こんなに楽しませてくれてるんだ。その礼に答えてやろう」
その言葉から滲み出しているのは、自分の持っている力に対しての絶対の自信。
例え知られてはいけない情報を知られたとしても、自分の力が有れば対処する事が出来る。いつでもオレを殺すことが出来るという絶対の自信。
そのような自信に満ち溢れていた。
「あんたの目的は何だ? こんな烏合の衆を率いて何がしたい?」
目的が分からないのは当然だ。オレはこの男じゃない。
自分の胸に秘めている目的や思いなんて、一人一人が違う。いくら考えようが、他人の目的なんて結局のところで分からないのは当然だ。
オレが気になっているのはある一点。それはなんでこの組織を率いているかが分からない。
大体の場合に犯罪組織というものは、何かしらの目的を成し遂げる為に力の有る、または自分と同等の力を持つ者達が集まって形成されている。
それは尻尾を掴まれないようにするためだ。足手まといになるほど力のない者がいると、それは自らの障害になり邪魔にしかならない。
それでも下っぱや雑用として引き入れる場合もあるが、それを差し引いたとしても、この組織のようにリーダーであるこの男とその他のメンバー達の間にはあまりにも力の差がありすぎた。
片や学生レベルを上回っている程度の魔法師の烏合の衆。
片や特殊な固有魔法を保持する強力な魔法師。
要するに力のアンバランスさが目立つ。それでは組織として脆く、簡単に瓦解するのがオチだ。
だからこそ解せなかった。
「俺の目的は世界を獲ることだ。そのためには俺がいれば十分過ぎる」
「世界を獲る?」
その言葉に失笑してしまう。
どんなにこいつが優れていようが、こんな組織を率いた程度で世界征服なんて出来るはずもない。
まるで子供が見る夢物語だ。
「そんな事が出来ると思ってるのか?」
「もちろん思っているさ。俺にはこれがある」
そう言って男が懐から取り出したのは、チェーンに繋がれた小さな宝石。それはどこまでも透き通っており、誰しもを魅了するような輝きを放っていた。
「本当にそんなもんで世界征服が出来るとでも?」
どんな物かは知らないが、笑い話にも等しい。宝石一つで世界征服が出来るなら、世界は今頃誰かに支配されているに決まっている。
それにも関わらず、本心を述べているのなら、とんだ阿呆だ。さっさと取っ捕まえて、警察よりも先に病院に連れていくことが先決だろう。
呆れ六割、失望四割の視線で目の前の男を見ていると、ニヤリと笑みを向けてきた。
「これは星の雫という魔法具だ。これさえあれば無理な話じゃない」
その『星の雫』という名称に時が止まった。
星の雫―――それは魔力を無限に貯蓄することの出来る、世界に一つしか存在しないとされている国宝級の魔法具である。
一世紀半ほど昔に存在が危険と判断され、存在しないモノとして文献や伝承から表向きには抹消されたらしい。
オレの持っている権限で閲覧することが可能な古い資料の中で見つけた、どこにあるかすら分からなくなった失われた過去の遺物。
そして同時に、オレ自身の『願い』を叶えるために絶対に必要不可欠の魔法具。三年間もの期間、ずっと探し、ずっと欲していたモノが目の前にあった。
「それをどうするつもりだ?」
「……急に物欲しそうな目になったな。これがどんな物か知ってるのか?」
「だからこそ気になってるんだ」
男は自慢するように鼻を鳴らした。
「これに蓄積された魔力を一度に解放するとどうなるか知ってるか? 答えはそこら辺の魔法なんて目にならない程の兵器になる」
得意気に答える男。
どうにか沸き上がる笑いの衝動を堪える。
自分の魔法で他人の魔力を奪い、効率良く星の雫に魔力を供給して蓄積させる。それを兵器として使い、世界制服を果たす。
その目的の為だけに良質な魔力の保持者を誘拐してたってわけか。とんだ笑い話である。
映画にでもしたら、それなりに売れるんじゃないだろうか? もちろんC級ら辺で。
「ぷっ、ははははははっ、傑作だ。本当に最高だよ、あんた」
ついに限界を越えてしまう。抑えていた笑いが漏れ始めた。
こんな稀少な魔法具を、そんなくだらない使い方をするなんて馬鹿にも程がある。
過去に失われたはずの魔法具である星の雫。なぜそれをこの男が持っているかという疑問が残るが、今はそんなことどうでもよかった。
それが本物だとしたら、オレの『願い』のために貰い受けるに越したことはないのだから。
それに加え、目の前の男は相手の魔力を根こそぎ吸い取って自分の魔力にするという固有魔法の保有者。この魔法はオレの『願い』に役立ついい部品になるに違いない。
「なぜ笑っている」
男の不機嫌そうな問い。それには自分の目的を笑われたことに対する怒りが滲み出ていた。
それでも笑いは収まらない。
自分の目的をこんなにも早く達成することが出来る目処が立ったのだから当然だ。
星の雫と強制強奪という魔法の二つを手に入れる事が出来れば、十数年単位で『願い』への距離が縮むことになる。これで笑えない方がおかしい。
オレの笑う様子を見ている男の顔は次第に歪んでいく。今、自分はどんな表情をしているだろうか。
目的を達成できる事から来る喜びの笑み?
