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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第8章 調査開始

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061 眠れない夜に

ー登場人物紹介ー


※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


華蔵理人かぐらりひと・華蔵家現当主。

華蔵透子かぐらとうこ・理人の妹。


冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。

 



 風の音で目が()めた。

 目を開くとすぐ──窓の向こうで白い雪が()吹雪(ふぶき)になっていることが分かった。

 窓があるだけでまず安心した。


 大丈夫だ

 室内だ

 ────もう洞窟(どうくつ)じゃない


 両脇(りょうわき)の──窓側に正火斗、ドア側に聖がいてくれるのは助かった。1人部屋なら……心細(こころぼそ)かっただろう──クソ情けない。


 風晴はベッドから出てトイレに行った。電気は消えているが、病室のドアの窓からの廊下の微光(びこう)機材(きざい)から点灯(てんとう)しているテールランプもあるので そのまま行けた。

 戻ると(そな)え付けの冷蔵庫(れいぞうこ)からミネラルウォーターを出して飲んだ。


 どうしても眠れる気持ちにはなれず、窓に近づき(おど)る雪を見ていた。暗闇よりは雪の白さの方がまだマシな気がした。雪崩(なだれ)(たし)かに怖かったけれど……



「眠れない?」



 かけられた低い声の(ぬし)は分かっていて──不思議(ふしぎ)()り返らなくても良い気がした。風晴はただうなずく。

 彼が身を起こす気配(けはい)を感じても、風晴は窓の外を見ていた。そのまま口を開く。


「……洞窟(どうくつ)で……父さんに起こされたんだ」


 たいぶ()があり────彼は静かに


「へぇ……」


 とだけ言った。


「子供の頃 夜中に見た"バレバレサンタクロース"の姿だった。だけどあの時と(ちが)って……"風晴"って名前を……何度も呼ばれた。

 オレ、クリスマス・イヴだから会いに来たんだな──なんて、悠長(ゆうちょう)に思ってた。でも起きたら……」


 そこで風晴はハッとして正火斗に()り返った。彼に伝えるべき言葉がいろいろとあると気付いたのだ。


「ありがとう正火斗。助けに来てくれて。……でもなんだか……(すご)くごめん。お前にとって最悪のクリスマスになってないといいんだけど」


 風晴の言葉に、ベッドで上体を起こしていた正火斗は笑った。


「確かに──最悪かも」


 本当はそうでもない



 2人が助かっていた────



 それは、これ以上ないクリスマスプレゼントだった。

 冴木拓眞には申し訳なくとも……自分はサンタクロースを信じてさえしまいそうになった。

 子供の頃から"そんなものはいない"と知っていた……なのに。

 でも言葉にはしない──決して。


 風晴は(もう)訳無(わけな)さそうに正火斗のベッドの(ふち)に座った。

 彼が言葉を(さが)しているようだったので、正火斗の方が口を開いた。


「気にすることない。──血圧は理人さんのせいで絶対(ぜったい)前から上がってたんだろう。

 脱水(だっすい)症状は……昨日1日を通して、確かにあまり飲んだり食べたりしてなかったんだ。

 それに風晴達がいないと分かってからは洋館の中で出されるものに口をつけないようにしていた。一応だったんだが……誰が敵か味方か分からなかったから。

 洋館を出て松下さんと登山用具を揃えたとき、非常用に飲料水(いんりょうすい)は入れていた。だけど風晴達に飲ませるつもりで用意(ようい)したから……自分で飲むのは……忘れてた。

 馬鹿(ばか)だった」


 大道正火斗が馬鹿ってことは絶対ないと思ったが風晴は言わずにおいた。代わりに


「洋館の中に犯人はいる?」


 と聞いた。


「多分。高い確率(かくりつ)で。だが今回(むず)しいのは犯人が複数(ふくすう)──もしくは団体(だんたい)のところだと思う。洋館にいるのも(ただ)しくは"犯人の手下"かもしれない。

 全員を(あぶ)り出すのは ……大掛(おおが)かりな(さく)必要(ひつよう)になる。末端(まったん)ばかり(つか)まえても|指導者的な人物がつかまらなければ、因習(いんしゅう)は続いてしまうだろう」


「理人さんや透子さんは……(のが)れられない?」


 風晴の問いに正火斗は返答に(まよ)った。──本当は風晴にあまりしたい話ではない。だが(かく)していても明日にでも分かってしまうことだ。

 正火斗は口を開いた。


「風晴……透子さんは冴木と想い合っていたようだ。昨夜クリスマスパーティーで透子さんは冴木に告白していたんだそうだ。

 その冴木が……行方不明(ゆくえふめい)どころか殺された。恐らくは刃物(はもの)()されて。

 透子さんの精神的(せいしんてき)なダメージは……あって当然(とうぜん)だと思う。"白吹(しらぶき)の呪い"に抵抗(ていこう)することをやめてしまうかもしれない」


 銃声(じゅうせい)を誰も聞いていないことから、正火斗は凶器(きょうき)は刃物の可能性(かのうせい)が高いと思っていた。しかも──


「冴木拓眞の殺人は計画ではなくて、突発的(とっぱつてき)だったのではないかと……僕は感じてる。

 "白吹の呪い"でいけば今夜は"行方不明"で良かったんだ。

 しかも洞窟に連れていけば凍死(とうし)させられる。わざわざ手を(よご)す必要がなかったのに、彼は洞窟では()()()()()()()()わけだから」


 風晴はうなずいた。正火斗は続ける。


「風晴が洞窟で聞いた話も……だ。やっている行為(こうい)に疑問がある者達はいるんだ。だが指導者(リーダー)(おそ)れてか、()けられないでいたんだろう。

 冴木の殺人疑惑で警察も動きだしたから……かなり()さぶりになっていくと思う。内部からほころびだす可能性も」


 最後に彼は言った。


「正直、今回の呪いはどうでも良かった。身代わりが終わったら今日にも東京に帰るつもりでいたんだ。水樹達は残しても」


「仕事(いそが)しいんだな」


 うなずく。──いや、君が来たからだ。ここにいるから。


「でももう少し……いようと思う。少し本気でこの"白吹の呪い"を追ってみたくなってきた」


 風晴は顔を明るくした。


「良かった! もし解決できたら冴木さんや透子さんのためにも……きっとなるよな」


 正火斗は再び ただ うなずいた。




 彼は(ちか)っていた。()る前に(かなら)ず"犯人たる者"は全員()げると。


 それは彼らが──聖と風晴を殺そうとしたからだ。

 桜田風晴の心に(きず)()わせたからだ。






 許すことができない────自分がそこにいた










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