055 その陽射しを浴びて
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○松下寿明・喫茶店・寿店長。
2025年12月25日午前7時
朝日は昇った──
陽射しが雪崩発生に与える影響を考えると憂鬱だが、それでも晴天はやはり救いでもあった。風や視界の心配は全くいらない。救助そのものへの集中ができる。
2時間弱で正火斗は松下や理人、秀一と計画を練り直した。地形から安全性を最優先にしながら──だが時間内に戻ってくることが何よりだった。雪崩が起こってしまえば、生存率が圧倒的に下がるのは明白だ。
行く前に浅倉に
「正火斗……戻って来てね」
と言われた。
「彼らを連れて戻ってくる」
としか返事ができなかった。
正直言って怖かった。
雪山や雪崩が──ではない
これから行く場所で突き付けられるだろう 現実が怖かった。
どこを探してもいなかったら?
それは…… まだいい
どこかでいて 生きていてくれているのかもしれない
力を貸してくれた全ての人に間違いを謝って……
また探せる
だが違う事実が待っていたら?
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思うかもしれない
もうここで自分も埋まろうか── とさえも
何故そこまでなのかすらも 今は 分からない
分かりたく…ない
自分の人生で唯一大切だったものは
血の繋がった半身とも言える
複雑で傷つきやすい妹だけだったのに
秀一には言ってこれた
"水樹を頼む"────と
それが言えたから……かも……しれない
崖などを登るわけではないし、迅速さが求められるので装備は最低限だった。それでもそれなりの重さはある。
直前に松下は
「やっぱり僕が行こうか?」
と言ったので、人が良い彼とそのタイミングに思わず微笑む。
もう縄梯子に手をかけて、降りていく──まさに直前だったのだ。
正火斗は首を振って
「今から松下さんに装備を移していたら それだけで時間がかかります。上空から指示を下さい。──じゃあ」
そう伝えて縄梯子を降り始めた。
揺れる縄梯子をしっかりと握り、足をかけた体重と自分の身体で安定させる。慣れない動作に慎重に一つ一つ降りた。
雪上に立つと、早速の雪の中に登山ブーツが埋まる。
新雪だからか それとも
もう 溶けてきてる……?
上空のヘリコプターは遠のいていくが、見送る時間等はない。正火斗はリュックサックを下ろして しゃがんだ。
リュックからは"ワカン"とも呼ばれるスノーシューを取りだす。昔のいわゆる"かんじき"だ。登山ブーツに着けると雪道で埋まりにくくなるのだ。
手袋を咥えて外して急いで取り付ける。
陽射しの強さは雪の表面温度を上げている。
雪が溶けて水分が増えると──重くなる。
重さは当然、雪崩の原因になりうる。
雲一つない青空を
こんなに恨めしく思ったことも無かった。