どこか狂ったように映る狂気的な笑み?
そんな疑問すらどうでもよく感じる。
今重要なのは、この男を倒すことだ。そうすればこの事件も解決し、姉さんの頼みを達成でき、オレの『願い』にも近付く。一石二鳥どころか、まさに一石三鳥だ。
「悪いけどそれはオレが貰うぜ」
男が持つ星の雫を指差しながら宣言した。
「させると思うのか?」
「これは決定事項なんだ。異論は認めない」
今の状態のオレは誰にも手に負えない。目的を見つけたら喰らい付いて離さない。それはまるで獲物を見定めた猟犬のように。
「まずはその魔法からだ」
訝しげな表情を浮かべる男を余所に魔法の詠唱を始める。
「汝は才を貪る貪欲な顎。食え、食え、喰らえ。最後の一欠片まで喰い尽くせ。彼の者の才を喰らいて糧と成せ」
眼前に浮かび上がる一つの異形。
それは虚空に浮かぶ巨大な顎。頭部も、胴体も、顎以外の物は何一つとして存在しない。
ただ、ズラリと鋭い歯が並んだ顎がガチガチと音を鳴らしていた。
「何だその魔法は?」
「神喰らい。オレの魔法の一つだ」
「神を喰うとは随分と大それた名前だな」
「残念ながらそういう意味合いじゃないんだ、この魔法は」
それだけ答え、顎に指示を送る。
「行け。お前の獲物は目の前だ。一片残さず喰い尽くしてこい」
その言葉と同時に顎を大きく広げながら男へと向かう。
「オレには魔法は通用しないと言っただろうに」
男はこれまでと同じように腕をかかげて、対処しようとする。
縮まる男と顎の距離。
片や余裕の笑みを携え腕をかかげる男。
片や不気味な口を開け閉めしながら進む顎。
異常と異形との交じり合い。
あったようで無かった双方の距離は遂に、完全にゼロになった。
巨大な顎は躊躇うことなく、男の腕へとかぶりつく。
男は至って冷静だ。決して悲鳴を上げたりはしない。あくまで不敵な笑みを絶やさないで居る。
しかし、それも数秒のこと。数秒経て、顎は霧散していった。
不敵な笑みは、あからさまな勝利の笑みへと変わり行く。
「ハハハハッ! どうだ! 俺にはどんな魔法も通用しない!」
「……捕食完了」
高らかに笑う男を尻目に小さく呟いた。
「何のことだ?」
自分の身に何が起こったのか理解していない男は笑うことを止め、オレの呟きに眉をひそめている。
それも当然のことだ。本来なら魔法は魔力として吸いとられ、消えてしまう。
だけど今のは違ったのだ。今、顎が消えたのは強制強奪によって吸いとられたのではない。顎は目的は目的を達成したから消えた。対象を喰らって返還するという目的を。
これで目的は一つ達成された。強制強奪は無事に、本来在るべき場所へと返還された。
「分からないなら教えてやるよ。あんたはもうその魔法を使えない」
男を指差して残酷な事実を簡潔に告げる。
それは信じられる事ではないだろう事実。だが、同時に絶対に揺るがない事実だ。
「何を馬鹿な事を言っ――」
男の言葉は続かなかった。
おそらく強制強奪を使ってみたのだろう。もう二度と使えないというのに。
「なぜだ!? なぜ使えない!?」
強制強奪を失った男は困惑気味に叫んだ。
「何でだろうな」
オレはわざと余裕の笑みを浮べながら、誤魔化すように肩を竦める。
「理由を答えろ!」
怒号と同時に放られる風属性の魔法。それを焦らずに拳で迎え撃ち無力化する。
「お前ら! こいつを殺せ!」
男は仲間のメンバーに初めて指示を下した。さっきまで戦闘を呆けた様子で見ていたメンバー達は、直ぐに自我を取り戻し、指示通りに各々の魔法を使って殺そうとしてくる。
その数は三十以上。
全てを身体強化で掻き消すのは面倒だった。
もう普通の闘いは終わりにしよう。
オレは最強らしく、全てを統べればいい。
「形無き世界は秩序を崩す。色無き世界は理を無くす。願うは隔絶された始まりの世界。染め上げろ――白の世界」
瞬間、魔法は全て消え去り、世界は一つの色に包まれた。
敵は全員が何が起こったのか理解していないらしく呆然としている。
それは当然のこと。一瞬にして景色が変わったからだ。
飛び交う魔法は全て消えた。
自分たちの立っていた廃工場も消えた。
自分を取り巻いていた風景も消えた。
僅かな風や音も消えた。
―――何より、世界から色が消えていた。
どこまでもまっさらで何も存在しない純白に染まった世界。
それが目の前に広がっていた。
これは夢でも幻覚でもない。魔法によって引き起こされた事象の改変だった。
「何が起こっている……!? 俺達はさっきまで廃工場に……!?」
焦り、驚き、困惑、不安。様々な感情が渦巻いているのだろう。
呆然としている男達に悠然と告げた。
