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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第7章 白銀との戦い

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052 確かにあるもの

ー登場人物紹介ー


※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


華蔵理人かぐらりひと・華蔵家現当主。


橘信蔵たちばなしんぞう・華蔵家執事。

斉藤豊子さいとうとよこ・華蔵家女中頭。

冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。

松下寿明まつしたとしあき)・喫茶店・寿店長。

 



 まだ暗い冬の早朝──


 秀一はついに机から立ち上がった。

 正火斗に一冊のB5ノートを差し出す。


斜面(しゃめん)積雪(せきせつ)力学(りきがく)バランスから、積雪への重力の斜面方向分力と 断面(だんめん)に平行に働くせん断力(だんりょく)の強度を計算して比べた。

 被害規模(ひがいきぼ)全層(ぜんそう)雪崩(なだれ)表層(ひょうそう)雪崩だとだいぶ予測値(よそくち)(ちが)う。だが明日の天候(てんこう)ではどちらも起こりうる。理人さんが言うには……」


 そこで理人本人が立ち上がった。


「あの洞窟上の斜面は、明日はほぼ確実(かくじつ)に雪崩は起こると思う。僕の予感(よかん)なんてものだけじゃないんだ。

 あの洞窟そのものが──夏は観光用風穴(ふうけつ)で 冬は洞窟を通路にして、抜けた山側ではスキーができるように開発される計画だったんだ」


 彼は少しゆっくりと歩きながら話を続ける。


御破算(ごはさん)になった理由が 洞窟内の冬場の想定以上の寒さと、スキー場を予定していたあの斜面の、雪崩の発生確率の高さからなんだ。

 雪崩は大きな音以外にも、山の尾根(おね)から雪がせりだした"雪庇(せっぴ)"が(くず)れる衝撃(しょうげき)で起こることがある。

 尾根にぶつかる風の関係で、その"雪庇"があの斜面上にとても できやすいことが分かったんだ」


 そして理人は


「"雪庇"は吹雪や積雪が繰り返して作られる。十中八九 今年はもうできてると思う」


 と言い切った。

 だが 正火斗はもう(おどろ)かなかった。


「雪崩は想定(そうてい)に入れています。だから雪崩が起こる前に なんとかしたいと思っています」


 そこで食い入るように、正火斗は秀一からのノートを見た。

 ────やがて上げた視線で神宮寺(じんぐうじ)桂木(かつらぎ)


「ヘリコプターは?」


 と(たず)ねたが、2人は左右に首を振った。

 やりとりを眼前(がんぜん)で見ていた秀一の表情も(くも)る。


 桂木は 洞窟への扉の写真を(たちばな)()りに行って、すでに戻って来ていた。

 今は神宮寺と白吹(しらぶき)村周辺のヘリコプター運行会社を当たってくれているが、午前4時前のような時間ではどこもまず対応してくれないのだ。メールをしても、反応もない。


「民間のヘリコプター会社は、午前9時くらいにならないと電話も(つな)がらなそうだぞ、これ」


 天気が良くなり電波が戻って来ているので、スマートフォンを操作(そうさ)していた桂木は言った。


 正火斗は館内(すべ)てを豊子(とよこ)浅倉(あさくら)と見て回ったが、館内に明確(めいかく)乱闘(らんとう)(あと)血痕(けっこん)を発見できなかった。

 桂木の撮って来た洞窟の写真にも、肉眼(にくがん)では吹雪の雪と風のせいで足跡も開けた手の跡等も消えていて発見できていない。


 警察は洋館に来てから正火斗がしたように全館見て、それからみんなの話を聞き、そこで正火斗が洞窟の可能性を()いても、だからと言ってすぐに錠前(じょうまえ)の切断作業をしてまで扉を開けようとは──してくれないだろう。

 洞窟の扉の錠前や取っ手の鑑識(かんしき)をして所有者(しょゆうしゃ)の許可が下りてからになる。あるいは、いなくなった3人がどこからも発見されずに探すところが無いとなった時にやっと────だ。



 それでは遅すぎる


 あまりにも遅すぎる




 過ぎていく時間を正火斗は無情(むじょう)に感じた。

 どう考えても、起こる雪崩を()けるのにはヘリコプターが必要だった。雪山で 車は入れない。人の足では 雪崩が起こる前に現地に到着(とうちゃく)することがすでに(きび)しい。

 それでも正火斗は松下寿明(まつしたとしあき)懇願(こんがん)して、行けるところまで車で行き、徒歩(とほ)で救助に行けないものかとすら思った。

 なんとしても助けてやりたい。


 助けたいんだ



「……ヘリコプターか……」


 その時、理人が思い出したように言った。


「白吹村でなら融通(ゆうずう)がきくものが……1機……あるかもしれない。父が寄贈(きぞう)した形になっているが、オーナーとしての登録は残ってる──病院の搬送(はんそう)用ヘリだ……!」


 正火斗は自分に向けられた、華蔵(かぐら)家当主の瞳を見つめた。

 今夜入った当主の部屋の写真が思い出される──



 あった

 (たし)かにあった……!



 白衣(はくい)の人達とスーツの男性と ヘリコプターの写真が!!!








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