091 朝の風景
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○山原海・華蔵家料理人。
◾️これまでのあらすじ
鳳翔院学園ミステリー同好会メンバーとN県白吹村の洋館ペンションで再会した風晴と聖。
しかし洋館当主の華蔵家には"白吹の呪い"があり、24日クリスマスパーティーの後、風晴、聖、冴木の3人が洋館から姿を消す。連れて行かれた洞窟から風晴と聖は正火斗に救助されるが、冴木拓眞は殺されていた。クリスマスパーティーの日の調査を進める中、桂木のもらったプレゼントの腕時計の箱から"華蔵透子を連れ去る時間"と書いた紙が見つかる。
2025年12月28日午前7時50分
風晴と聖は部屋から出て食堂に向かう。
途中、聖は何度か立ち止まった。
風晴は聖が装飾品を……飾られている銅像や絵画を見ているのだと気づいた。
風晴も注意して見てみた。
──すると確かにあったはずの白い外国女性の顔の彫刻は無くなっていて、馬の銅像は──獅子に変わっている。かなりの大きさの山の風景画は、さほど大きくない麦畑の風景画に変わっていた。
風晴と聖は顔を見合わせた。
──── 一体何が起きている?
食堂に行くと、ミステリー同好会メンバーや正火斗、理人も席に着いていた。風晴は慌てて理人に言った。
「理人さん、なんか……廊下の装飾品が……変わっているんですけど リフォームか何かですか?」
風晴に続いて聖も口を開いた。
「玄関ホールの壺や、オブジェや絵画も……昨日の午後から変わっている」
風晴はこの発言に驚いた!!全く気づいていなかった!!
聖は特定の場所や場面を鮮明に記憶することがあるらしい。ただ本人はそれを選べず、無意識に行われる。
「流石、聖。似たような物を用意しているつもりだけれどね」
正火斗がニンマリして言った。
「兄さん、一体何してるの?」
妹は何かを感じとったようだ。
「買い取ったんだ。──ここの美術品と骨董品」
「「「「「え"え"!?」」」」」
と声にならない声があちこちから上がる。
「昨日、なんだか荷物の搬入が激しいと思っていたら……それか」
秀一が言った。
「いやぁ、お兄さんくらいまとめて買ってくれる人はいないから 助かるよ。10桁を数分で了承してくれるし。いたとしても あとはせいぜい……」
理人はその先をうやむやにしたが、水樹は心当たりがあった。元々この洋館を購入しようとしていたのは──
「兄さん……まさか」
「間違ってもプレゼントじゃないぞ? あの人に売りつける。ここの美術品に目をつけて買い取ろうとしていることは確かだから。
あの人がやろうとしたのは"僕らの利用"だ。
目をつけた美術品のために理人さんに話をもちかけて、僕とお前が彼らを助けるように仕向けたんだ。僕らが彼らに役立てば、売却も値切りもスムーズに進むって算段だろう。
──冗談じゃないね。こっちの労力分は支払ってもらうつもりだ。
買わないならネットオークションに流すと、せいぜい良い値を付けてもらうよ」
水樹は溜め息をついた。
"あの人"とは大道真夜呼のことだろう。正火斗と水樹の母親だ。
もともとこの洋館に水樹が行くことにしたのには、母親の先導があった。
正火斗は巻き込んだ母親に報復するつもりなのだろう。
「やっぱり……」
鳳翔院学園の生徒は皆 大体金持ちのはずだが、それでも10桁には全員ひいていた……
「数十億ポンと出せるって……」
「僕、進路決めるの馬鹿らしくなってきました」
「絶対敵わない……」
秀一、神宮寺、桂木の言葉だ。
水樹は建設的な発言をした。
「兄さん、親子喧嘩にお金をかけるのはやめてよ」
正火斗は水樹に微笑んだ。
「大丈夫だ。あの人への報復のためだけに13億はつぎ込まない。──それだけの 価値のある人じゃない。
いろいろ含めた出費だし、ちゃんと元は取るから、何も心配いらないさ、水樹」
水樹はその優しい言葉に かえって不安を抱いたようだ。
「本当に……大丈夫なの?」
正火斗は理人と視線を交わしてから 答えた。
「まあ、少し驚くことはあるかも」
「驚くことって? ──危ないことなんじゃないでしょうね、また」
女中達が朝食を運んできた。
良いタイミングだと──正火斗は水樹に答えずに朝食に向かう姿勢を取った。
理人も味噌汁を口にした。彼が食べ始めたので正火斗も椀を手にした。
まともに調べていても数年かかるだろう。
多少の危険も金もかかってもいい──
とにかく犯人を挙げて東京に帰る
風晴も朝食に向かったが 何だか違和感を覚えた。
白米、漬け物、魚、茄子の惣菜に味噌汁の香り──魚への包丁の入れ方も少し違う気がして……
「和食だ。今日は山原さんが作ったんじゃない……?」
呟くように風晴が言うと 理人が
「山原は遅番の日。確かに、今朝は他の者が作ったね。そんな日もある」
と教えてくれた。
正直 朝の白米と味噌汁は嬉しいものもある。
風晴は朝食を かき込んだ。




