089 夜の訪問者達3
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
2025年12月27日午後9時
18歳の誕生日の夜、大道正火斗はある決断をしていた。
誕生日であるということで朝から水樹や秀一からはおめでとうのメールが来ていた。浅倉奏衣からも。
水樹は、山原さんや理人さんに言って何らかの形での誕生会をしようかと──提案してもきたが 断った。
夜に浅倉と過ごすから静かにしてくれと返信したら、妹とはいえ流石に黙った。
決着をつけるべきだと思った
もう……決着をつけるべきだ
ノックをすると 彼女はすぐに部屋に入れてくれた。事前に"行くから"とは伝えてあった。
浅倉は目に見えて喜んでいた。今も彼女が気分を高揚させているのは伝わってくる。
だからこその決断だった──
「本当にごめん。秀一に"これは正火斗がもらうべきだ"と
渡されたけれど……"受け取れない"と思った。──それが自分の答えなんだ ……と分かった」
正火斗は秀一から譲られた手編みの手袋を握っていた。浅倉とそろいの色違いのものだ。
浅倉は目を見張っている。
彼女は秀一から、自分がプレゼントとして出品した手袋の行方は聞いていた。正火斗に渡ったと聞いて安堵した。だって彼のために編んだんだ。なのに────
「分かった。勿論、着けたくないなら着けなくて全然いいの。好みだってあるだろうし 正火斗の今の青い手袋 凄く似合っているもの。全然いいの、全然いいの、正火斗」
「浅倉……」
彼女は言葉を止めなかった。正火斗の話を聞くのが怖い
「これからはこういうのはやめる。お揃いとか手作りとか、2度とやらない。絶対やらない。
クリスマス一緒でなくても誕生日2人でお祝いしなくても 私はいいの! そんなのやらなくていいから!!」
正火斗の顔はより険しく辛いものになった。
浅倉は彼にすがりつくように見上げて続ける。
「連絡だってたまにでいいし放っておかれたっていい!! 私がそういう正火斗を好きだから!! それで幸せなの!!…………お願い……」
最後の一言は、何を願っているのか浅倉自身はほとんど分かっていなかったかもしれない。ただその言葉が口をついて出た。
だが正火斗の方が分かっていた。その願いは聞き届けられないと。
「浅倉は全然 幸せじゃないと思う。僕と付き合っていても幸せじゃない。これからも……幸せにはならない」
浅倉は両手で耳を塞いだ────聞きたくない!!
「別れよう。もう……無理だと思う」
彼女は耳を塞いだまま頭を振る。
「いや!……いや!! そんなのはいや!! いやだ!!!」
耳からは手を放し 浅倉はその手で正火斗の両腕をつかんだ。
「私、正火斗に好きになってもらえるような女性になるから!! 必ずなるから!! だから時間を下さい……!
頭が良い方がいいなら勉強するし マナーや振る舞いが大切なら身につける、好きな体系や顔があるなら私は整形だってしてもいい!! だから……だから恋人でいて下さい……!!」
正火斗も浅倉の肩を掴んだ。涙に濡れるその瞳をしっかり見つめて言う。
「浅倉は完璧だと思う。君は何も悪くなくて、そのままでも多くの男達が君を愛すると思う。
悪いのは僕だ。君を愛せない。どうしても……愛せない。
本当に申し訳ないと思っている。長く……長く、君は僕だけを追い続けてきてくれたのに」
正火斗の腕を掴んだまま 床に吐くようにして浅倉は叫んだ。
「だったら あなたが愛してよ…………!!!」
泣き崩れる彼女をなんとか抱きとめる。
浅倉も正火斗の胸にすがって泣いた。彼もそれを抱き締めた。
でも互いに分かっていた。
どんなに距離を縮めても身体を寄せ合っても、そこに愛は無いのだと────
どれくらいの時が経ったのかは分からない。
しゃくりをあげる浅倉が静かになった頃、正火斗はその手を緩めた。だが、その時浅倉が腕に力を込めて正火斗に顔を近づけた。
彼女は勇気を振り絞って問いかけた。
「正火斗……誰か、好きな人が……いるの?」




