097 明かされる聖夜1
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○斉藤美郷・豊子の孫。白吹村女子高生。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○ 秋月未来・白吹村役場職員。
○林有里子・白吹村役場職員。
「先輩の大道正火斗さんと友人の桜田風晴くんです」
桂木に紹介されて 2人は有里子に会釈した。
「時計をわざわざ返しに来ると申し出て下さって本当にありがとうございます。元々は父の時計なので、父は喜んでいました」
有里子は3人にそう言った。
それから帽子を取り手袋を外してコートを脱いで席に着く。有里子の装いは白いシャツにカーディガン、それにジーンズだった。
「今日も冷え込んでいますね」
彼女は一言そう付け足した。
風晴達の頼んでいた飲み物やモンブランが届き、林有里子も"サクラティー&ダイトーモンブラン"を注文した。
有里子は桂木の前に置かれたモンブランを指差して言った。
「注文してくれて嬉しいです! 白吹の名産の栗を使っているんです。生クリームと合っていて、本当にとても美味しいですから!」
有里子の熱心さに桂木も笑顔になる。
「じゃ、頼んで良かったです。昨日は秋月さんと後輩と雪像祭り会場で茶碗蒸しも食べたんです。アレも本当に美味かったです。
秋月さんに聞きました。高校の時に林さん達がアイデアを出した商品だって……」
桂木がいてくれて良かったと風晴は思った。正火斗と風晴はこのようなことは何も知らなかった。
「私は白吹が好きなんです。父も役場で白吹のために働いていましたから……何か役立ったらいいなと思ったんですよ」
正火斗は楽しそうに話す有里子を目を細めて見た。楽しい話でなくなることが申し訳ない。だが 仕方ない。
とりあえず──時計を返す前に得られる情報から入る。
「林さんは華蔵理人さんや冴木拓眞さんの同級生でしたよね?
クリスマスパーティーの日に、冴木さんに変わったことは何か無かったですか?」
正火斗は丁寧に聞いたが、有里子はふふふと笑った。
「なんだか警察に質問されているみたい」
これには桂木が謝った。
「すみません。オレ達はミステリー同好会なんで、つい。彼は元部長なんです」
「頭が良さそうだものね! …………冴木くんね。冴木くんはねぇ、確かにあの日 いつもと違ったのよ」
有里子は自分にも来たサクラティーとダイトーモンブランを受け取りながら言った。
「プレゼントを見つけて大広間に戻った時に会ったの。私達はお互い白吹村で生活しているから 久しぶりってわけでもないのだけれど。
ただ、彼 珍しく真剣な顔で"話を聞いてほしい。力を貸してくれ"って言ってきたの」
思いがけない内容だった。正火斗も、桂木と風晴も黙って聞いた。
「だけど私はちょうど父に……あなたに会うようにって強く言われていたものだから……」
「オレに?」
桂木が確かめる。
「──そう。"高校生の男の子が腕時計を受け取ったようだけれど、古いモデルだし今の若い子には迷惑なんじゃないか"って。"会って確認して来てくれ"──って」
桂木と正火斗、風晴は視線を交わす。
──やはり有里子の父親は腕時計が返却されることを望んでいた。
当然だ。手違いで桂木が"華蔵透子を連れ去る時間"を指示した紙の入ったプレゼントを受け取ってしまったのだから。
有里子は結局 桂木に返してもらえなかった。それで 慌てて斉藤美郷に声をかけたのだろう。斉藤美郷は洋館でアルバイトを常時している。
桂木慎に近づいて部屋から時計の空き箱を取ってくれば買い取ると話した。
空き箱なら捨てられる可能性も高いし窃盗にはならないだろうと美郷は引き受けて──そして距離を縮めるために 強引な交際申し込みをした。
言葉は無くとも3人共 頭の中で推理は成立していた。
有里子の話は更なる続きがあった。
「それで私は──冴木くんの話を聞くのが難しそうだったから、秋月ちゃんにお願いしたの。
"冴木くんが何だか困っているみたいだから、私の代わりに話を聞いてきてほしい"って」




