009 まばゆい部屋ともう一つの扉
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
◾️これまでのあらすじ
夏休みに共に過ごした鳳翔院学園ミステリー同好会メンバーとN県白吹村の洋館ペンションで再会することになった風晴と聖。
しかし洋館当主の華蔵家には"白吹の呪い"があり、現当主の理人と透子兄妹から、正火斗と水樹はクリスマスパーティーでの身代わりをお願いされてしまう。
広間では、その後 理人が立っている使用人達の紹介をしてくれた。
燕尾服の老紳士はやはり執事で、橘信蔵。
高齢だがシャンとしている白髪のメイドは女中頭の斉藤豊子。
コックの姿をしている太った男性は料理長の山原海。
そして背が高い理人の同級生である冴木拓眞は運転手で、この時期は雪寄せ等もやっている。
紹介が終わると夕食の時間が近いと言うことで、一度お開きとなった。
そこでやっと、風晴と聖は自分達の部屋に通されることになった。大きな荷物はすでに運び込まれているらしくて 橘についていくだけで良かった。
途中で
「他のご友人達は2階の客室です。扉にネームプレートが下げられておりますから、会いたい方はそれを見てお探し下さい」
と説明を受ける。
みんなと離れて3階なんだと気づいて少し残念だと思ってしまった。でも名前付きなら、確かに探しやすそうだ。
幅の広ーい階段を3人は上がった。小学校の階段を風晴は思いだしたが、それよりも幅があるかもしれない。上りながら手摺には獅子が彫られているのが目に入る。高級感は小学校の階段には無いものだ。
上りきると、3階はさらに装飾が施されていて圧倒された。
「うわぁ……」
ただの廊下なのに窓や天井が凄い。ステンドグラスも使われていて花や図形の柄と あい合わさり、異国を思わせるデザインになっていた。
外国人女性の顔の石膏の彫刻が飾られていたし、馬の銅像もあった。絶対高そうだと、風晴は慎重に通り過ぎた。
かなりの大きさの山の風景画もあった。
やがてようやく"桜田風晴様・真淵聖様"とプレートのついた扉を見つけた。
「どうぞ」
と橘に促されて扉を開けると、中はまた素晴らしい部屋だった。何よりも、2人部屋とはいえ広かった。バストイレと洗面以外にテーブルとソファ、黒い小型冷蔵庫にテレビやデスクのある部屋が一つで、それ以外にまた広い寝室がある作りになっている。
「お部屋の鍵はベッドわきの化粧台の引き出しにあります。普段は貴重品を身につけられていれば、鍵は不要です。しかし24日・25日は外部から人が入りますから、必ず鍵を閉めるようにして下さい」
と橘は説明してくれた。
聖は部屋を見回して
「……女の子……喜びそう……」
という感想を言った。風晴も同意だった。女子がキャーキャー騒ぎそうな部屋だ。
天井はやはりシャンデリアが吊るされているし、ベッドも格調高い感じでシーツはピンク系だ。化粧台は絶対アンティークな代物だと直感する。
「どっかのスイートルームでこんなのありそうだな」
想像しか出来ないが、風晴はそう言った。
それから、もう一つ片開きの扉があったのでノブに手をかけた。
「ん?」
まだ部屋があるのかと開けようとしたのだが、ドアノブはガチャガチャと言うだけで開かない。
ドアノブの音に気づいて聖まで近くに来ていた。
「そちらの扉は今は使われておりません」
寝室の入り口に立って橘が告げた。
「……そうなんですね。……すみません」
風晴は慌ててドアノブから手を離す。
「いいえ。説明を忘れておりました。鍵が今は無くなってしまったと聞いております」
風晴と聖は、橘の話に機械的にうなずいた。
そして改めて──目の前の茶色の木造りの一枚の扉を眺める。
「"開かずの扉"か……」
風晴は呟いた。
「30分後には夕食の時間です。当館では、一つだけ食事においてルールがございまして」
橘の話に風晴と聖は振り返った。
「テーブルに御当主の──理人様がいらっしゃる時には、理人様が食事に口をつけてからが、"いただきます"となります」
風晴は分かり易く聞きたかった。
「当主よりも早く食べるなと言うことですね?」
橘は微笑みを崩さない。
「さようでございます。そのことだけはお守り下さい」
そうして、彼は一礼をして去って行った。
静かになった部屋で、聖は風晴に言った。
「なんだか……大変なクリスマスに……なりそう……」
聖は不安そうな顔をしたが、風晴は返す言葉が見つからない。──否定できない気がしているからだ。
窓を通して風の音だけが、大きく耳に届いている気がした。
それは 吹雪を予感させる音だ────




