088 夜の訪問者達2
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○斉藤美郷・豊子の孫。白吹村女子高生。
○林有里子・白吹村役場職員。
紅白饅頭を食べ終えて、桂木と椎名は部屋の片付けを開始していた。
移動させた装飾品を棚に戻しながら桂木は言った。
「椎名と桜田ならお似合いだよな。なんかほっこりする」
あまり大きな誤解は良くないと思った。桜田くんにも迷惑だ。
「桜田くんとは、まだ ぼんやりとそうなったらいいなって思う感じなんです。一緒にいると……安心なタイプですよね」
「確かに。桜田と真淵は癒し効果があるよな、絶対。桜田は今 地元で好きな女の子とかいなそう?」
全くわからない。彼に対してそういう興味は薄かったから。
「私のことより桂木先輩です。浅倉先輩に意識してもらう最善の方法は告白だと思いますけど……」
「告白な…….告白」
そう呟くように言うと 桂木は片付けの手を少し止めた。
「オレ、本当はミステリー同好会を正火斗先輩が引退したら……浅倉に告白しようとは思ってたんだ……」
引き出しを閉めていた椎名が振り返る。
「あの人が浅倉の視界からいなくなったら、まだ……だいぶマシなような気がして。
けど夏休みまでいたし 来なくなったと思ったら浅倉の方が告白してて───で、うまくいってるし」
「……そうだったんですね……」
椎名は気づけなかった自分を恥じた。
──私は彼の何を見てきたんだろう。
「正火斗先輩が嫌だとかじゃないんだ。頼もしいしヒーローイックだし憧れだってある。……だけど存在が大きすぎて……」
桂木の言葉はしぼんだ。確かに"恋敵"となれば偉大すぎる人だ。
そうやってずっと恋心を隠して来ていたんだ──やっぱり──私と同じように
私が、水樹先輩や浅倉先輩に臆して隠していた彼への想いのように
だから応援したいと思ったんだ
──私だけは
心からこの人を応援してあげたいと思ってしまった
「告白しても上手くいかないかもしれませんし、その後いくらかは気まずくなるかもしれません。だけど……それでも桂木先輩ならその後からが勝負なのかなって気が、私はするんです」
あなたは私とは違う
「正火斗先輩は学園に来る機会も減っていくし、大学に進めばますます浅倉先輩との時間が減るんじゃないでしょうか。浅倉先輩はもっと寂しくなっていく気がします。
桂木先輩は同学年で同好会も一緒です。勝算はあります!!」
ガンバレ!
「だから私はやっぱり告白を勧めます。言った方がいいですよ。せっかく……想ってきた気持ちを……」
私だったらきっと凄く嬉しい
どうか無かったことにしてしまわないで
桂木はソファにかけていた自分の服も しまいだした。
「……ありがとう椎名。何だかすっごいパワーもらった気がする。ちょっと……考えてみる。前向きに」
椎名はうなずいた。明らかな、菓子の空袋のようなゴミは拾ってゴミ箱に入れる。
私の分も 彼が頑張ってくれたら……それでいい
その方がいい……
自分への応援はもう……疲れてしまったけれど
彼を応援するなら きっと きっとできる
うつむいた先の空になった紅白饅頭の箱を手にした。
「この空き箱ってどうします? この大きさだとこのままゴミ箱に入れたら……」
「"空き箱"!! "ゴミ箱"!!」
言っている途中で桂木の大声がして 椎名は彼に向いた。
「斉藤美郷の言葉だよ。彼女確かに"ゴミ箱に無かったから探していただけ"って言ってたんだよ。探していたものは"空き箱"だって言ってた……」
椎名は頭の中で整理しながらも言葉にした。
「でもこの紅白饅頭は今私が持ってきたもの……取ったのはクリスマスパーティーのプレゼント探しですけど……」
言いながらも椎名は桂木と目を合わせた────2人は同時に気づく。
「「クリスマス・プレゼントの腕時計の箱!!!!」」
一緒に叫んで 椎名は続けて桂木に聞いた。
「どこです? クリスマスプレゼントはどこに?」
桂木は今日 出歩くのに持って行ったショルダータイプのボディバッグを持ってきた。大きなものでもないからそれに入れていたのだ。
時計を身につける習慣もなく、まだ箱に入れたままだった。
だが時計を身につけて箱は捨てられることを 期待した連中がいるんだ────美郷に"わざわざ買い取るから"とまで言い、空き箱の回収を命じた者達が。
何故そこまで箱を?
桂木はリュックから腕時計の細長い箱を出した。椎名も身を乗り出して覗き込む。
「誰からのプレゼントでしたっけ……?」
桂木は腕時計を持ち上げて 時計を固定していた上底を探った。
「林有里子さんからだった」
椎名からの問いに答えながら、桂木の指は箱の底に丁度合うような大きさの細長い紙を引っ張り出した。
──文字が書かれている。
2人は書かれていた文章を見つめた。
"華蔵透子を連れ去る時間"
確かにそう書かれていた。




