082 喫茶店の帰り道
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
○戸田広雪・白吹村男子校生。3年。
○松下寿明・喫茶店・寿店長。
○赤沢幸太郎・新しい華蔵家運転手。
椎名と浅倉と戸田はそのまま喫茶店で昼食にした。
椎名はナポリタンスパゲッティで浅倉はオムライス、戸田はハンバーグ定食だ。
食事後には松下がバニラアイスを出してくれた。その時に雪崩救助の時の正火斗の話を彼はしてくれた。
浅倉は瞳を輝かせて聞いていた。
戸田は友人達に広間にいた学生についての連絡をしてくれているが、返信には時間がかかっていた。
戸田と浅倉はLINEを交換した──何か分かったら教えてもらえるように。
帰る前に浅倉はコーヒー豆をお土産に持って帰りたいと言い、松下の焙煎を待っていた。
その間 椎名は戸田と一緒だった。
彼はがっくりとうなだれて呟いた。
「アレ絶対彼氏へのお土産だよな?……頭は良いし度胸はあるし………松下さんの話だけでも、凄くカッコイイんだろうなとは分かったよ。
……反則だよな、そんなの」
戸田は肩を落としている。椎名は心から同情した。でも──
「すみません。……私、何も言えなくて……」
としか言いようがない。
「気にしないで。オレの方こそごめん、変な話をして」
戸田は普通に好青年だった。白吹村でも彼を好きな女の子はいそうだ。でも彼は……
椎名は 浅倉の背中を見つめる戸田を見ていた。
────ふと思う
彼も ずっと こうだったんだろうか…………
赤沢幸太郎の運転する車が発進する。
椎名と浅倉は戸田に手を振った。
「また連絡は取るんですけどね」
と椎名は 両手を振り回してバイバイをしている戸田を見ながら微笑んで言ったが、浅倉は
「でも 多分もう会うことはないよ……」
と言った。彼女の声が少し切ない気さえ椎名はした。
その時スマートフォンのLINE着信音が鳴った。
"大丈夫?"
風晴からだった。
桜田くんは優しいなぁ……
本当に、桜田くんが好きな人なら良かったのに
椎名は心から思った。
どうしてみんな上手くいかないんだろう
「なあ、お嬢さん達」
不意に前から声をかけられ 椎名も──浅倉も驚いた。
赤沢幸太郎とバックミラー越しに目が合う。
「さっきの喫茶店みたいなのはもうやめた方がいい。とんでもないのに当たったら目をつけられて……お嬢さん達、東京に帰られなくなるかもしれないよ」
浅倉は赤沢を睨みつけた。
「脅しですか?」
「とんでもない……!!」
赤沢は速度を落として 後部座席の方に振り返って叫んだ。
「心配してるんだよ。下手に首突っ込まない方がいい。
お友達が運良く無事に戻ったんだから、あとは静かに東京に帰んなよ」
「ミステリー同好会として見過ごせない事件なんです」
浅倉の言葉は副部長らしかった。椎名は"流石は浅倉先輩だ"と思った。
私も見習わないと──
「赤沢さんは"とんでもないの"に心あたりがあるんですね? 一体どんな人たちで、何人くらいいるんですか?」
赤沢は髪の薄くなりつつある額に汗を滲ませた。
「私は仕事も村外の企業だった。白吹と関わり深く生きてきたわけじゃないから本当に分からない。だが……いると思う。過激な連中が。──そうだろう? 殺人まで起こっているんだから」
椎名は再度 赤沢に聞いた。
「誰なんですか? それは」
赤沢も繰り返した。
「私は知らない。本当に分からない」
彼はただそれを繰り返した。




