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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第7章 白銀との戦い

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057 その訪れのとき

ー登場人物紹介ー


※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。

 




 正火斗は一度 無線(むせん)でどこかに連絡を入れると、聖をおんぶして風晴へ


「こっちへ」


 と言い 歩きだした。


「ええっと……木がある方とかに行ったら、雪崩(なだれ)が起きても木が(ふせ)いでくれるとかは……ない?」


 風晴は正火斗について行ったが、足に装着(そうちゃく)したスノーシューが不慣(ふな)れでぶつかり合った。──落ち着けと言い聞かせる。


大規模(だいきぼ)雪崩(なだれ)だと木々は押し倒(たお)される。その()き込まれの方が(こわ)いし、上空から見つけづらいからこのルートにした。──風晴、そのまま聞いてくれ」


 歩いたまま、ということだろう。話が聞こえるように、風晴は歩幅(ほはば)を大きくして正火斗との距離(きょり)()めた。



「雪崩は2種類ある。全層雪崩(ぜんそうなだれ)表層雪崩(ひょうそうなだれ)──全層雪崩は自動車ほどの速度で斜面全体(しゃめんぜんたい)の雪が降りてくる。単純(たんじゅん)に重さや雪量が脅威(きょうい)になりうる。

 表層雪崩の方は、いわゆる斜面の上部の雪が(すべ)ってくるものだが、速度が時速200キロにも到達(とうたつ)することがあって……新幹線(しんかんせん)並みだ。到達距離も遠くまで……2キロ先まで被害(ひがい)があることがある。

 今日の気候はどちらの雪崩でも起こる可能性があるそうだ」


 正火斗が陽差(ひざ)()りつける空を見上げる。

 風晴の方は、──つい雪山に目をやってしまう。今にも(くず)れてこないか(たし)かめて──かすかにだがパラパラと何かが こぼれるような、転がるような音は……している。


「秀一が雪崩の自然(しぜん)発生率(はっせいりつ)を計算してくれたが……気象(きしょう)条件(じょうけん)がそれより(きび)しいと思う。つまり、人為的(じんいてき)に僕らが何かしなくても雪崩が起こる時は来る」


 正火斗は風晴を見つめた。


「間もなく僕は無線でヘリコプターを呼ぶ。ヘリコプターが近づけば、そのせいで雪崩が発生する確率(かくりつ)は高い。……だが"発生してから連絡"では完全(かんぜん)に間に合わない。

 ヘリコプターを呼ぶのをやめてほしければ今 言ってくれ──2人共」


 風晴は間を置かず


「呼べよ。正火斗がここだと思ったタイミングで」


 と言った。

 おんぶをされている聖も


「……それでいい……」


 と言った。

 正火斗はうなずくと


「ヘリコプターを呼んだことで……雪崩が起こっても、それは想定内(そうていない)だから──風晴、落ちついてしゃがんで()()()()()()()()()()()

 ヘリコプターは着陸(ちゃくりく)はないが縄梯子(なわばしご)が降ろされる。縄梯子には風晴が1番につかまってとにかく上に上がれ。風晴が上がれば聖、僕が続ける。

 聖はとにかく手で縄梯子をしっかりつかめ。身体(からだ)は僕が(ささ)えるし、つかんでいれば必ず上昇(じょうしょう)する」


了解(りょうかい)

「……分かった」


 風晴と聖が返事をする。

 正火斗はリュクサックのサイドポケットから無線機を取り出した。そのまま手に持って歩いていたが────ほどなくしてその決断は(おとず)れた。


 カチッと彼が無線機のスイッチを入れる音がした。

 歩いたまま、彼は無線機を顔に近づけて 言った。


「正火斗です。予定地点の20メートル弱手前だと思います。救助をお願いします」


 ──助かるための要請(ようせい)だが、それは脅威の引き金でもあった。緊張(きんちょう)()()める中、正火斗と風晴はしゃがみこんでそれぞれのスノーシューを取り(はず)す。


 指が上手(うま)く動かず もどかしくていると、正火斗が


「手袋を外せ、風晴。──できる」


 と風晴に声をかけた。ただその言葉の通りにする。

 できると信じて────


 すぐさまバラバラと言う間違(まちが)えようの無いヘリコプターの音がした。青い空に現れたそれはぐんぐん近づいてくる。


 正火斗はスノーシューを放った。

 風晴も片方は終わり、もう片方もまもなくほどける。


 近づいてくるヘリコプター音の中──




 ズズン…………




 と低く、しかし確かに その音と衝撃(しょうげき)は3人の身体(からだ)に伝わった。






 雪崩が始まる






 



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