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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第11章 入り組む迷宮

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086 洋館を去る者

ー登場人物紹介ー

※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。大企業財閥御曹司。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。

桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


華蔵理人かぐらりひと・華蔵家現当主。

華蔵透子かぐらとうこ・理人の妹。

斉藤豊子さいとうとよこ・華蔵家女中頭。

斉藤美郷さいとうみさと・豊子の孫。白吹村女子高生。

冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。

赤沢幸太郎(あかざわこうたろう)・新しい華蔵家運転手。

戸田広雪とだひろゆき・白吹村男子校生。3年。

秋月未来(あきづきみく)・白吹村役場職員。

林有里子はやしゆりこ・白吹村役場職員。

葉崎達哉はざきたつや・25年前からの行方不明者。

 




 豊子(とよこ)理人(りひと)と書斎で話し合うことにはなったが、美郷(みさと)を家に帰してほしいと懇願(こんがん)した。

 美郷の方も理人の許可も出ないうちにスマートフォンで電話して、家の人に迎えに来てほしいと連絡してしまった。


 誰もが美郷から話を聞きたかったが、美郷だけの拘束(こうそく)は問題だし 2人を残しても2人共何も言わない可能性は高い。


 "盗もうとした"という発言(はつげん)はあるが実際(じっさい)に盗んだ訳でも無い。警察を呼ぶのは無意味(むいみ)だし──理人もそれを望んではいない。


「分かった。話は豊子から聞こう」


 仕方なく──理人はそう決断(けつだん)した。


「着替えて来ます」


 と足早に斉藤美郷は女中用の控室(ひかえしつ)に向かった。


 桂木はそれを追った。








 1階の更衣室(こういしつ)兼控室で美郷は窓から外を見ていた。

 土曜日で仕事が休みの父親の車が来たのを確認してから、彼女は荷物を持って控室のドアを開けた。


「このまま泥棒(どろぼう)まがいでいいのかよ? 君も豊子さんも本当は盗もうとはしてないんだろう?」


 桂木だった。美郷が出てくるのを待っていたのだろう。壁に()りかかって彼女を見下ろしている。

 美郷は唇をかんで何も言わずに桂木の前を通り()ぎようとした。


「"誰に言われたか"は聞かない。でも教えてくれ。()()探してたんだ?」


 美郷は玄関へと歩いていく。桂木は彼女についていく。

 彼女が玄関を開けた時、桂木は美郷の左手を(つか)んだ。


「何十年もここに(つと)めていた豊子さんが本当に誤解(ごかい)されたままでいいのか!? 教えてくれ、オレの部屋で一体(いったい)何を探していた?」


 美郷は桂木を見つめて 小さな声で言った。


「箱。……空き箱……」


「え……?」


 桂木が聞き返そうとした時


「美郷!! 来なさい!」


 と外の車から声がした。見ると乗用車の車の窓が開いていて 中年の男性が(にら)んでいた。

 桂木は反射的(はんしゃてき)に美郷を(つか)んでいた手を(はな)した。

 美郷は車へと走って行く。


 "箱? 空き箱?"


 美郷の残した言葉を桂木は()り返した。








 その後──洋館には椎名と浅倉が戻って来た。


 午後の空き時間は、正火斗は自分の使っている当主部屋にミステリー同好会メンバーと風晴、聖を呼んだ。


 それぞれに行った先からの情報を報告し合う。


 秀一と水樹からは洋館内の従業員(じゅうぎょういん)達の話。

 正直言って()たり(さわ)りのないものばかりだった。誰も彼も当主の悪口も村人の悪口も言わないような感じだ。

 又、冴木拓眞(さえきたくま)や風晴、聖の行方不明事件の頃には 従業員のほとんどは帰っていた。

 ただ冴木は3年前にここで働くようになってから──女性関係の(うわさ)()えなかったらしい。

 付き合ったという女中もいた。しかしこの半年くらいは"恋人"と特定される女性は、女中達は皆 知らないと言った。


 桂木、神宮寺は秋月未来(あきづきみく)の話からの林有里子(はやしゆりこ)についてを報告した。

 両親については、母親は優しいが役場管理職の父親は少し怖い人物なようだ──とも。


 椎名と浅倉は 戸田広雪(とだひろゆき)からの連絡待ちであることと喫茶店(きっさてん)で会った夫婦からの話、理人と透子の母親である優美子は自殺である可能性が高いこと──それから、新運転手の赤沢幸太郎(あかざわこうたろう)から"白吹(しらぶき)の呪い"を()ぎ回ることへの忠告(ちゅうこく)があったことを()べた。


 正火斗、風晴、聖は冴木拓眞の母親の話と洞窟(どうくつ)所有者の金森香世(かなもりかよ)の話だ。

 金森香世は 優美子の高校時代の恋人でもあった葉崎達哉(はざきたつや)の姉でもある。彼女は 弟は殺されていて、"白吹の呪い"は人為的(じんいてき)なものだと確信(かくしん)していると報告した。



 最後に桂木は──今日の午後にあった斉藤美郷の客室()らしと、それを盗難未遂(とうなんみすい)に わざわざすり()えた豊子の話をした。

 去り際に美郷が言った『空き箱』の言葉も。

 だが桂木自身は、いくら考えても自分の所持品(しょじひん)の『空き箱』については思い当たらなかった。



 正火斗は わざわざ天羽生颯(あもうはやて)の話を出したりはしなかった。

 実際 みんな それどころでは なくなっていた。








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