「ようこそ。何も存在しない始まりの世界へ」
男達は何も反応しない。恐らく今の事態を呑み込めていないのだろう。
「ノーリアクションだとオレが滑ったみたいじゃねぇか……」
痛いほどの静寂。音も、景色も、色さえ失った世界。そんな中で台詞を無視されたら虚しく感じてしまう。
「まぁ、別にいいんだけどな」
そう判断して本来の行動に移った。呆然としている男達の集団の中に突っ込み、その中で暴れ回る。
一人一人、丁寧に顎を狙って打ち抜いて気絶させていく。
果てない蹂躙。その中で一人の男が怒りをオレに向けた。
「ふざけるな!」
その怒号を皮切りに、ようやく回りの男達も覚醒していく。
「あいつを殺せ!」
「そうすればここから出られる!」
「今すぐ殺せ!」
男達は狂いそうなほどに叫んでいた。精神的にきついのだろう。
仲間が次々とやられていく。倒すべき敵はオレ一人。それにも関わらず倒せれない。
更に置かれている状況が状況だ。
自分達を取り巻くのは、人間以外のものが存在しない広大な純白の空間。そのような中に突然に放り込まれれば、狂いそうになるのも無理はないだろう。
それを証明するように、叫ぶ男達は魔法を使って殺そうと一斉に詠唱を紡ぐ。すぐに魔法の詠唱を終えた男達はそのまま次々に魔法名を発した。
………………
…………………………
………………………………………
しかし、そこに変化は起こらなかった。
あったのは痛いほどの静寂だけだ。なぜなら魔法は発動されなかったのだから。
「嘘だろ……」
「な、なんでだよ……」
「何が起こってんだよ………」
各々に焦り、驚き、困惑、不安を抱えて、その出来事に驚愕を口に出した。
オレは答える。
「言っただろ。何も存在しない始まりの世界って。ここには武器はおろか、起源から遠いものは存在しない隔絶された空間なんだよ」
驚愕を露にする男たち。この反応も最早見飽きていた。
それらを尻目にオレは詠唱をする。
「創りしは万物を断ち斬り、世界の理を斬り伏せる至上の刃なり」
虚空に現れたのは無数の黒剣。重複する傷剣だ。
「そんな……さっき魔法は存在しないって…………」
掠れる声で誰かが呟いた。
「オレはあんたらと違って、本物の魔法を持ってるから使えて当然だ」
到底理解出来ないであろう理屈。それが罷り通るからこそ、こうしてオレの魔法は発動されている。
「創られし無限の刃達よ、舞い踊れ。汝等の思うがままに。蹂躙し尽くせ」
剣に指示を下した。剣は自由に舞う。縦へと、横へと、上へと、下へと。
まるで剣そのものが意思を持って踊っているかのように。
刃に刺し、斬られ、貫かれ、辺りは悲痛な悲鳴に溢れていた。
オレはその光景を眺めているだけだ。
そして敵が最後の一人になるまで、時間は一分とかからなかった。
「な、なんなんだ、お前は……!?」
震える声でオレに問う最後の一人は、この組織のリーダだ。オレがした質問に答えた礼だ。最後にそれくらいは答えても良いだろう。
「本当の名前は名乗らないけど、その代わりに別の名前で名乗らせてもらう。オレは『赤銀の剣聖』『異端者』……そして『オメテオトル』だ。どれか一つでも知っててくれたなら自己紹介した甲斐があったな」
「……どいつも世界クラスの化け物……それに『オメテオトル』っていえば世界最強の……」
『赤銀の剣聖』
『異端者』
『オメテオトル』
表向きには公表されていないが、この三つはいずれもオレに勝手に付けられた二つ名だ。
望んで付けられたものでないこの三つの名は、この男が言ったように世界レベルで知られるほどに有名になっている。
その中の一つである『オメテオトル』
これは世界最強の部隊。三ツ首ノ猟犬の中で、最強の一角を担うオレに向けて付けられた二つ名である。
「あんたが最後の一人だ」
「このくそがあぁぁぁぁっ!」
男はやけくそになったかのように殴りかかってくる。
それはすでに無意味だ。ここにはこいつの魔力は存在しない。つまり男は身体強化すら出来ないでいる。
「この場所で今のオレを本気で倒そうと思うんなら、全部の国の軍隊を引き連れて来るんだな。そんくらいしないと足らないぜ」
そう言って男の拳を左手で払い退ける。
「これで終わりだ」
オレは無数に浮いている黒剣を手に取り、それで男を切り捨て。
幾度殴ろうとも沈むことの無かった屈強な男は、ついに地面へと崩れ落ちた。
さて、本作品の中で主人公は模擬戦や今回の時みたくちょいちょい英語を喋ります
五年間アメリカにいた弊害?的なものだと思って、さらっと流してやって下さい
ちなみに今回のは『現実は小説より奇なり』と訳せます




