048 折れる心 それでも
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
白骨死体を見たことはあっても、数時間前まで生きて動いて笑っていた人が、もうそうではなくなっているのを見たのは──風晴は初めてだった。
叔父の桜田孝臣は梯子からの転落で死んだが、その遺体は風晴は見なかった。
重々しい……黒々とした血も知らなかった。
息が荒くなって、手と足がガクガクと震えた。
刹那 自分はもう立てないと思った。
手も足もこんなに震えていて力が入らない。
岩石からは冷たさが這い上ってきて、体温も、希望も奪い去っていく。
何もかもが無理な気がした。
ここでもう死ぬしかないんだ──と
この人のように
ふと──さっきまで見ていた夢を思いだした。
どうして父さんは来たんだろう……
ぼんやりと そんなことを思う。
クリスマスだから?
オレを起こすために?
オレに生きてほしいから?
自分は……死んだくせに……
死んで あんなに…………
その時 浮かんだ光景──
それが 風晴の瞳に 光を戻した
視界に 横たわる 聖が入る
聖に焦点を当てる
冷たい岩石に置いた右手に力を込め、左手は震えを止めるように左膝を抑えて上体を起こす。両足に力を込める。
──立て!! しっかりしろ!!!!
自分を怒鳴りつける。
左手は膝から滑ったが、バランスを取って右手はちゃんと上半身を支えた。
膝の震えは完全には おさまらない。それでも無理やり前に出して歩き出した。
────聖の元へ。
行ってしゃがみ込み、息をしていることを確認する。そして、身体が酷く冷たいことも。
聖は薄着だった。温めなくてはいけない。
風晴はポケットから金森香世からもらった『貼るホッカイロミニ』を出して、聖のロングTシャツをめくると下の肌着に貼った。
それを貼りながら、話しかける。
「オレ諦めるところだった──ごめんな」
聖から返事は無い。
それでも風晴は言った。
「オレ達必ず帰るぞ、聖。帰らないと……」
そこまでで言葉は止まる。
聖をしばらくただ見つめてから────冴木拓眞をもう一度……見た。
風晴は立ち上がり、冴木拓眞に再び…………彼の後ろから近づいた。
届かないだろう声を──それでも、かける。
「冴木さん。…………本当にごめんなさい」
風晴はそうして、冴木拓眞の着ていたダウンジャケットを脱がせた。本格的な防寒用で温かそうだ。それを聖にまず かけた。
次に──また冴木の元に行き、彼のブーツと靴下を脱がせる。
風晴は歯を食いしばった。
────何も 考えるな
と必死に繰り返す。
手を止めるな
泣くな
そんな時間も きっと無い
生きて戻る
生きて必ず帰る
ただ それだけを 繰り返した。




