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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第7章 白銀との戦い

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054 背水の陣

ー登場人物紹介ー


※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


華蔵理人かぐらりひと・華蔵家現当主。


冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。

松下寿明まつしたとしあき)・喫茶店・寿店長。

 



白吹(しらぶき)唯一(ゆいいつ)の総合病院の富美田(とみだ)医院だ。

 夜間・休日の救急にも対応してくれているから、地域の医療搬送(いりょうはんそう)に役立つだろうと生前 父がヘリコプターを寄贈(きぞう)している。

 ドクター・ヘリとしてではなくて、患者(かんじゃ)搬送用として父がオーナーで貸与(たいよ)しているのが正確な登録のはずだ。求められる医療(いりょう)従事者(じゅうじしゃ)(そろ)えてその都度(つど) 飛ぶのは、むしろ人手が足りないからだった」


 華蔵理人は続けた。


「今回、真淵聖くんは足を怪我(けが)している。正確(せいかく)な救助位置が確認(かくにん)できれば、搬送患者として迎えにいくことに使っていいはずだ。

 雪崩(なだれ)の説はどこまで信じてもらえるかは分からないが……」


 正火斗は一つだけ確認した。


「村には通常の救急車も機能(きのう)しているんですよね?」


 理人はうなずく。


勿論(もちろん)。父と富美田医院の理事長(りじちょう)が元々同級生で、理事長が趣味(しゅみ)操縦士(そうじゅうし)免許(ライセンス)を持っているのを知ってたからって言うのもある。──つまり完全に個人的(こじんてき)(つな)がりからのアシストだった」


「そういうのは かえって融通(ゆうずう)()くかもしれないわよね」


 と水樹が期待(きたい)を込めて言った。

 神宮寺が不思議そうに


「華蔵家って本当にお金持ちなんですね。一体何をやっているんですか?」


 とある意味もっともな疑問(ぎもん)を理人に尋ねた。


「主に不動産。市内と駅前に物件を数十件。あとは白吹(しらぶき)の土地も所有してる」


 彼はそう答えてから


「昔は白吹と呼ばれるところは、全部うちの土地だったこともあったんだよ。合併(がっぺい)やら国の規定(きてい)やらでいろいろ変わって今は4分の1くらいだ」


 と()()した。


「……それでも4分の1……」

「本当に……領主(りょうしゅ)様だったんですね」

「この館も欧州(ヨーロッパ)の領主館っぽいわけだ」


 浅倉、椎名、桂木は(みょう)に納得したようだ。


「理人さん、お父さんの名前を教えて下さい。それから、あなたは富美田医院の理事長に会ったことは?」


 正火斗は臨戦態勢(りんせんたいせい)に入った────彼の口調から感じ取った水樹と秀一は見合わせ、(かす)かに微笑(ほほえ)みを交わす。それは、勝つ見込みが出てきたと言うことだ。


「華蔵一豊(かずとよ)だ。富美田理事長がここに来て最後に会ったのが……14年くらい前かもしれない。後は父から話を聞いていただけだから」


 正火斗はうなずいて


「それなら僕に"華蔵理人"として電話させて下さい──椎名、富美田医院の番号を出してくれ。救急を受け入れているならこの時間でも通じるはずです」


 と彼はもう──理人の返事を待たなかった。椎名からの番号を聞いてスマートフォンにそれを打ち込む。

 理人は少し目を見開いたが、ヤレヤレと言うふうで、何も口を(はさ)まなかった。

 正火斗は"華蔵一豊の息子の理人"と名乗り、出た受け付けから富美田理事長に繋いでもらった。


「クリスマスの早朝に申し訳ありません。出て頂いて感謝(かんしゃ)します。……実は緊急(きんきゅう)の用件がありまして、お力をお借りしたいのです。

 宿泊しに来ていた高校生2名とうちの従業員(じゅうぎょういん)が トラブルがあって洋館から近い山中に取り残されました。

 いる場所の確認は取れていますが、今日はそこが雪崩になると──()()()()()()()。しかし警察に信じてもらうどころか、説明する時間の頃には彼らは雪に埋まってしまうでしょう。

 1人は足を負傷(ふしょう)していることも分かっています。──助け出したい。

 父のヘリコプターと操縦士(パイロット)を出して欲しいんです。どうかお願い致します」


 正火斗は(まった)く よどみなく言った。

 何かが(すべ)て思い(ちが)いで 責任(せきにん)を取ることになるなら それで良いと思った。

 どこからか彼らが戻ってくるなら──社会的信用や地位なんか いくらでも捨てる。


 何かの覚悟(かくご)が伝わったかはともかく、理事長は了承(りょうしょう)してくれた。


「ありがとうございます」


 これは心から()げた。


「すぐに目的地(もくてきち)と飛行計画を送ります。…………はい、そうです。()()()()1()()が乗ります」


 通話を聞いていた全員が(おどろ)いた。


「今日の日の出は6時40分頃です。我々も病院の方にその頃には到着するように行きます。燃料(ねんりょう)を満タンにして7時には飛べるように手配(てはい)と準備を──何卒(なにとぞ)お願い致します」


 彼はそうして通話を切った。

 間髪(かんぱつ)置かずに松下は正火斗に声をかけた。


「正火斗くん、近くに降ろしてもらえれば僕が洞窟まで行くから君はいいよ。その……いろいろ問題があると思う。 君は本当は華蔵理人じゃないし、未成年だし、雪山経験もないだろうし……」


 正火斗も待っていたかのようにその問いに答えた。


「松下さんに同行はお願いしようと思っていました。

 それに登山装備(そうび)一式(いっしき)()()貸して無線(むせん)進路指示(しんろしじ)をしてほしいんです。()()()()


 松下は聞き返した。


「何だって?」


「7時に飛んだとしても、ヘリでは洞窟の近くまでは行けません。ヘリコプターの()()()()()雪崩は引き起こされる可能性がある」


 その可能性(かのうせい)に松下は言われて思い出したようだ。


「救助方法はこうです。安全地帯に1人が降りて洞窟に捜索(そうさく)に歩いて行く。この間、ヘリは上空(じょうくう)待機(たいき)になる。

 見つかった人間達と洞窟から離れたところまで また歩き、ヘリを待つ。

 これらをヘリの燃料と雪崩発生確率(かくりつ)から1時間半をめどに行わなければならない。9時では、ヘリの燃料も雪崩もアウトになる恐れがある」


 真剣に正火斗は続ける。


「全ては──特に雪崩は、予測(よそく)でしかない。もっと早く起きることも有り得ます。

 何かあっても()()()()()()覚悟がないのなら、こんな話に付き合ってはいけないんです」



 そして 彼は言い切った。



()()()僕が行きます」







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