010 お互いへの報告を
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
食堂に行って まず話題になったのは、令和の高校生にとっては緊急事態的なことだった。
「ここスマホの電波が壊滅的に悪いんだけど!?」
浅倉は、実際にスマートフォンの電波表示を確認しながら言った。
「僕も気づいてた。……でも繋がる時はあるよ。全く駄目じゃないみたいだ」
秀一が冷静に応じる。
水樹は横にいた兄に声をかけた。
「兄さん大丈夫? 会社の方って……」
「もう報せた。何かあれば館の固定電話に連絡するようにと。……黒電話って初めてかけたな」
正火斗が水樹に答えたが、その声はなんだか力無い。
「ジーコロロジーコロロってヤツですね。オレはかけてみたいかも」
桂木は前向きだ。椎名も
「私もちょっとやってみたいです。ある意味 貴重な機会ですよね」
と興味津々で言った。
話の流れから──風晴は祖父の家に黒電話があって、未だに現役であることは控えた。水を差すようで嫌だった。
「すまないね。宿泊施設として設備は整えたんだが、吹雪が起こるとどうしても通信状況が悪くなるようでね。──固定電話は問題無く繋がるはずだ」
理人は謝罪してから、ニンジンのラペの前菜を口にした。
風晴は橘の言葉を思い出して"いただきますだ"と思った。橘は他のメンバーにも当然伝えてあるのだろう。みんなが、理人が食べてから食べ出した。
夕食は──ある意味予測はついていたが、バッチリコース料理だった。
風晴も最低限のルールやフォークとナイフの使い方は知っているが、身については全くいない。
すると隣りで聖が料理を運んできた豊子に
「箸はありますか……?」
と聞いていたので、勇者だと思った。
言われて、豊子は箸の沢山入ったケースを聖の前に置いてくれた。
「ご自由にお取り下さいませ」
とまで言ってくれたので──聖、風晴、桂木、椎名は有り難く箸を手に取らせてもらった。
彼らの中で聖は伝説の勇者に格上げとなり、豊子は慈悲深い菩薩となった。
その後、風晴と聖に浅倉奏衣が紹介された。
そして簡単にだが、浅倉の方にも夏休みのA県黒竜池の事件についても説明がされた。
正火斗はもうミステリー同好会を完全に引退していて、部長として安西秀一が取り仕切った。
浅倉奏衣が今は副部長で、T大に合格した正火斗に告白して今は彼女だとも 風晴と聖は知った。
はつらつとしているポニーテールの浅倉は間違いなく美人の部類で正火斗とはお似合いだ。
水樹が秀一と付き合っていることより、よっぽど受け入れ易かった。──あの2人は本当に揉めたから。
ここでミステリー同好会には、まだもう1人部員がいたこと初めて聖は知った。風晴は夏休みになんとなく聞いていた覚えがあった。いわゆる"幽霊部員"らしい。
そうして食事の時間は進んでいった。
デザートの桃のムースが配られると、理人が豊子に目配せをしている。
豊子は一礼してから、話し出した。
「皆様、食事中に失礼致します。お時間が限られておりますから、どうぞムースを食べながらお聞き下さい。明日の日程について説明をさせて下さい」
みんなが一斉に豊子を見つめた。
「明日と申し上げましたが……この後、大道水樹様のお髪は染めさせて下さい。一度洗い流すことを考えますと、どうしても今夜行わなければ間に合いません」
豊子の言葉に水樹はうなずいた。水樹の髪は腰まであるし、本人もその通りだと思ったのだろう。
「明日の午前中は正火斗様、水樹様を始めご希望の方を着付け致します」
わぁ……!と主に女子達から歓声があがる。
「私達までいいんですか?」
浅倉の問いかけに豊子は
「構いませんよ。明日はもっと沢山の使用人も参ります。今日が必要最小限なのですよ」
と笑顔言った。
「着物……和装でクリスマスかぁ」
「正月が一足早く来た感じかな?」
「印象深いクリスマスにはなりそうだ」
「……シュール……」
神宮寺、秀一、桂木──最後が聖の言葉だった。
ここで風晴はあることに気づいた。
豊子ではなく座っている理人に向かって聞く。
「理人さん、オレ達って一体どういう"役"なんですか?」
正火斗と水樹以外の、ミステリー同好会メンバーが"そういえば"という顔をした。
理人はポカンとして
「あ……」
と言った後、続かない。
正火斗が
「何も考えていなかったんですね?」
と厳しく指摘した。彼は今日はずっと機嫌が悪いようだ。
──無理もないが。
「正火斗様、皆様、それについては私から提案がございます」
華蔵透子の声だった。彼女はニッコリと微笑んで話し出した。




