066 10年前の行方不明
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
桂木は、あの日の林有里子とのやりとりを順を追って思いだしてみた。
「ええっと……場所は応接室だった。真面目そうな、しっかりした感じの女の人だったんだ──林有里子さん。
オレが腕時計のお礼を言って、行方不明になった時の話を教えて下さいって頼んだら驚いていた」
「え? いきなり頼んだんですか? 会ってすぐに?」
椎名も聞き返している。
「勝負に出ましたね……」
神宮寺のコメントは意味深だ。
桂木は
「10分じゃ駆け引きできる相手じゃないと思ったんだ。
林さんは"東京の高校生なのにどうしてそのことを?"って聞き返してきた。
だから"透子さんの後輩でミステリー同好会の一員だ"って言って。"理人さんや冴木さんから小学6年生の頃、あなたが行方不明になっていた期間があったと聞いた"って必死で説明した。
それでなんとか納得してもらえて、応接室には入らないで廊下で……立ち話しで教えてくれた」
と ここまで話して一息ついた。
全員が彼に注目している。
「────結局、本人もあの期間の記憶はぼんやりとしているらしいんだ。
特に怖い思いや何かを飲ませられた覚えもなくて、両親に"おじいちゃんおばあちゃんのところにしばらく行こう"と言われた気がする──と。実際にその時期おばあさんの体調が悪くて、両親が見守るために仕方ないんだろうと思って過ごしていた──と」
水樹はなんだか腑に落ちずに尋ねた。
「大きくなってからは、一度もご両親とそのことを話したりはしてないの? "あの時なんだったの……?"みたいな」
「そう言うことはしていないみたいだ。林さんはある程度の年齢になって、華蔵理人にまつわる"白吹の呪い"を知ったそうだ。
だから彼女としては 理人さんから本気で好意を寄せられる前に、両親が距離を取らせたくてやってくれたのだろうと考えている──って」
桂木の話に
「子供としてはそう考えたいのかもなぁ……」
と秀一は言った。
テーブルの端の理人からは大きな溜め息が聞こえ、彼は
「こっちはトラウマものだったんだが…………」
と呟く。その理人を見て
「そうですよ。これでまず"一組確定"です」
と正火斗は述べた。見返す理人に
「林有里子の両親は"白吹の呪いを作る側"です。間違いありません」
と断言した。そしてすぐに桂木に
「林有里子の連絡先は?」
と聞く。
桂木は首を振る。
「………… ごめん。これ以上根掘り葉掘り聞けなかった」
風晴は 桂木の意外な面を見た気がした。本当は女性への押しが弱い。軽口も叩かない。
「──直接 林有里子さんのご両親にはいけないですけど、林有里子さんと、僕の秋月未来さんは職場で先輩後輩みたいですよ。
僕とのトークタイムで、何回も"林有里子先輩林有里子先輩"って言ってたんです。僕は一言も逃さないように聞いていたので、同姓同名でない限りこの繋がりは確かだと思います!」
神宮寺のトークタイムは思わぬ成果をもたらした。
水樹の星形キャンドルも役立ったというものだ。
神宮寺はニマニマしながら
「いやー、これはもう、連絡して再会しかないですよね!! 秋月さんと!!」
と幸せそうに言った。
誰もが──神宮寺が聞いてくる内容については不安を覚えた。
彼は林有里子先輩とその両親についてまで話を導けるだろうか。
秋月未来の顔だけを見つめてうなずいている姿が皆の頭の中で思い描かれていた……




