007 身代わりの理由と選定基準
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
正火斗の剣幕が物凄かったので、理人は両手を上げて慌てて言った。
「僕の言い方が悪かったなら謝るよ。
君達が誰かを好きであるかのように演じてくれれば、その相手を連れ去ろうとするものが出てきたら、僕らが捕まえる──と言うことさ」
「僕らって言うのは……?」
神宮寺が聞いた。
「僕もだし、ここにいる橘や山原、拓眞や豊子もだ。彼らは僕らが子供の頃からの知り合いで僕の考えを支持してくれている」
見ると、壁際に並んでいる4人の使用人達は深くうなずいていた。
「あのう……でも正火斗と水樹が、理人さんと透子さんの偽物を演じる必要って本当にありますか?
お二人が恋したように演じたら、それで充分試せるんじゃないですか?」
浅倉は理人に向かってそう言った。水樹の親友で正火斗の恋人の立場の彼女は、複雑なのだろう。
「そうできない理由はかなりある。
まずは僕や透子が好意の表示したら、この年齢だとここでは即求婚だと とられかねない。相手は舞い上がって親も含めて喜びだす。後になっても取り下げは厳しい。
つまり、僕と透子では恋心を試すことは容易ではないんだ。」
ここで理人は話しながら立てていた指を1本から2本にした。
「2つ目は本当に呪いがあるという可能性だ。馬鹿みたいだが、僕と透子が好意を表せばそれが起こるかもしれない。少なくとも その可能性がゼロでは無くなる。
でも大道正火斗と大道水樹なら、最悪 行方不明者が出ても呪いのわけがない。犯人たる人物が必ずいるだろうし、警察にも届ける──必ず、すぐに」
真剣に告げてから、理人は指を3本にした。
「最後は──第三者が華蔵の家の者を演じ、それを信じて人為的に呪いを創ろうとした者が明かされる方が……この白吹村をとりまいていた因習を消し去れると思うからだ。
多分白吹には、妄信的に風習を重んじる者達と もはやそれから遠のいている者、その狭間にいる者が3タイプあるんだろう。
僕は華蔵家への捻じ曲がった信仰を取り払いたい。
それが、当主としてすべき最後のことじゃないかって気がするんだ」
椎名は
「おっしゃっていることは分かります。
正火斗先輩や水樹さんを華蔵家のものと一度信じさせて、でもそれが違うということを敢えてやることに、思い込みの危うさを気づかせる効果にしたいんですね」
と裏付けした。
正火斗は嫌な方向に話が進んでいる気がして意見した。
「無理だ。だいたい外見が違うだろう? 村人はすぐに見破るに決まってる」
「大丈夫だと思うよ。君達がこれまで会って来た東京の財界や政界の人物なんかは、明日はまず来ない。
パーティーと言ってもこれは、白吹村の住民への地域ボランティアみたいなパーティーなんだ。
僕と透子は10年ぶりだし、この村の者は華蔵家の人間には過剰に親しくは接しない。──例外はいるけれどね」
そうして理人は冴木拓眞の方を見た。冴木は気づいて手を振ってきた。
理人はただ笑って返す。そうして正火斗に再び向き直った。
「大事なのは雰囲気だ。透子と水樹さんは評判の美しさもそろっているし高貴さもある。
君に至っては──僕より年下だけれど、まとう空気の威圧感や迫力が完璧だ。傲慢で高慢なのはここでは風格となる。僕らの変わりは君達しかいない」
風晴や──多分聖やミステリー同好会メンバーには納得の理由だった。
正火斗は確かに神秘的でカリスマ性があって、神事を扱う当主どころかどこかの王子でも演じられるだろう。
だが、当の本人は苦虫を潰したような顔で言った。
「一個も褒めてないです。──それは」




