081 喫茶店の温もり2
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○戸田広雪・白吹村男子校生。3年。
○松下寿明・喫茶店・寿店長。
「……寂しいの?」
浅倉を見つめて戸田は静かに聞いた。
その質問に浅倉は難しい顔をして 悩みながら答えた。
「うん……。本音を言ったら寂しいんだと……思う」
彼女は大きく溜め息をついた。しかし──それを打ち消すように話し出す。
「彼はなんて言うか──元々彼自身のことも私のことも……あまり頭に無い 忙しい人なの。
だけど私はそれを分かっていて、でももう一度彼と恋人同士でやっていこうって告白した。
だから凹んでいるのは自分に。彼についていけない自分になの」
戸田は眉間に皺を寄せた。
「なんだかなぁ。……聞いていると浅倉さんだけが頑張っているように聞こえるけど」
彼はコーヒーフロートをストローでかき回す。
「彼は彼なりに私のことも頑張ってくれているんだとは思うよ。──でも そうだね。
その頑張りが10だとするなら、仕事は100──友情には500くらい頑張る人だと分かって……嬉しいし感動もしたけれど…………寂しかったかな」
椎名はココアを飲みながら黙って浅倉の話を聞いていた。
正火斗先輩と浅倉先輩なら大人で盤石なカップルなんだとばかりに思っていた。
本当は不安だし心細いんだ……
告白して 付き合っても まだ──
みんな…………いろいろあるんだな
温かくて甘いココアが口に広がり喉を通る。
朝から思いがけないことが続いて縮み上がっていた胃にも それは届いて、自分を優しく癒してくれているのが分かった。
椎名は、今はここでやるべきことをしっかりとやっていこうと思った。
「戸田さん、突然ですが、戸田さんからみて華蔵家の"白吹の呪い"はどう思いますか?」
気負った椎名は少し声が大きくなったようだ。
戸田が
「ん?"白吹の呪い"って?」
と言うと同時に
「最近の若い子は知らない子も多いよ。時代にそぐわない風習だしねぇ……」
そう話す声が後ろから聞こえた。
椎名と浅倉が後ろを向くと、いつの間にか隣りのボックス席に中年の男女が座っている。椎名達の後で来店していたようだ。
「"白吹の呪い"が風習って……どう言うことでしょうか?」
椎名は後ろを向いたまま、さっき言葉を発した奥さんと思われる女性の方にきいた。
コーヒーカップを置くと その人は身を乗り出してきた。
「あれはさ、華蔵家の神通力の血を外部に出したり薄めたりしないってことが狙いで、昔の一部の村人達が……お偉いさんにお金をもらって始まったことらしいよ。
今はもう白吹の中でも一般的な話じゃないよ。
優美子様は自殺してしまったし 一豊様はお子様達を県外の学校で育てた。
御一族が白吹に縛られることが嫌で嫌でたまらながっているのは、ハタから見てたって分かる話だよ」
「優美子様って…………理人様と透子様のお母様は自殺だったんですか?」
浅倉が尋ねる。透子はたしか──出産で死んだような言い回しだった。
「透子様を出産した後の産後の肥立が悪かったことは事実だけれど……優美子様が亡くなった場所は、葉崎達哉さんが最後の夜に泊まった部屋のベッドだったんだよ」
松下が飛び上がりそうになった。
「ええ!? まさかオレが当てたあの部屋!? 3階の端から3番目の……」
男性の方が
「そこだ。間違いない」
と言ったので松下は
「わ────────!!!!!」
とパニックになった。




