078 午前中の洋館の悲劇1
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○斉藤美郷・豊子の孫。白吹村女子高生。
◾️これまでのあらすじ
鳳翔院学園ミステリー同好会メンバーとN県白吹村の洋館ペンションで再会した風晴と聖。
しかし洋館当主の華蔵家には"白吹の呪い"があり、24日クリスマスパーティーの後、風晴、聖、冴木の3人が洋館から姿を消す。ミステリー同好会メンバーと正火斗のおかげで風晴と聖は救助されるが、洞窟内では冴木は殺されていた。
クリスマスパーティーの日に何があったのか高校生達は調査を始めるが……
一足先に食事を終えた理人はもう食堂を出ていた。
事件に関する話はみんなが集まってから情報交換する予定になっている。
デザートの果物を食べながら残ったメンバーでの話題は、正火斗達3人が出て行ったあとの洋館でのある騒ぎについてに……自然となった──
「それが、ちょっと大変だったのよ……」
言いながら水樹は秀一を見て、秀一も水樹を見ながら
「うん。ちょっとあれは……大変だったね……」
と言った。
「一体何があった?」
と正火斗が尋ねると水樹は
「斉藤美郷ちゃんと桂木と椎名よ。ちょっともうゴチャゴチャで…………」
風晴は椎名が何か桂木とあったんだと気になった。
「三角関係みたいになったとか? 桂木が二股とか?」
すると水樹は首を振って、思わぬ言葉を風晴に言った。
「桜田、あなたも微妙に関わってるんだからね!!」
「え? オレ!?」
彼には青天の霹靂だった。
水樹はマスカットを食べていた手を拭いて話し出した。
「浅倉は髪をセットしにいくことになって時間がかかったの。そうしたら神宮寺まで"秋月さんと会うなら身支度を限界まで整えたい"とか言い出していなくなった。
それで待っている間に桂木と椎名が美郷ちゃんのところに行くことになったのよ。
私はなんとなく付いていった。なんとなく……気になったから。そうしたら、なんと……」
「はいはいはい戸田先輩なら勿論 連絡先知ってますよ。私 男子バレーボール部のマネージャーですから。慎くん、戸田先輩と仲良くなりたいんですか?」
今日は女中姿の──黒いワンピースに白いエプロンの斉藤美郷は、大きな瞳を丸くして聞いた。
椎名は 華やかで可愛い女の子だなぁと改めて思った。
私の周りは美人ばかり。こんな人生って なんだか不利だ。
「そんな感じかもな。話が聞きたいんだ。ミステリー同好会として」
「ふーん、カッコイイですね……じゃあ……」
美郷は桂木に詰め寄る。
「じゃあ、私と付き合ってくれたら戸田先輩の連絡先を教えますよ!!」
「何言ってんだ!?」
桂木は怒った。椎名は縮み上がった。水樹は興味津々だった。
「どうしても戸田先輩の連絡先ほしいんですよね? 私もどうしても付き合いたいんで──ホラ、ちょうどいいじゃないですか、交換!!」
「いいわけないだろ! そんなの!!」
珍しく桂木が怒鳴った。だが美郷は少しも怖がらない。
「好きな人がいないなら いいじゃないですか? 東京に帰るまでちょっと恋人気分! え? いないんですよね? 誰か好きな人?」
だめだ────!
椎名はその答えを聞きたくなくて割って入った。
「美郷さん良くないと思います──そういう交換条件は。
戸田広雪さんの連絡先と桂木先輩の心は全く違うものです」
美郷は椎名より少し背が高いくらいだが、ずいっと椎名に近づくと指をさして言った。
「なんだかんだとキレイゴトは結構。慎くんが好きなら好きって言いなさいよ。他の人が好きなら どいていて!」
絶妙な言い回しだった。椎名は真っ赤になって動けなくなった。
「そそそそそそそんな……わわわわわ私は…………」
どく? いや、どけない!! ううん、どかないと……あぁああ……でも どいてしまったら…………!!
「わ……わ私は…………」
椎名の声が震えた。
その時────彼女は後ろから両肩をつかまれた。
「オレ、コイツが好きなの!! だからゴメン!!」
桂木の声だった。椎名は頭が真っ白になった。
「オレ達今 うまくいくかどうかの微妙なトコだったんだよ!! だから邪魔しないでくれ!
これで納得したか?」
桂木は椎名を自分に引き寄せた。椎名は多分 意識1割5分くらいしかない状態になった。
美郷は2人の様子をじっと見つめたが
「仕方ないわね──それなら。恋人同士の邪魔をわざわざ期間限定ではしないわよ。はい、戸田先輩の番号……」
とスマートフォンを出してくれた。
桂木は自分のスマートフォンに入力した。椎名が硬直したまま動けなかったからだ。
そして 斉藤美郷は去っていった────
美郷が行った廊下の先からは、秀一が水樹を探してこちらに来ている。
水樹は
「2人共……そんないい感じだったの?」
と静かになった廊下で聞いた。
「そんなわけないだろ」
そう桂木が言った時の椎名の顔が 秀一からは見えた。
「椎名もゴメン。椎名だって本当は他の…………桜田が好きなんだろ? ややこしくして本当にゴメン」
椎名は ただただ衝撃だった。
この ほんの数分で ジェットコースターに3回程も乗ったような気分だった。
それでも──
ああ……
彼の最後の一言で全てが分かった
分かってしまった
この人は私が好きでいるなんて夢にも思ってはいなくて
そして
彼の好きな人は 他にいるのだ────
ホント悲劇……ʕTᴥTʔ




