087 夜の訪問者達1
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○斉藤美郷・豊子の孫。白吹村女子高生。
夕食の席で、理人は ひとまず斉藤豊子を"自宅待機"にしたとミステリー同好会メンバーと風晴達に告げた。
豊子はやはり"孫を使って金品を盗ませようとした"という説をひたすら言い続けた。
「むしろ明白だろうな────豊子は潔白だが 孫の美郷が危険な連中と関わっている。
祖母である豊子は 誰の指示だったのか美郷が漏らしてしまうことがあれば、孫の身が危ういと考えたのだろう」
理人はそう言い──あとは何も語らなかった。
夕食は平目のコース料理だったが、その日は静かな夕食だった。
それぞれに考えることがあった。
夕食後、椎名は一つの決断をしていた。
彼女は『紅白饅頭』の箱を持って、ある部屋に向かった。
ノックをするとその人は扉を開けてくれた。
顔を見るとドキリとするけれど──無視した。
「ちょっとだけ、中……いいですか?」
椎名がそう言うと桂木は
「今ゴチャゴチャしてるけど」
とは言ったものの通してくれた。
中に入った椎名は、あちこちの引き出しが開いたり 物が出たりした室内を目の当たりにした。
「……大変だったんですね。片付けを手伝いますよ」
だが桂木は首を振った。
「違う違う。斉藤美郷はこんなに ぶちまけたりはしていなかったんだよ。──オレがやってるだけ」
椎名は驚いた。
「え?」
「"空き箱"って言うのが気になって。部屋にあったっけ? オレ持ってきてたっけ? ってやっていたらこうなっていた」
桂木が自分で呆れたように言ったので 椎名は少し笑った。
「やっぱり片付けを手伝いますよ。それからこれをどうぞ、桂木先輩」
椎名は桂木に白い箱を渡した。思いがけなかったのだろう──桂木は不思議そうな顔でそれを受け取り、フタを開けて声を上げた。
「紅白饅頭!!」
喜んだが、すぐに真顔になって
「でもオレがもらっていいの?」
と彼は聞いてきた。椎名は
「いつもお世話になっているお礼と応援の気持ちです」
と答えた。
「いや、大したこと何もしてないけど。応援は早くも受験? 勉強 頑張れってヤツ?」
椎名は笑顔で言った。
「桂木先輩の片想いの応援です。──浅倉先輩への」
ドサッ
と音がして 桂木は紅白饅頭を落としていた。
紅白饅頭は個包装がされていたので 落とされても問題が無かった。
荒れている部屋はそのままにして、ベッドに腰掛けて桂木と椎名は紅白饅頭を食べていた。
昔のデッカいのではなく現代の紅白饅頭は大福を少し大きくしたような感じで、皮はお餅で食べやすかった。
桂木は椎名に桃色を勧めてくれたが、あとはまた そう食べる機会はないだろうからと、椎名は桂木に桃色を譲った。
「……じゃあ中等部からだったんですね」
椎名は桂木の話に相槌を打った。
「そう──初めて会ったのはね。あっちはバレー部の練習中で、彼女の打ったアタックが オレの顔面に当たった」
椎名の白の饅頭を食べる動きが止まる。
「それはまた印象的な……」
「だろ? 凄い謝ってくれて、オレの方は凄い美人だなぁって印象深かった。でも別に それで好きになったわけじゃなくて……」
椎名は饅頭を持つ両手を下げて、膝の上に置いて話を聞く。
「バカみたいだけど……オレ、多分 浅倉が正火斗先輩を好きだから……好きになったんだと思う」
桂木は続けた。
「あんなに告白したり、でも駄目になったりして──なのに好きでい続けるのって凄いな 偉いなって思うようになって……」
そこで大きく溜め息をつく。
「それで────始めから他の男に心奪われてる女の子を好きになってた。しかも今はその2人はもう上手くいってる。……ホントにバカだ、オレ。もうやめたい」
椎名は 決意してきたことを言った。
「桂木先輩、正火斗先輩と浅倉先輩は……完全に上手くいってるわけじゃないみたいなんです。浅倉先輩……寂しいって」
桂木が椎名を その日1番に見つめた。
椎名は胸が痛くなる気がしたが────気のせいだと自分に言いきかせた。
「だから……だから頑張ってみて下さい。浅倉先輩が気づいてないだけで、桂木先輩は良いところが いっぱいありますよ。
ちゃんと想いを伝えて、意識させられたらきっと……きっと可能性があると思います」
あなたは素敵な人だから
それを知っているから
「私、桂木先輩を応援しますから」
そうしたいと思った
私は
「……ありがとう椎名。本当にありがとう」
私は
「オレも椎名と桜田を応援するよ。心から」
失恋でいい
苦しみしかない恋心は もう消してしまおうと 決めた
私は そう決めたんだ──




