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次期竜王のつがい  作者: あいら


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6

朝の空気は、少しだけ冷たかった。

石畳の道を踏みしめながら、サラは軽く息を吐く。


この時間の街は、まだ静かだ。

だが、その静けさの中にも、確かな“動き出す気配”がある。


(今日も一日頑張らないと)


小さく気持ちを切り替える。


午前十時、出勤。


店は、すでに開いている。

服はそのまま、髪を結んでエプロンを付ける。


「おはようございます」


「ああ、今日もよろしくね」


「はい、お願いします」


店内に入って挨拶をしてると、すぐに店の扉が開く音がする。


「いらっしゃいませー!」


サラの声が、店内に響く。

あわててメニューを手に取り、お客様の元に向かった。


昼に近づくにつれて、客は増えていく。

注文を取り、料理を運び、皿を下げる、その繰り返し。


忙しい。だが、嫌ではない。


むしろ――心地いい。


体を動かし、人と関わる。


それは、これまでの自分にはなかった日常だった。


午後三時。


「お疲れー、サラ」


「お疲れ様です」


仕事を終え、軽く手を振る。


エプロンを外し、店の奥へ、少し遅めの昼食の時間だ。

今日のまかないはサンドイッチ。

パンに具材を挟んだシンプルなもの、だが、これがまた美味しい。


(今日は天気がいいわね、外で食べようかしら)


近くのベンチに腰を下ろし、一口。


(……やっぱり、美味しい)


思わず頬が緩む。


贅沢な料理ではない。

だが、どこか満たされる味。


空を見上げる。


青く、広い。


風が、心地いい。


食事を終え、立ち上がる。


向かう先は――図書館。


サラはトラム乗り場に向かった。


金属の車体。

規則正しく敷かれた軌道。


石炭の力で動くこの乗り物は、今でも少し不思議だ。


席に座り、外を眺める。


街が、流れていく。


(便利ね……)


時間が、短縮され、移動が楽になる。

それだけで、できることが増える。

この国は、そういう“積み重ね”で成り立っているのだと感じる。


午後四時。


図書館に到着する。


この国の中央図書館は、官僚も利用するだけあって、年中無休で開いている。

貸出はされず、必ず図書館の中で本を読まないといけないが、

物語から、歴史書、裁判の記録、

そして、実際の政治の資料まで、あらゆる記録を読む事ができる。


紙の匂い。

インクの匂い。


知識の集まる場所。


2年間通い、受付の人とは顔見知りになった、

軽く挨拶をし、サラは迷いなく奥へと進む。

目的の本を取り、席に着く。


ページをめくる。


文字を追う。


理解する。


そして、また次へ。


気づけば、時間は過ぎている。


午後五時四十五分。


涼やかな鐘の音が響く。


「……もうこんな時間」


小さく呟く。


図書館の閉館は六時だ、後十五分で退館しなくてはいけない、

あわてて、机に置いていた本を本棚に戻す。


今日も、少しだけ前に進めた気がする。


図書館を出ると夕方の光が、街を染めている。


人の流れも、朝とは少し違う。


仕事を終えた者たちが、家路につく時間。


その中を、サラは歩く。


ふと、川の近くを通る。


視線を向けると、整備された水路が広がっていた。


水は濁らず、流れも安定している。


(上下水……)


この国に来て、図書館で本で読んで知った事だ、

この国では、水の管理も徹底されている。


ただ流すだけではない。


制御し、利用する。


その発想が、根本から違う。


ルーナ神聖国では、川に低い土手を作る程度だった。

自然に任せるしかなかった。


だが、ここでは。


(人が、管理している)


だからこそ、街が清潔で、病も少ない。


また水は水力発電にも利用されている。

石炭と合わせ、夜の9時までは各家庭にも電気がつくようになっている。


王宮や病院などは、必要に応じて24時間電気が供給され、

必要な対応ができるようになっている。


ルーナ神聖国では、電気があるのは王宮と高位貴族の屋敷ぐらい、

しかも、水力のみだったので、

水の流れがなくなると、電気がつかないなんてしょっちゅうだった。


水の仕組み、これ一つ取っても、大きな違いがある。


歩きながら、考える。


一つ一つの違い。


その積み重ね。


それが、この国を作っている。


(……面白い)


自然と、口元が緩む。


知れば知るほど、新しい発見がある。


理解すればするほど、次が見える。


家へと続く道。


夕焼けが、街を染めている。


その中を、サラは歩く。


今日も、働いた。


今日も、学んだ。


そして。


今日もまた――


この国を、少しだけ理解した。


(もっと知りたい)


その思いは、尽きることがない。


サラは、歩みを止めない。


この国で。


自分の人生を、積み重ねるために。

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