073 葉崎達哉の親族
ー登場人物紹介ー
◆大道正火斗・鳳翔院学園3年。大企業の財閥御曹司。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○葉崎達哉・25年前からの行方不明者。
葉崎達哉の姉の嫁ぎ先に正火斗達は到着した。
その玄関の表札に風晴は目を留めていた。
「"金森"……」
そう呟いた時に
「はいはい、ご苦労様です」
と声が聞こえて玄関が開いた。風晴は"やっぱり"と思わず指差して──
「金森さん!!」
と叫んでしまっていた。金森香世は驚いたものの すぐに気づいて
「ああ! あの……マフラーのプレゼントの! ……桜田くん!」
と笑顔になった。
思いがけない嬉しい再会だった。
「良かったです。"お礼が言いたいな"って、オレ達 話していたんです。金森さんがくれたホッカイロ……凄く役立ったんです」
金森香世は風晴達を喜んで部屋に上げて、客間らしい部屋でお茶と栗最中を出してくれた。
温かなお茶と金森の対応に全員ほっこりして 何か救われる想いだった。
聖も自ら
「風晴がホッカイロを……貼ってくれて助かりました。……ありがとうございました」
とお礼を言った。
洞窟に置いて行かれた時、風晴は聖の肌着にホッカイロを貼ったが、それをくれたのが金森香世だった。
金森には当然──すでに警察から洞窟を塞いでいるドアの鍵を壊す許可についての話が来ていた。その際に行方不明事件と雪崩の発生、まだ洞窟に残っている人間がいる情報があるからという説明を受けていた。
「まさか行方不明になっていたのが桜田くん達だとは思いもしなかったわ。…………大変な思いをしたわね……」
風晴は冴木拓眞の死体の話はここでは伏せた。自分の話をしに来たわけではない。
25年程前の葉崎達哉の行方不明事件の、身近な人達からの視点を知りたいのだ。
正火斗は口火を切った。
「金森さん、警察が鍵を壊す許可をもらいに来たのはいつですか?」
「昨日よ。多分今日あたりあの扉を開けているんじゃないかしら」
では もうすぐ冴木は見つかるかもしれない。風晴の脳裏には透子がよぎる。
「華蔵家でもいくらかは聞いて来ています。そもそも、洞窟の扉の鍵は葉崎達哉さんのお父さんの上着に入っていたと」
「──そう。間違いないわ。私と達哉は7歳も離れていたから、昔から私は弟の面倒をみていた。
達也は自分の上着はあちこちに脱ぎ捨てておく悪いクセがあったの。イスの背にかけたりソファに置いたままにしたりして、自分で忘れてしまうのよ」
金森は苦笑しながら話したが瞳は潤んだ。
「……あの日もクリスマス・パーティーだっていうのに上着が見当たらなかった。達也は焦っていたわ──"優美子さんが待っていてくれているのに"って。
それで 玄関にかけられていた父のコートを着て行ったのよ」
その後の経緯は正火斗は豊子から聞いた知っていた。
「達哉さんが優美子さんに告白ゲームで愛を誓ったと聞きました。そして帰り際のクジで1位が当たり 華蔵家に宿泊が決まったと。
だが朝になると姿が消えていた」
正火斗の話に金森は うなずいた。
「私はもう金森に嫁いで……妊娠初期だったの。悪阻で体調が辛くて実家に戻っていただけ。
そう言う状態だったから私は──父が華蔵家に行って聞いた話しか分からない。でも聞いたのは 今のと全く同じ内容よ」
正火斗は金森香世に聞いた。
「金森さん、あなたは弟さんに何が起こったと考えましたか?
達哉さんが吹雪の夜消えたのは "白吹の呪い"のせいだと思いましたか?」
彼女は3人を見つめてハッキリと答えた。
「いいえ。私は弟は殺されたと思っています。──"白吹の呪い"に こじつけて」




