008 黒から白へ
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
正火斗が頑ななためか、透子が水樹に話しかけた。
「水樹様、その……できればなんですが、お髪を黒に染めさせてもらってもよろしいですか?」
話しかけられて、水樹は驚いたようだ。
「え? は、はい!! 染めるくらいなら……全然……」
豊子と言うメイド姿の女中も
「お着物も勿論お貸し致します。最高級の帯もおつけしましょう」
と言葉を添える。
「本当ですか!?」
水樹は顔を輝かせた。
透子はニッコリしてうなずいて──笑うとまた可愛いらしい顔だった。それから真剣な面持ちになって口を開いた。
「変わりと言ってはなんですが……私はこの髪を切ります。明日は短髪になって眼鏡をして、女中の姿であなたのお傍に仕えますから。何も心配なさることはありません。──どうか私達にお力をお貸し下さい」
彼女はそうして、腕を折り曲げてソファに座りながらだが──水樹に向かって深く頭を下げた。
「透子……」
兄である理人も 妹の姿を見て胸打たれたのか、正火斗に その日初めて頭を下げた。
「何とかお願いしたい。君にも着物も羽織も長襦袢も足袋も全て最高級品を取り揃えよう。クリスマス・イヴとクリスマスの2日間だけでいい! 僕の代わりを君にお願いしたい! 頼む、正火斗くん!! やれるのは君しかいないんだ!!」
「僕は和装にこだわりはありませんよ」
正火斗の返事はやはり つれない。
だが、そこに
「兄さん……」
と声がかかった。
頭を上げない透子からお願いされ続ける水樹は、いたたまれなくなっていた。
水樹は横にいる秀一のことも、すがるような眼差しで見た。
秀一はすぐさま微笑んで
「何があれば助けるよ」
と言った。水樹が嬉しそうになったのは言うまでもない。
「恋がこれからも出来ないような気持ちじゃ……辛いわよね。私も別にいいかな!」
浅倉も明るく言ってくれた。
「女性が髪を切るって大きな決断ですよ!」
「ただパーティーに参加するより、役立ちたいです」
「クリスマスに和装って言うのもまた乙かもなぁ! 先輩」
神宮寺、椎名、桂木の声だ。
「黒の次は……白」
と聖までポツリと言った。
風晴は何も言わなかった──が、正火斗と目は合った……と思う。
正火斗は額に手を当ててうなだれた。
静まりかえった広間に、彼の大きな溜め息だけが響いた。
そして 彼はついに言った。
「わかりましたよ。やればいいんでしょう? 2日間だけですからね」
室内はワァッ と歓声と拍手が起こった。
何に対する喜びなのかも分からないまま────
聖の言葉通りだったと気づくのは、ずっと後だった。
自分達は知らぬ間に、かつての"黒竜池の伝説"から
新たな"白吹の呪い"へと 事件に引き込まれていたのだ…………




