092 その手違いはどこで?
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○ 秋月未来・白吹村役場職員。
○林有里子・白吹村役場職員。
朝食が終わると正火斗が食堂の隣の応接室で話し合うことを提案した。
そこで一同はぞろぞろと応接室に移動した。
風晴と聖は応接室での説明で、昨夜2階で起こっていた──林有里子からの腕時計の箱に隠されていた
"華蔵透子を連れ去る時間"
と書かれた紙の存在と、冴木の広間での話相手が秋月未来であったことを初めて知った。
「連れ去られるのは、透子さんの予定だったってこと?」
風晴は単純な疑問を口にした。
「多分だけれど…………」
秀一が説明を試みる。
「12月24日は、洋館への出入りもしやすくて夜は吹雪の予報も出ていた。当主への脅しに──誰かを行方不明にするにはもってこいの日だった。
けれど直前まで理人さんや透子さんに……好きな人はいないはずだったんだよ。
それで理人さんへの"呪い"には、透子さんをさらえばいいと予定していたんじゃないかな……」
桂木は賛同した。
「あり得るな。あの日の朝、聖を女装させて正火斗先輩が聖に告白するのがやっと決まった。それも、決まっていたのはオレ達の中でだけだ。
だから犯人側には伝わっていなかったんだ」
「犯人は正火斗先輩が当主役を演じているって気づいていなかったんでしょうか。本物だと思って、本物の当主に好かれた真淵くんを連れ去らなければならないと思った……?」
神宮寺の疑問には、正火斗本人が答えた。
「神宮寺の予想通りかもしれないが、多分どちらでも良かったんだろう。とにかく公で"当主"が告白した相手は、そのまま幸せにしていられると困ると踏んだんだ」
「だけれどこんな結構デカい証拠を、誰でも取れる"プレゼント探しゲーム"に出したのは、あまりにも軽率で不自然だ。──実際 オレにこうやって取られてるわけだし」
桂木の視点はもっともだった。
お粗末な作業だ。
「──それでも……いくらなんでも、誰にでもメッセージ入りの腕時計のプレゼントを取られて良かったってことは無かったはずです。
何か段取りがあって、ちゃんと相手に渡るはずだったのに、渡らなくなったんですよ……」
椎名も考えこんでいる。
「止まってる腕時計の表示は11時半ね。物で伝えているってことは、トークタイムで会うつもりは無かったってことよね? 会うのなら さらう時間は言って伝えられたもの」
水樹の意見だ。
風晴は思い出した。
「だけどあの時……桂木も隠された場所から探し出して来たんじゃなくて、ただ手に取ってた感じだよな。──何しろこのプレゼント、そこのテーブルの上に置いてあったから」
「あ!!!」
上がった大きな声は浅倉だった。
「私だ。私かもしれない。──ううん、私だ、やっぱり」
1人パニックになりだした彼女に正火斗が
「落ちついて浅倉──何があった?」
と声をかける。彼女は一つ深呼吸をした。手振りを加えて話しだす。
「その時計の箱! 細長いの、見覚えがある!
正火斗と真淵くんが応接室の戸棚の奥に隠すように決めていたみたいだけど、私が真淵くんのプレゼントを入れるのを手伝った時──もう、奥にそのプレゼントがあったの。
私は……真淵くんのプレゼントの横に自分のプレゼントも置きたくなっちゃって……どうにも、その長い箱が邪魔だったから取り出したの。
それで テーブルの上に置いておいた。棚の奥より取られ易いし」
「確かに取られ易い。オレ取ってるし」
と桂木が言ったので、みんなが笑った。秀一が
「気にすることないよ浅倉。って言うか、もしかしたら邪魔したことは役立っているかもしれない。透子さんは連れ去られていないんだから」
と、まだ混迷している状態の彼女に言う。浅倉は必死に思い出しているようで
「確かに──今思うと、あんな棚の高い位置の奥に収まっていたのは不自然だった……。気づかないでいたけど、今まで」
と残念そうに呟いた。
「あのクリスマスパーティーでは何かが起こっていたんだ。そして、冴木拓眞は殺された。その謎を解きにいこう」
正火斗は浅倉と──全員に向けて言った。




