068 隠されていたもの
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○松下寿明・喫茶店・寿店長。
正火斗が階段に向かうと、風晴と聖はまだ2階の途中を登っているところだった。
聖は病院で痛めた足を固定してきてもらっているし、だいぶ良くなっているようだ。
それでも正火斗は申し出た。
「おぶって行こうか?」
すると返事ではなくて風晴に
「正火斗もまだ当主部屋に入るんだ」
と驚かれた。
「理人さんにそれでいいと言われた」
と正火斗は言ったが──これには裏の事情があった。
今回の雪崩の件では松下寿明が責任者として対応してくれた。
彼は退院日に精神科医に言われていたのだ。風晴や聖は今後フラッシュバックやPTSDの恐れがあるから、気をつけて見守るようにと。
理人は自分よりも、友人で雪崩を共に経験した正火斗が傍にいる方が望ましいと判断した。それで、いる間は当主部屋を譲ってくれたのだ。
結局、見守っているうちに聖は自分で階段をのぼり切った。
3階に上がり 風晴、聖と正火斗はそれぞれの部屋に入った。
正火斗は 部屋でメールを何通かチェックしてから風呂につかり、あがってからコーラを飲んだ。
せっかく隣にいるのだからとあの寝室の"開かずの扉"をノックした。
「風晴? 聖? ここを開けておくから……」
と声をかける。
────返事が 無い。部屋は 暗い。
「かぜ……」
何かに焦って踏み込むと──
…………2人はもうベッドでスヤスヤと寝息を立てていた。
脱力して肩を落とす。
どっちがフラッシュバックだ!
と自分で呆れて思った。
当主側の寝室に戻ってもすぐに眠気が来そうに無かった。
見回すと寝室の棚には様々な書物が置いてある。
棚の前に歩いていき、華蔵家の歴史が分かりそうなものでもないかと、正火斗は目を走らせた。
それらしいものはあったが 他にも
『地理・文化・気候で形成される人類最強地政学』
『フルカラー地球博物展教養大図鑑7000点』
『COSMOS自分だけの宇宙船の窓〜美しき果てなる星々のビジュアル〜』
等のタイトルの本が並んでいた。
正火斗は少し興味が惹かれて『地理・文化・気候で形成される人類最強地政学』を引っ張りだした。すると思ったより大きい本ではなかった。
違和感を感じて本を抜いた棚を見返すと──気付いた。
この本の奥にさらにもう一つ、古い書物が入っている。
大道正火斗と言えど 一瞬 迷った。
借りている当主の部屋で隠してあるかのような──いや、多分 隠している書物を勝手に見ていいものか……
しかし、1分も悩まぬうちに判断した。
人が死んだり行方不明になったりしている状況だ。それに隠しているわけではないかもしれない。
正火斗は奥にある古い──書物と言うよりは、片脇を紐で縛って閉じられている文献のような紙の束を取り出した。
ひどく古い紙だった。
そっと壁際のテーブルに両手で運び、そこに開いた。
正火斗は椅子を引いて深く座ると、それを読みだした。




