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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第9章 大事件と迷宮

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075 別れ際の抱擁

ー登場人物紹介ー


大道正火斗だいどうまさひと・鳳翔院学園3年。大企業の財閥御曹司。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


葉崎達哉はざきたつや・25年前からの行方不明者。

金森香世かなもりかよ・葉崎達哉の実姉

冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。

天羽生颯(あもうはやて)・白吹村の引きこもり男性。


 



 金森(かなもり)家への来訪(らいほう)は大きな成果(せいか)があった。

 帰り(ぎわ)──風晴と隣の聖を交互(こうご)に見て 金森は


「ねえ、最後にハグさせてもらっていいかしら」


 と突然(とつぜん)言った。


「ハグ!?」


 風晴と聖は少し(おどろ)く。


「勝手な思い込みなんだけれど、私 (すご)く嬉しいのよ。あなた方が助かることに──25年前に弟を失った場所に行ったことで (たずさ)われたことが」


 彼女は目を細めて微笑(ほほえ)んだ。


「今度こそ防いでやれた! って少しは思えるじゃない」


 聖や風晴──正火斗も嬉しくなった。

 風晴は改めて生き延びて良かったと思った。こんなところにも、生還(せいかん)を心から喜んでくれる人がいる。

 風晴と金森、聖と金森がハグをした後、聖が


「彼も雪崩(なだれ)()()まれそうになった……助けに来てくれて……」


 と正火斗を指差(ゆびさ)した。

 風晴も


「病院でオレより入院が必要でした。脱水(だっすい)症状を起こしていて」


 と(さら)に説明したので、正火斗とは言え赤くなった。

 しかし金森は真剣(しんけん)


必死(ひっし)だったのよね、わかるわ。探している側も、それはそれは苦しいものよね……」


 と正火斗をやんわりと抱きしめた。

 刹那(せつな)────さまざまな感情が入り乱れた。


 記憶にない──愛情のこもった母親からの抱擁(ほうよう)


 あの夜の風晴と聖が連れ去られたと分かったときの衝撃(しょうげき)


 助ける(すべ)がなくて 自分に感じた絶望(ぜつぼう)



 この人はどうやって……25年も過ごしてきたんだろう



 顔を上げた時、一枚の5人の人間が写った───家族写真が目に入った。


「あの……これは……」


 正火斗の視線の先に金森は気がついた。


「ああ、これね。最後にとった家族写真なの」


 金森──葉崎達哉(はざきたつや)の姉は言った。


「私と死んだ夫と……息子の達樹(たつき)達夫(たつお)達仁(たつひと)よ」










「良い人だったな、金森さん」


 金森家を出て、風晴が言った。


「良い人で……良かった……」


 聖もしみじみと言った。


「強い人だな────それに」


 正火斗も付け加えた。


 しかも、(かしこ)い人だ


 金森香世(かよ)も気づいてはいるのだろう。

 弟の達哉は遺体となって……それは今も白吹村(しらぶきむら)内のどこかにあるはずだ──自分達はあの洞窟(どうくつ)のある森近辺(きんぺん)だとあたりをつけてはいる。だが、とても彼女にそんなことは話せなかった。

 それでも今回 冴木拓眞(さえきたくま)を殺した連中を挙げれば、きっと犯人の中に葉崎達哉の情報を持っている者もいるはずだ。


 目まぐるしく考えていた正火斗は、天羽生颯(あもうはやて)の待つ青のNOTE()視界(しかい)に入ると足を止めた。


 風晴と聖が不思議(ふしぎ)に思って振り返る。


「またアレに乗るのは(いや)だ。もうタクシーでも呼ぼう」


 正火斗はうんざりしていた。

 天羽生とのやり取りで推理は確実(かくじつ)分断(ぶんだん)されて邪魔(じゃま)されている!

 あの空間がとてつもなく嫌だ。


 風晴は迷っている。正直、そこまで正火斗が嫌がっていることに驚いた。


 すると聖が正火斗に()げた。


「大丈夫、正火斗。……今度こそしっかり……僕が言うから!」









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