067 もう一つの手がかり
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○山原海・華蔵家料理人。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
「豊子さん、白吹村に"高校"って一つですか?」
浅倉奏衣が豊子に尋ねた。
「そうです。白吹と名のつく地域にあるのは湯谷高等学校です。正確には昔 湯谷村と白吹村が合併して、湯谷村の方だったところにある高校ですね」
それを確かめると、浅倉は桂木に声をかけた。
「ねぇ、桂木に猛プッシュの豊子さんの高1のお孫さん──昨日バレーボール部のマネージャーを高校でしてるって話していなかった?」
その言葉を聞いて風晴は、自分達のいない間に"あの桂木と付き合いたい女子"が接近していたことを知った。椎名が気になるが、今は顔に出さない。
桂木は浅倉に
「かもな。あの子いっぱい話すからあまりよく覚えてないけれど」
と返事している。
「私はトークタイムで高校3年生の戸田広雪くんと話したけれど、連絡先を交換したりしていない。だけど……彼はバレーボール部だって言ってたの。
2人が同じ高校でもし──美郷ちゃんが男子バレーボール部の方だったら、連絡先を教えてもらえる可能性があるわよね?」
ここで豊子が
「美郷は"男子バレーボール部の方のマネージャー"のはずですよ。──あの子の父親が、学生の時バレーボールをしていて いいところまでいったんです。それで興味を持ったみたいで」
と教えてくれたので 一同からはおぉ!!と声が上がった。
浅倉は思い出すようにしながら言った。
「あの時冴木さん確かに……"戸田はバレーボールチームではエースでいいヤツだ"って言ったのよ。2人はいくらかは知り合いだったのかもしれない」
すると理人が
「冴木は湯谷高校の男子バレーボール部のOBだった。アイツは試合を観に行ったり写真を頼まれたりしていたはずだ」
と教えてくれた。浅倉は うなずいてから正火斗を見た。
「それだけじゃないのよ。私と戸田広雪くんは広間で話して……そこで誰かと話をした冴木さんに会った。
前に言ったように私と戸田くんが座って話をしていた場所からは冴木さん達の姿は見えなかったんだけれど……」
浅倉は確信を持って言葉を続ける。
「広間にはあの時若い男女がもう1組いたの!
私は"私達と同じ高校生くらいかなぁ"って思った記憶がある。
彼らの話していたところからは、冴木さん達の姿が見えていたかも──ううん、位置的にハッキリ見てるはずだわ」
みんなの顔が明るくなった。全て言わなくても正火斗にも伝わっていた。
「豊子さんのお孫さんから戸田広雪を辿って、戸田が広間にいた若い男女を見知っていれば、彼らから冴木さんが生前に話していた相手が見つかるわけだ。──わかれば大きな手がかりになると思う。
なんとか頼む」
そこで風晴が意見した。
「オレは今日厨房で山原さんから、一昨日の夜から包丁が一本無くなったんだと聞いた。
警察や理人さんにも話したと言ってたから もうみんな知っているのかもしれないけれど、それってやっぱり……」
これには秀一が後を引き継ぐ。
「多分 冴木さんを襲った時の凶器なんだろうね。──用意してこないで現地で調達してるから……あのクリスマスパーティーの間に、やっぱり冴木さんには何かが起こっていたのかもしれない」
ここで、結構な時間が過ぎていることに正火斗は気付いた。
「今はここまで分かっていれば充分だ。
明日、会う予定が無いメンバーは多分この洋館内の使用人達に話を聞いてもらうことになると思う。
椎名は松下さんの喫茶店だな」
椎名は
「はい。店内に他にお客様がいたら、なんとか話を聞かせてもらいます」
と答えた。
「単独では誰も動かないように振り分けるが、それは明日にしよう。今日はみんな早く休んでくれ。明日から忙しくなる」
正火斗がそう告げて、ミステリー同好会メンバーや風晴と聖は席を立ちだした。
理人が正火斗に小声で言った。
「正火斗くん凄いね。午後に聞いた提案にも度肝は抜かれたけれど。
君は今回後ろ向きだと思っていたけれど、急にやる気を出してどうかしたの?」
正火斗は理人の方は見ずに
「東京に早く戻りたいんです。──忙しいですし」
と言いテーブルに手をついて立ち上がった。
一瞬、視界に綺麗に空になった自分のどんぶりが目に入った。
東京で食べたって親子丼は美味いはずだ──── !
正火斗は自分に言い聞かせて食堂をあとにした。




