062 眠れない夜に2
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
外は今夜もまさしく白銀の世界だった。
昨夜と同じように──
正火斗はいくらかでも明るい話題にしたいと、風晴に尋ねた。
「椎名が、風晴が"ビバーク"の仕方を知っているかもしれないと言っていたんだ。
お爺さんの……桜田臣五郎さんが昔 雪山に登っていたようだから……と」
金森香世へ話していたのを椎名は聞いていたからだと風晴は思い当たった。そして、一つ訂正だ。
「じいちゃんは"和泉臣五郎"。"桜田"は父親の方の姓だから」
「すまない。じゃあ、あそこは和泉家ってことだな」
「そう、和泉家。
A県は冬にそんなに雪寄せばっかりって県じゃないけれど、子供の頃大雪になったことがあったんだよ。大人達はげんなりしてたけど、オレは嬉しくて仕方なかった」
思い出したのか風晴は微笑んだ。
「雪で遊んでいたら、雪寄せしていた じいちゃんがたまった雪に穴を開けて"かまくら"だって作ってくれた。
そこから登山の……雪山に遭難した話になって。オレが作ってみたいって言ったら、あの……じいちゃんの家の畑の下の斜面で作り方を教えてくれたんだ」
正火斗も覚えている。
風晴と坂道を登り、彼の祖父の家の縁側で2人で話したことを。それから畑のトマトを食べた──あの夏の日の朝
「じいちゃんが"寒いところではこれで、風を防げれば命だって助かる。オレは助かった"って言ってたから……今回やってみたんだ」
「お爺さんに聞いておいて本当に良かったな。そのまま役に立っている」
「あ ── …………正火斗……」
それまでと口調が変わった風晴がいた。なんだろうと見つめていると彼は
「じいちゃんの家も中はリフォームしたんだ。風呂場とか台所とか。屋根の雨漏りとか。でも外観はほとんど変わってないし────縁側は残した」
と言った。
じんわりと……温かいものが 宿る。
自分はこの先あの縁側に戻ることは……きっと ない
風晴も分かっている
それでも彼は "残した" と 言った
思ってくれて……いるのかもしれない……彼も
あの夏の時間が 特別なものだったと
────いや、違う 違うな
風晴はそう言うヤツじゃない
多分彼は……
"僕にとって特別だっただろうもの"を残しておいた
そういうことを伝えてるんだろう
──桜田風晴は……そういう人間だから
なんでこんな人間がいるんだろう?
僕から見たら 彼のような存在は不思議でしかない
「……トマトが美味かったな」
振り絞った一言だったが
「朝イチで空腹で食べたからな」
と彼は返した。
僕は心から笑えた。
良かった────友達でいられそうだ




