051 諦めない理由
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
ザクッ ──と また雪をかく。
後ろに投げ捨て、またスコップをさす。
風晴はそれを繰り返す。
諦めるな!
身体のどこかからか怒りのようにそれは湧いた。
実際、怒りなのかもしれない
────諦めそうになった自分への
怖かった
動けなかった
楽になりたかった
あのまま寝転がって
少しの寒さに耐えていたら……
きっとそれで終われていただろう
でも 浮かんだのは
自分の帰りを待っていてくれる人の姿だった
────母さん
あなたはもっとも帰って来てほしい人を失って
どれほど傷ついたんだろう
悲しんだのだろう
食事も取れずに痩せていくのに
それでも料理して息子には微笑んでくれていた
そんな あなたを ただ 見ていた
子供の自分には それしか できなくて
今だって まだ子供で 大したこともできないけれど
これだけは分かる
これだけは分かっている
もし 自分が帰らなければ──
あなたは 深く 深く 悲しむだろう
立ち直れないほどに
息すら 苦しいほどに
もしかしたら……
自分の記憶にある以上に
だから
帰らなければ と思ったんだ
あなたに
そんな痛みを与える 自分になんか なりたくない
死んでも なりたくない
それなら
死なないように── 生きている今は 足掻く
それしか できないけれど
それを頑張るから
あなたは 笑って待っていて
────父さん
オレは父さんのようには ならない
あなたもそれを伝えに来たんだと信じる
オレはあの人のところに帰る
父さんのようには
悲しませない
絶対に
風はおさまり、落ちてくる雪はまばらになっている。
ただ自分の息遣いと雪にささるスコップの音が……
「……晴? ……風晴!?」
その中に 人の声が微かに混じった。
聖の声だ────!!
スコップを置いて駆け出す!!
さっきまで話しかけても話しかけても返事のなかった相手の声がただ ただ嬉しい
一度 雪に足を取られて 転びそうになる。
体勢を整えた時には思わず笑みが浮かんだ。
良かった 聖も生きてる
ただ そのことの喜び
この瞬間に 1人ではない心強さ
「聖!!」
自分を呼ぶ声に応えた。
洞窟の中に駆け込む。
帰ろう 聖 必ず
オレ達は必ず 生きて帰る
聖のお母さんだって 聖がいなくなったら
きっとまた心が病んでしまう
せっかく良くなってきているのに
あの人達に会うために
ここで終わりたくなんかない
帰りたい
帰りたい
帰りたいんだ
風晴が置いたソリの方を見ると、聖は立ち上がっていた。
毛布の一枚だけはマントのように肩からかけている。
「聖!! 良かった!!」
風晴が発した声は洞窟に響いた。
聖はニコッとした──いつも通りに。
それが嬉しくて抱きつく
2人はただしばらく笑い合った
1人じゃない
1人じゃない喜び
でも 風晴は分かっていた──
自分を支えてくれているもう一つの者達を
信じてる
信じられる者達を
きっと 助けようとしてくれているはずだ
今夜 苦しい想いの中で
頑張っているのは 自分だけじゃ……ない
それはあり得ない
秀一
水樹
桂木
椎名
神宮寺
浅倉奏衣も きっと
心配して
探して
助けようとしてくれているはずだ
だから 強くなれる
諦めないでいられる
オレ達なら きっと できると信じる
そうだろう?
────正火斗




