061 眠れない夜に
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
風の音で目が覚めた。
目を開くとすぐ──窓の向こうで白い雪が舞い 吹雪になっていることが分かった。
窓があるだけでまず安心した。
大丈夫だ
室内だ
────もう洞窟じゃない
両脇の──窓側に正火斗、ドア側に聖がいてくれるのは助かった。1人部屋なら……心細かっただろう──クソ情けない。
風晴はベッドから出てトイレに行った。電気は消えているが、病室のドアの窓からの廊下の微光や 機材から点灯しているテールランプもあるので そのまま行けた。
戻ると備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを出して飲んだ。
どうしても眠れる気持ちにはなれず、窓に近づき踊る雪を見ていた。暗闇よりは雪の白さの方がまだマシな気がした。雪崩は確かに怖かったけれど……
「眠れない?」
かけられた低い声の主は分かっていて──不思議と振り返らなくても良い気がした。風晴はただうなずく。
彼が身を起こす気配を感じても、風晴は窓の外を見ていた。そのまま口を開く。
「……洞窟で……父さんに起こされたんだ」
たいぶ間があり────彼は静かに
「へぇ……」
とだけ言った。
「子供の頃 夜中に見た"バレバレサンタクロース"の姿だった。だけどあの時と違って……"風晴"って名前を……何度も呼ばれた。
オレ、クリスマス・イヴだから会いに来たんだな──なんて、悠長に思ってた。でも起きたら……」
そこで風晴はハッとして正火斗に振り返った。彼に伝えるべき言葉がいろいろとあると気付いたのだ。
「ありがとう正火斗。助けに来てくれて。……でもなんだか……凄くごめん。お前にとって最悪のクリスマスになってないといいんだけど」
風晴の言葉に、ベッドで上体を起こしていた正火斗は笑った。
「確かに──最悪かも」
本当はそうでもない
2人が助かっていた────
それは、これ以上ないクリスマスプレゼントだった。
冴木拓眞には申し訳なくとも……自分はサンタクロースを信じてさえしまいそうになった。
子供の頃から"そんなものはいない"と知っていた……なのに。
でも言葉にはしない──決して。
風晴は申し訳無さそうに正火斗のベッドの縁に座った。
彼が言葉を探しているようだったので、正火斗の方が口を開いた。
「気にすることない。──血圧は理人さんのせいで絶対前から上がってたんだろう。
脱水症状は……昨日1日を通して、確かにあまり飲んだり食べたりしてなかったんだ。
それに風晴達がいないと分かってからは洋館の中で出されるものに口をつけないようにしていた。一応だったんだが……誰が敵か味方か分からなかったから。
洋館を出て松下さんと登山用具を揃えたとき、非常用に飲料水は入れていた。だけど風晴達に飲ませるつもりで用意したから……自分で飲むのは……忘れてた。
馬鹿だった」
大道正火斗が馬鹿ってことは絶対ないと思ったが風晴は言わずにおいた。代わりに
「洋館の中に犯人はいる?」
と聞いた。
「多分。高い確率で。だが今回難しいのは犯人が複数──もしくは団体のところだと思う。洋館にいるのも正しくは"犯人の手下"かもしれない。
全員を炙り出すのは ……大掛かりな策が必要になる。末端ばかり捕まえても|指導者的な人物がつかまらなければ、因習は続いてしまうだろう」
「理人さんや透子さんは……逃れられない?」
風晴の問いに正火斗は返答に迷った。──本当は風晴にあまりしたい話ではない。だが隠していても明日にでも分かってしまうことだ。
正火斗は口を開いた。
「風晴……透子さんは冴木と想い合っていたようだ。昨夜クリスマスパーティーで透子さんは冴木に告白していたんだそうだ。
その冴木が……行方不明どころか殺された。恐らくは刃物で刺されて。
透子さんの精神的なダメージは……あって当然だと思う。"白吹の呪い"に抵抗することをやめてしまうかもしれない」
銃声を誰も聞いていないことから、正火斗は凶器は刃物の可能性が高いと思っていた。しかも──
「冴木拓眞の殺人は計画ではなくて、突発的だったのではないかと……僕は感じてる。
"白吹の呪い"でいけば今夜は"行方不明"で良かったんだ。
しかも洞窟に連れていけば凍死させられる。わざわざ手を汚す必要がなかったのに、彼は洞窟ではすでに死んでいたわけだから」
風晴はうなずいた。正火斗は続ける。
「風晴が洞窟で聞いた話も……だ。やっている行為に疑問がある者達はいるんだ。だが指導者を恐れてか、抜けられないでいたんだろう。
冴木の殺人疑惑で警察も動きだしたから……かなり揺さぶりになっていくと思う。内部からほころびだす可能性も」
最後に彼は言った。
「正直、今回の呪いはどうでも良かった。身代わりが終わったら今日にも東京に帰るつもりでいたんだ。水樹達は残しても」
「仕事忙しいんだな」
うなずく。──いや、君が来たからだ。ここにいるから。
「でももう少し……いようと思う。少し本気でこの"白吹の呪い"を追ってみたくなってきた」
風晴は顔を明るくした。
「良かった! もし解決できたら冴木さんや透子さんのためにも……きっとなるよな」
正火斗は再び ただ うなずいた。
彼は誓っていた。去る前に必ず"犯人たる者"は全員挙げると。
それは彼らが──聖と風晴を殺そうとしたからだ。
桜田風晴の心に傷を負わせたからだ。
許すことができない────自分がそこにいた




