096 気まずい名前の書店にて
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
○林有里子・白吹村役場職員。
○秋月未来・白吹村役場職員。
ア、アサクラ書房……しかも……
風晴は、よりによって待ち合わせ場所の書店名がなんでこれなのかと顔がひきつらずには いられない。
本屋とカフェが同店舗内にあるその正式店名は"アサクラ"だけでは済まなかった。
店舗には"アサクラ&teaダイトー"というデカデカとした看板が掲げられており、思わず風晴は凍った路面に足元を取られた。
「気をつけて」
正火斗に支えられて転びはしなかったが気持ち的には駄々滑りだ。
もはやここまで明確に視界に入るものがある時は、人は話題に挙げない方が不自然なんじゃないだろうか……
風晴は真剣な想像を巡らせた。
『あ〜"アサクラ&teaダイトー"だって! なんだか浅倉さんと正火斗みたいだよなぁ! ハハハ……』
──駄目だ。絶対やめよう
どう考えても桂木の暗い顔しか浮かばない。正火斗にウケたとしても より辛い。
実際、現時点で桂木のテンションは下がってる。静かだ。──当然だよな
「中に行こう」
と正火斗声をかけられて店内に進む。(進むしかない!)
書店側は広々としたスペースに本棚と本が配置され、壁際は全て本棚が並んでいた。
文房具を扱うスペースもあったが レジはセルフタイプのようだ。
こう言う書店でもセルフレジなのは……なんだか寂しさがある。人手も大変なんだろうけれど。
カフェスペースまで行って 風晴を更なる危機が襲った。
林有里子と面識がある桂木が店内を見渡して──
「まだ来てないみたいだ」
と言ったのだ。
この3人でカフェ!!! ここでティータイム!!!
少し目眩を覚えたが 短時間なんだと自分に言い聞かせる。多分すぐに林有里子は来る。近くだとここを指定したんだから。大丈夫だ。落ち着け。
3人で席に着く。(着くしかない!)
店員が来て
「ご注文は?」
と聞いた。
正火斗はオリジナルコーヒーを頼んで、桂木はまだメニューをめくっている。
風晴が
「オススメって何ですか?」
と聞くと
「あ、サクラティーとダイトーモンブランのセットですよ」
と返されたので 大失敗だと内心で舌打ちした。だが
「オレ、そのセットで」
と桂木が向かいから言ったので
"お前がか…………!!"
と叫びたくなった。飲み込む。飲み込む。
「タピオカミルクティーで」
風晴はそう頼んだ。注文を取った店員は去っていった。
流石に飲み込みきれなかったのか──風晴は桂木に聞いてしまった。
「そのセット……頼むんだな」
桂木はテーブル横に貼られていたポスターを指差した。
「モンブランが名産の栗使用ってあるから。食ってこうかと思った」
見上げると 確かに"サクラティー&ダイトーモンブラン"とあり、食用桜の花弁を浮かべた紅茶と栗のモンブランの写真が載り、イラストとなったラブッキーくんが"最高の組み合わせ!! セットでどうぞ!!"と吹き出しで言っていた。
桜田風晴は
なるほど…… と納得した。
大道正火斗は
絶対たのまない! と心の中で思った。
──その時入り口に トートバッグを右肩にかけ、黒いストレートボブヘアの女性が入って来た。グレイのコートを羽織っている。
桂木は目を止めたが 何度か瞬きした。
「林有里子さんだと思う……髪が短くなっているけれど」
グレイのコートの女性は桂木を見つけてやって来た。やはり彼女が林有里子なのだ。
「林さん、髪を切られたんですね。短いのも似合いますよ」
桂木が言うと 有里子はなんとも言えない表情をした。
「父に、いい加減切りなさいと言われてしまって……。ウチの父はちょっと厳しいので……」
正火斗達は神宮寺の秋月未来の話から、林有里子の父親が役場でも怖いイメージだとは聞いていた。
父親にはやはり何かがありそうだ……




