071 冴木拓眞の母親
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○天羽生颯・白吹村の引きこもり男性。
冴木拓眞の母親は、彼が中学生の時に離婚──その後母親は再婚していた。今の名前は間宮巴これは理人が正火斗に教えてくれていた。
インターフォンを鳴らして
「華蔵理人様から連絡がいっているかと思います。ミステリー同好会の者です」
と正火斗は丁寧に言った。
インターフォンからの返事は無かったが、まもなく玄関のドアは開いた。
中からカールした長髪の目鼻立ちの綺麗な中年女性が現れた。冴木に似ているので すぐ母親だと分かる。
「寒い中ご苦労様。悪いんだけど ここでもいい? 警察にも言ったんだけれど……私は拓眞の最近のことは全く分からないし」
彼女の言う"ここ"は靴棚のある──いわゆる玄関先だった。屋内ではあるし こちらは文句はない。
「すみません。理人様は自分の館からこのような事件になってしまったので、詳細を調べたいと考えていらっしゃるのです。
最近の拓眞さんの様子については……何かご存知ありませんか?」
冴木の母親は髪をかき上げて言った。
「もう……ここ4年くらい私と拓眞は連絡を取っていなかったのよ。あの子は私の……」
そこで彼女は声を少し低くする。
「再婚には反対だったからね」
高校生達にはなんとも相槌ができない。正火斗は質問を変えた。
「拓眞さんは理人様と小学生からの付き合いがありますよね?
彼は"白吹の呪い"についてはどう思っていたんでしょう?…………昔きいた話でも良いのですが」
これには冴木の母親──間宮巴は少し考え込んだ。
「高校の頃も理人くんとは連絡を取っていたみたいで──"思い込んでいて気の毒だ"って……笑って言ってたわ」
「笑って?」
「拓真は結構モテていたから。高校の頃なんか恋人は絶えなかった感じだった。
理人くんもカッコイイのに、彼は多分"白吹の呪い"のせいで村を出ても……のびのびとできなかったんじゃない? それで"気にすることないのに"って笑ってたんじゃないかしら。
だって本当に──勿体ないじゃない? そんなことって」
母子の考え方はだいたい分かった。正火斗は一応と思って聞いた。
「再婚相手の方は他県の方と聞きました。このお宅はその……新築では無いようですが、中古をご購入ですか?」
間宮巴は否定した。
「夫はC県生まれで 今 仕事の都合でN県にいるだけ。私と暮らしているから ここを賃貸で借りてるの。それだけ。
私達はいつかはC県に行くと思う。正直言って ここは閉鎖的過ぎて……」
そこまで言って間宮は正火斗達を見て言った。
「あなた方東京から来てるなら分かるでしょう? ──つまらないのよ、ここは……」
話終えて3人は間宮家を出た。
天羽生の車の停まっているところまで歩くとき風晴は呟いた。
「なんて言うか……悪い人じゃないんだろうけど。冴木さんが家を出る気持ちも分かるような……」
「大道真夜呼に似てるところがある思う──少しだが。
母親であるより 女である部分が大きい女性や、いつまでも自分が中心で母親になりきれない女性。……そんなところだろう」
データの分類のように正火斗は言った。
風晴や聖には想像が難しいが 世の中には本当にいろいろな親や家族がいるのだろう。
車の後部ドアを正火斗と聖が両脇からそれぞれ開けた。聖の開けた左側に声がかかった。
「聖さん、良かったら助手席にどうぞ」
天羽生颯はまだ 諦めていなかった。




