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第5話

「おばさん! 莉璃(りり)、いる?」


 ルーレットの結果を見た後、大慌てで学校の準備を済ませて俺は隣の家にやってきた。


七希(ななき)くん……? 莉璃ならもう学校へ行ったけど……」


 突然の訪問、切羽詰まった俺の表情を見て、莉璃の母親は少し驚いた顔をしている。


「ごめんなさい、ひょっとして今日、一緒に学校に行く約束でもしていたかしら?」


「いや、別に……そういうわけではないんですが──」


「そうなの? でもたまには一緒に登校するのもいいかもしれないわよ? せっかく同じ高校なんだし。明日、一緒に行ってみたら?」


「……考えておきます」


 莉璃の母親に軽く会釈をして俺は駅に向かった。


 明日……莉璃に明日があるのだろうか──。






 教室に入ると、莉璃はクラスメイトの芹沢(せりざわ)彩乃(あやの)と話をしていた。


 芹沢彩乃は女子の中では身長が高く、すらっとした生徒だ。ポニーテールの髪型に赤いフレームのメガネがトレードマークで、「笑顔がかわいい」ということで男子から人気が高い。


 会話の内容は聞こえないが、莉璃と芹沢は互いに微笑みを浮かべながら話している。


 微笑みを見せながら友達同士で会話をしているクラスメイトたちは、他にもちらほらといた。


 昨日の坂東の突然の訃報。まだ驚きと悲しみを隠せないが、ずっとしんみりしていても仕方がない。元気を出していこうという雰囲気が教室から少しだけ感じられる。


 しかし、全員が全員前向きになっているわけではない。暗い表情をしているクラスメイトたちも当然いる。坂東(ばんどう)と特に仲の良かった飯島(いいじま)は机に突っ伏したまま顔を上げることなく席に座っている。


「おはよう、七希」


 慶成(けいせい)が声をかけてきた。「おはよう」と挨拶を返す。


「今ずっと、芹沢さんのこと見てたでしょ? ひょっとして、好きなの?」


「いや、違うけど」


 俺が見ていたのは莉璃の方だが、あえて言う必要はない。


「それなら良かった」


「どういう意味だ?」


「別に何でもないよ。それにしても、昨日は本当に驚いたよね」


 何に驚いたかというのは聞くまでもないだろう。クラスメイトの突然死、そんな不幸を体験する高校生は全国を探しても中々いないはずだ。


 その不幸が続かなければ良いのだが──。


 教室を見渡す。いてほしい女子生徒の姿はなかった。


「慶成、江口(えぐち)を見なかったか?」


「江口さん? 今日はまだ見てないよ。いつもならこの時間には来ているのにね。もしかして、昨日の出来事で心を痛めて欠席なのかな?」


 ありえない話ではない。クラスメイトの突然死、精神的ショックを受けて体調を崩し、学校を休むクラスメイトが出ても不思議ではないだろう。


 それならいいが──。


 でも、もし──。


 あんなアプリはでたらめだ。坂東の死は偶然。そうに違いないと思いたいのに、莉璃がルーレットで当たってしまい、俺は動揺を抑えられないでいた。


 激しい動悸がする。


 江口、生きててくれ──。クラスメイトの無事を祈る。


 朝のホームルームのチャイムが鳴り、村上先生が教室に入ってきた。


 村上先生はまるで、地獄を見てきたかのような絶望を表情に浮かべている。


 そして──。


「江口美穂さんが深夜に──脳出血で亡くなったそうです」


 重々しい声音でそう告げた。


 ──俺の祈りは届かなかった。


「嘘でしょ……」


「そんな……美穂ちゃん……」


「一体何が起きてるんだよ!!」


 二日連続のクラスメイトの訃報、教室内に昨日以上の驚き、悲しみ、そして恐怖が充満し出す。


「みんな──落ち着いて」


 大野(おおの)光輝(こうき)はそう呼びかけた。彼は頭脳明晰、運動能力も高く、顔も整っているといった男子生徒だ。クラスのリーダー的存在で、クラスメイトだけではなく、他クラスの多くの生徒からも信頼が厚い。


 そんな大野の呼びかけも虚しく、教室内の混乱は収まらない。


 バタンッ! 大きな音がした。同時に女子生徒たちの悲鳴も聞こえ出す。


 見ると、クラスメイトの星野(ほしの)春子(はるこ)が倒れていた。


 そんな星野に上野(うえの)(じゅん)が駆け寄る。手首を掴んで脈を測り、その後に瞼を開いて眼球の様子を観察している。まるで医者のようだ。


「問題ない。気を失っているだけだ」


 上野は顔色ひとつ変えずにそう言った。


 上野純は高校生とは思えないほど大人びた男子生徒だ。普段からポーカーフェイスで、クールな男である。今も混乱するクラスメイトが大勢いる中、非常に落ち着いた様子を見せている。


 星野春子は元々メンタルが弱い女子生徒だ。心の弱さと体の弱さが比例しているのか、月に2、3回、体調不良で学校を休むことがある。クラスメイトが二日連続で死亡したという現実は、彼女の気を失わせるのには十分すぎるほど衝撃的なことだ。


「誰か星野を保健室まで運ぶのを手伝ってくれないか?」


 上野の言葉に大野がすぐさま反応し、二人は協力して星野を抱えて教室から出て行った。


 ルーレットで当たった番号と同じ出席番号のクラスメイトが死亡した。


 一人なら偶然だと言えたが、二人となるとそれはもう偶然とは言えない。


 アプリは本物だった──。


 0時になると、ルーレットで当たった番号と同じ出席番号の生徒が死亡する。普通に考えたらありえない現象だが、現実はルーレットの示す結果になっている。


 そして今日の0時に死亡するのは──。

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