079 午前中の洋館の悲劇2
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵透子・当主・理人の妹。
目眩がしそうだった
していたのかもしれない
「いや……桜田くんとはそんな……ハハハッ、いやですよ桂木先輩」
自分の声が遠くに聞こえる
「オレ、椎名も困ってるだろうと思って……つい。でもやり方を間違えたかもしれない。ホント、ゴメン」
「連絡先はゲットできたんですから大成功ですよ! 大丈夫です。みんなに言って分かってもらいましょう!!」
大丈夫だ
多分楽しく話せている────私
「あ! 桂木先輩お待たせしました!! 秋月さんの所に早く行きましょう!!」
神宮寺くんの声がする
がんばれ
まだ笑顔で
「じゃ、椎名! そっちもがんばれ! 浅倉に戸田広雪の番号は送っておくから」
「はい!! がんばります!!」
……嘘だ 頑張れない
無理だ……もう……
神宮寺と桂木の姿が霞む。
2人が振り返らないでそのまま行ってくれて良かった
椎名はしゃがみ込んだ。
安西と水樹が駆け付ける。
水樹は黙って 泣く後輩を そっと 抱きしめた。
「椎名って……桂木のこと好きだったんだね。……全然気づかなかった」
秀一がしみじみと言った。正火斗がうなずいている。
「……女の子の気持ち……分かりづらい……」
聖も意見した。それに聖は女の子には ほとんど近づかない。
風晴は
「オレは相談にのってたんだ。でもそれで……桂木に誤解されるとは考えてもいなかった……」
と額に手をあてた。
「秀一と相談して──秀一が浅倉と出かけて、私と椎名が洋館に残ろうかとも話したんだよ。
だけど椎名が"私行きます!! 頑張ります!!”って。…………浅倉に声かけて一緒に行ったよ、あの子」
水樹が瞳を潤ませて悲しげに言った。
…………しばし静寂
「ちょっと待って」
水樹は、うんうんと頭を上下させているだけの男子4人に向けて言った。
「本当に──椎名の行動の深さ分かってる? あなた達?」
全員の頭が止まる。水樹は目を細めて聞いた。
「はい、桂木慎の好きな人が分かる人!」
誰も手を挙げられない。────え? そんな文章どこかにあったっけ? と約2名は思った。
「なんで? なんで誰も分からないのよ? ここが推理のしどころでしょう!?」
水樹がテーブルを叩いた。
そうなのか!?と正火斗は思った。
そうなんだ!!と秀一は思案した。
「桂木はクリスマスパーティーの告白ゲームを嫌がってた。つまりアイツの好きな女の子はここに、洋館にいたってこと。当然 告白するところを見せたくなかったんでしょうから」
男子全員が目を見開いた。
水樹はボンクラ! と思った。
「会ったばかりの透子さんや女中のわけがない。前からの知り合いの女子は椎名、私、浅倉。────もう答えが出てるでしょう?」
秀一が前のめりになった。
「まさか桂木のヤツも水樹を……」
「ボンクラ────!!」
水樹の怒号が響く。
風晴は一つしか残っていない答えに胸が痛んだ。
「椎名……大丈夫かな……」
「……………………」
聖も難しい顔をした。
水樹はボンクラ彼氏から、風晴に視線を移した。
「大丈夫なわけないと思う。きっと今 頭も心もグチャグチャだよ。────それから兄さん」
自分そっくりの鋭い眼光で妹に睨まれて、正火斗はビクリとした。
「浅倉は他の男子にだって想われてる女の子だって……本当に分かってる? 兄さんが浅倉の彼氏なんだからちゃんとしてあげて」
水樹の真剣な瞳に向き合えず 彼は瞳を閉じた。
「分かってる。──ちゃんとするつもりだ」
ちゃんとするつもりだ
ちゃんとしたいと思ってきた
だが浅倉に対してちゃんとするということは────
瞳を開けるのが嫌だった。
閉じ続けているわけにもいかず 渋々と開く。
どうしても位置的に視界に桜田風晴は入った。
何もかもがややこしい────




