083 名産品の賜物
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
○秋月未来・白吹村役場職員。
○林有里子・白吹村役場職員。
桂木慎は不安だった────
「桂木先輩 桂木先輩!! もう一枚お願いしますー! あ、秋月さん1人のヤツもお願いします!!」
役場前広場の雪像祭会場で 秋月未来と神宮寺清雅は意気投合して楽しんだ。
2人は雪像でさまざまなポーズを決め、すでに1時間近く経っている。
このままカップルの撮影会みたいな感じで終わるんじゃないだろうか……
軌道修正しないと──
「あー! お二人さんお二人さん!! オレ、アレ食べてみたいです!!」
雪像祭りには何台かのキッチンカーが来ていた。
そのうちの一台である『くりくり茶碗むし〜あの栗だけがゴロゴロ! 茶碗蒸し〜』を桂木は指差した。
「いいですね! 私達からもオススメです。白吹村の特産物の山栗が沢山入っていますよ。地鶏玉子もプルプルです」
「それは美味しそうです! 頂きましょう!!」
秋月も神宮寺も賛同してくれて、3人は『くりくり茶碗むし』を購入した。
プリンカップサイズのプラスチック容器と使い捨てスプーンを受け取ったとき、桂木は"オレいいの当てたかも"と直感した。
カップが温かかったのだ。
ちょうど人肌よりやや高めくらいに温まっていて、冬の屋外で食べるにはもってこいの商品だった。
役場は今日は土曜日で閉まっていたが、建物周りが遊歩道になっていてベンチもあちこちにある造りになっている。
朝から雪は降っていなくて午前中は陽射しが出ていたのでベンチは座ることができた。
3人は腰を下ろして、桂木はカップ上部の蓋を剥がした。
湯気が少し上がって出汁と栗の香りが立ち昇る。
玉子の上にまで出汁は滲み出ていて 日光にキラキラしていた。すくうと まさしくプリンのような滑らかさだ。
下に向かうとスプーンにゴロゴロとしたものがあたり、栗の甘露煮達が これでもかと出てきた。
「コレ嬉しいかも。茶碗蒸しの甘栗、こんなに食べれることないよな」
食べすすめながら桂木は言った。
「僕、あの栗は最後まで取っておくタイプですから。コレは好きです。栗も玉子も凄く美味しいですね」
神宮寺も絶賛だ。秋月は褒められて笑顔になった。
「この商品は林有里子先輩達が高校生の頃にアイデアを出したんだそうです。本当にナイスセンスですよね」
秋月の方から"林有里子"の名前が出た。桂木はここぞと話を広げる。
「林有里子さん、オレがクリスマスプレゼント貰った人ですよ。腕時計だったんですけど 元々はお父さんの物だったみたいで」
ふふふと秋月は笑って
「林主任、産業開発課だったんですよ。だから娘の有里子さんがお父さんのためにって、生徒会で地元の名産品アイデアを集めたって言う流れみたいです」
神宮寺が顔を輝かせた。
「それでなんですね。いい話です」
「もう、有里子先輩は本当に真面目で優しい方なんです」
桂木は正火斗が気にしていた林有里子の両親の方の話に、何とか持っていきたいと思った。
「林さんのお母さんって何してるんですか?」
秋月は栗を飲み込んで 答えてくれた。
「専業主婦。優しくて良い方です。有里子先輩はお母様に似ているんだと思います」
桂木はほとんど冗談で さらに聞いた。
「林主任の方は おっかないとか?」
すると 秋月は桂木を真顔で振り返った。
「よく分かりましたね。実はちょっと怖いんですよね、私は。
威圧的で……怒ったりもしますから」
彼女は真剣に言った。
N県は架空の県で『くりくり茶碗むし〜あの栗だけがゴロゴロ! 茶碗蒸し〜』は全て想像のオリジナル商品ですが、似た物がある県とかありましたら申し訳ありません。
私も茶碗蒸しの甘栗大好きです。こんな商品あったらいいなʕ•ᴥ•ʔ




