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次期竜王のつがい  作者: あいら


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13/34

13

夕暮れの街は、柔らかな橙色に染まっていた、

スイーツ店を出た三人は、石畳の通りをゆっくりと歩いている。


「いやー、あれは当たりだったな」


ダレンが満足げに伸びをする。


「特にあのタルト、本当に美味しかったわ」


サラも頷く。まだ少しだけ余韻が残っているようで、声が弾んでいた。


「君があれほど喜ぶとは思わなかった」


クリスが静かに言う。


「何よ、甘いもの好きで悪い?」


「いや、むしろ――」


言いかけて、クリスは言葉を止めた。


(また言いすぎる)


先ほどダレンに釘を刺されたばかりだ。


その様子に、サラはくすっと笑う。


「なによ、続き言いなさいよ」


「……いや、やめておく」


「気になるじゃない」


「えっと……今度にするよ」


軽く流され、サラは少しだけ頬を膨らませた。


そんな何気ないやり取りの最中だった。


――悲鳴が、響いた。


「きゃああああっ!」


三人の足が止まる。


空気が一瞬で変わる。


遠くない。すぐ先の広場の方だ。


「……行くぞ」


ダレンの声が低くなる。


次の瞬間、三人は駆け出していた。


広場は混乱に包まれていた。


倒れた屋台、散らばる荷物、人々の悲鳴。


そして、その中心に――数人の男たち。


粗野な服装、手には剣。


明らかに、ただの喧嘩ではない。


「盗賊か……!」


ダレンが舌打ちする。


男の一人が近くの男を蹴り飛ばし、笑った。


「金目のもん全部置いてけ!」


逃げ惑う人々。


泣き叫ぶ子供。


その中で、サラは一瞬だけ目を細めた。


(……最低ね)


怒りはある。


だが、それ以上に冷静だった。


状況を見極める目。


人数、位置、動き。


「クリス」


ダレンが短く呼ぶ。


「ああ」


クリスはすぐに頷いた。


「警備を呼ぶ」


「頼む。ここは俺が抑える」


二人の視線が交わる。


無言の信頼。


次の瞬間、クリスは踵を返し、全力で走り出した。


残されたダレンは、ゆっくりと前に出る。


「おい」


低い声。


盗賊たちの視線が向く。


「そこまでにしとけ」


「なんだてめえは」


「通りすがりだ」


軽く肩をすくめる。


だがその目は、鋭い。


「逃げるなら今のうちだ。警備が来る」


「はっ、脅しか?」


男の一人が笑う。


「一人で何ができる」


ダレンは小さく息を吐いた。


「……言ったろ、今のうちだって」


次の瞬間、動いた。


地面を蹴る音すら小さい。


一瞬で間合いを詰め、最も近い男の懐へ。


「っ!?」


驚く暇もない。


拳が鳩尾に叩き込まれる。


男は息を詰まらせ、その場に崩れ落ちた。


「なっ……!」


残りの盗賊たちが構える。


剣が抜かれる。


「ちっ、面倒だな」


ダレンは周囲を確認する。


逃げ遅れた人々がいる。


下手に長引けば危険だ。


(手早くいく)


男が斬りかかってくる。


振り下ろされる刃。


ダレンはそれを紙一重でかわし、腕を掴む。


そのまま体をひねり――


「もらった」


剣を奪い取る。


流れるような動き。


「くそっ!」


もう一人が突っ込んでくる。


ダレンは奪った剣で受け流し、足を払う。


転倒。


間髪入れず、柄で首元を打つ。


意識が飛ぶ。


「あと五人か」


軽く息を整える。


そのとき――


「いやああああ!」


鋭い悲鳴。


ダレンの視線が動く。


一人の盗賊が、女性の腕を掴もうとした。


その時、それまで後ろで様子を見ていたサラがさっと動く、

明らかに女性を庇って、前に出た。


盗賊の首領と思われる男性は、サラを拘束し、

首元に刃を当てる。


「動くな!これ以上来たらこいつを殺す!」


空気が凍る。


ダレンは足を止めた。


(まずい、最悪だ)


距離がある。


サラは”次期竜王のつがい”

なんとしても守らないといけない人物、

その人を危険にさらしてしまうなんて・・・


「動くなよ」


盗賊が低く言う。


ダレンに一瞬焦りが生まれる。


(くそ……!)


自分の判断ミスだ。


「その剣、捨てろ」


命令が飛ぶ。


「……」


ダレンは迷わなかった。


剣を手放し、カランカランと剣が落ちる音が響く。


その音がやけに大きく響いた。


「最初からそうすりゃいいんだよ」


残り盗賊がダレンに向かう。


その瞬間。


サラの目が、わずかに細められた。

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