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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第6章 聖夜の悲劇

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047 その声を聴け

ー登場人物紹介ー


※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。

 




 その声は確かに 自分を呼んでいた




 "風晴" "風晴"




 聞きおぼえのある声


 顔を上げると




 "やあ"




 とその人は片手を上げた



 サンタの服装で (ひげ)もつけていた



 でも 分かった



 当然(とうぜん)じゃないか



 父さんなんだから



 ああ 会いに来てくれたんだな


 クリスマス・イヴだから…………









(なま)(しろ)い東京の子達では、すぐにも死んでしまうだろうな」


 そう耳に男の声が届いて──桜田風晴はハッとした。


「朝は最低気温はマイナスだって。ここなら本当に冷凍庫になるから──仮に目が覚めて体を動かしたって……助からない。入り口には私達が鍵をかけるし、出口は山だから。あの格好(かっこう)じゃ、そっちでも無理(むり)だろうね……」


 次は女の声だ。


「……こんな若い人達を……。私は 嫌になるよ……」


 その次は別の女の声。

 そうして元々ある程度(ていど)離れたところから聞こえていた声達は、複数(ふくすう)の足音と共に遠のいて行った。

 何人いたかは──分からない。多分5人くらいの気がした。

 人気(ひとけ)が無くなって、目を開けて息を()いた。すぐさま(おそ)ろしいほどの寒さに気付く。


 身を起こして、いくらかでも(かた)く冷たい石の上から(のが)れたいが、両手と両足はロープで(しば)られていた。


 クソッ……! なんだってこんなことに……


 と、ようやく頭が働きだした。

 衣装室(いしょうしつ)にいて、部屋に戻ろうとしたら白い(きつね)の面の連中(れんちゅう)が入ってきて聖を……


 そうだ! 聖は!?


 風晴は再びハッとして、あたりを見回す。

 首を(めぐ)らすと、自分の頭の上の方に包帯(ほうたい)()いた足がある。


 聖の足だとすぐに分かった。


「聖! 聖! 起きろ!!」


 何度か()(かえ)し呼びかけたが────だめだ。聖は起きない。

 風晴はだんだんと状況(じょうきょう)が分かりだした。


 さっきの声の連中に自分と聖は衣装室から連れ去られ、ここに置き去りにされたんだ。──凍死(とうし)させるために。

 ここは朝方には天然(てんねん)冷凍庫(れいとうこ)()みになるらしい。

 今のままの状態(じょうたい)では、(こご)えて死ぬのを待つだけだ…………


 ゾクリ、と(ちが)う寒気も自分を(おそ)った。

 死への恐怖(きょうふ)がせり上がって()き気さえ(おぼ)える。

 だが暗闇に目が()れてくると、もう1人……若い男性も自分の足の下の方で横たわっているのが見えた。


 3人いる……!


 なんとなくだが、風晴はなんとかなる気がしてきた。

 下の方の人にも


「すみません! 起きて下さい!! 起きた方がいいです!!」


 と繰り返すが、やはり(まった)く動かない。


 そうか……


 風晴は思い当たった。


 自分は頭を殴られて気絶(きぜつ)した形で運ばれた。だからすぐ意識(いしき)を取り戻した。聖は(つか)まる時に薬を()がされていた。そのせいで簡単(かんたん)には起きないのかもしれない。──そして、もう1人の人も。


 自分がなんとかしなくては、3人共死ぬ…………!


 そう思い──手は背後に回されて縛られていたが、芋虫(いもむし)のように動いてなんとか身体(からだ)を起こした。するとカラン と音がした。

 見るとポケットからペンライトが落ちたのだ。ガラポンの景品の。

 それで 風晴は思い出した。


 ()()()()()()だ!! 聖のポケットには水樹からの折りたたみナイフが入ってる!! コイツどっちに入れてたっけ?


 記憶を探りながら,(かさ)なるスプーンのように聖に()()ってそのポケットを探った。────確かにあった!! 良かった!!

 気持ちだけなら水樹に次に会った時に()きつきたい想いだった!前回に引き続きなので、もう"ナイフの女神"とか呼びたくなった。ただ、どっちも秀一に(おこ)られそうだからやめよう。


 見えずに、後ろに縛られた両手でナイフの刃を出して刃部分をロープに当てるのは難しかった。気持ちが(あせ)っているせいもあってか、何度か失敗した。だが繰り返しているうちに切り込みは入り、ロープは ほどけた。


 ホゥッと息を()らして、次は足のロープを切った。

 身体が自由になってだいぶ元気も出てくる。聖の方の手と足のロープも切ってやった。


 そうして、風晴はペンライトをつけてナイフを持って立ち上がった。周囲は、思っていたよりも様々な物があった。

 (たな)や、(たる)や木箱──探せば何か使える物がありそうだ。

 だがとりあえず3人目の人のロープも切ろうと、そちらにペンライトを当てた。──そこで気がついた。

 ライトの当たったその人の手足は、縛られていなかった。

 少し不思議(ふしぎ)な気持ちはしながらも風晴はその人に近づき、彼が冴木拓眞だと分かった。


「冴木さん……」


 声をかけてみるが、やはり返事はない。

 違和感(いわかん)を感じながら、風晴は彼の身体の前に回り込んだ。

 手をかけた時、その筋肉の(かた)さに驚く──そして、ペンライトが彼の腹部を照らした時、風晴は思わず身を引いていた。


 彼の腹部は赤く()まっていた。

 闇の中では分からなかったが、ベージュのハイネックセーターとグレイのジャケット……そしてズボンにまで血が()れた(あと)があった。



 風晴は尻餅(しりもち)をついた。



 立ち上がれない。



 (ひざ)(ふる)えは、寒さだけのものでは無かった。








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