053 待つ者達
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
風晴は雪穴を完成させ、彼と聖は雪穴に無事におさまることができた。
始めにブルーシートを持ち込み、1番下に敷いて余った部分は折りたたみナイフで裂いた。
次に毛布を持ってきてブルーシートの上に二つ折りにして敷く。岩でもなくて水平で、それだけでもうかなり快適だった。
裂いた部分のブルーシートは入り口の上から垂らして風が入り込まないようにした。
狭い雪穴だが間違いなく……もう寒くなかった。
身を寄せ合っていれば ちゃんと暖かい。
風晴が薄着の聖にダウンジャケットを脱いで譲ろうとしたが、一枚の毛布に既に くるまっている聖は首を振った。
「風晴……とっても大変だったでしょ。少し休んで……眠れたら眠った方がいい。僕が起きてるから……」
聖は続けた。
「救助が来ても……僕が応えて風晴を起こすから……大丈夫」
聖の頼もしい言葉に──馬鹿みたいだけど風晴は瞳が潤んだ。確かにヘトヘトだった。ありとあらゆる意味で。
聖は
「これもポケットにあった。……どうぞ」
と風晴にポケットから何かを取り出して握った手のまま出した。
風晴は何かと思いながら、その下に右手を広げて差し出す。
────ポトン と彼の手のひらに落ちたそれは、一粒の飴玉だった。
風晴は思い出した。洋館に到着して広間でみんなと再会した時、水樹が聖にあげたものだ。
「いいのか? 聖が食べなくて。──貴重な食糧かもしれないのに」
風晴がそう聞くと聖は
「大丈夫。……水樹さんにまたもらう……」
と言ったので 風晴は本当に泣きそうになった。
軍手を外して、飴玉の袋のギザギザに爪をかけて開けた。緑色の飴玉を口に入れると、その甘さに唾液が出て喉を潤す。味はとにかく美味くて、その何もかもを肉体は必死に吸収する。が、味がメロンなのかマスカットなのか何なのかは分からなかった。分からなくても、かまわない。
「次に水樹に会ったら本当に抱きつきそうで怖い」
折りたたみナイフと飴玉があまりに有り難くての発言だった。聖はあまり理解できないようで、不思議そうな顔をしている。
それを見て風晴は笑った。
こんな酷い状況でも──
雪はすっかりおさまり風も無くなり、静寂が染み渡る。時折 鳥のような声はするが それも遠い。
毛布はまだ1枚あったので、それは体育座りをして一緒にかける形にした。
「明るくなったら……来るかな? 救助」
風晴が呟くように言った。
「……きっと。……正火斗が来るよ」
聖の迷いない言葉に風晴には笑みが浮かんだ。
現実的には──正火斗とは言えまだ高校生で、雪山登山経験は多分ないだろうし、救助隊には参加できてないだろう。──救助も 朝すぐとはいかないかもしれない……
でも 風晴も信じていた。
待っていれば必ず助かる
ここで待っていれば きっと
みんなも正火斗も助けようとしてくれるはずだ
「…………正火斗、無理してないといいな。変に責任を感じて……聖を助けなきゃってやってそう、あいつ」
聖は少し変な顔をした。風晴の言葉は続く。
「コレって……"白吹の呪い"にしようとしているんだろう? だから"当主"に告白された聖が狙われた。……酷いよな…」
「……かもしれないけれど……正火斗は…………風晴も凄く助けたいんじゃないかなぁ……」
聖は続けるか迷った。だいぶ迷った。かなり迷った。相当迷った。まあ少しはいいかと思った。
「…………………………………大切だから……とても」
「……………………」
風晴がノーリアクションなので、聖は駄目だったかと思った。悪いことをしたかと。間違えてしまった?
「風……」
彼の方を見た瞬間、その頭の重みが聖の肩にかかった。
風晴はぐっすり 眠っていた。
(お約束か……)
と聖は作者に思った。
お約束でごめんʕ-ᴥ-ʔ←作者




