045 失われた鍵
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○橘信蔵・華蔵家執事。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○松下寿明・喫茶店・寿店長。
「冴木さんから聞いていました。ここの近くに夏に涼しいと評判の────風穴のような洞窟がある、と。この洋館から行方不明になった人達は、そこに運び込まれている可能性があると思う」
ワァッ と声が上がった。
見当がついて みんな一歩前進だと喜んでいるのだ。だが正火斗は 苦しげな表情で続きを述べた。
「どこかで養ったり、隠したり、遺体処理に……困らないためだと思う……」
彼自身も言いたくない言葉ばかりだ。喉が詰まる。
「冴木さんは奥に行くほど涼しくなると言っていた。──冬に……仮に薬で眠らせたり、ロープで縛って洞窟に置いてくれば……凍死することが……確実だから」
聞きながらみんなの表情も沈んでいく。言い終わるとすぐに又、正火斗は何かを振り切るかのように言葉を繋いだ。
「橘さん、運転ができるなら車を出してください。車が駄目なら歩きでもいいです。洞窟の入り口に行きたい!」
橘は
「運転はできます。しかし……あそこの入り口は……」
と目を逸らし言葉を濁す。
答えを待つ正火斗には、松下が声をかけた。
「あそこの入り口は40年くらい前から硬い鉄の扉ができて、デカい錠前が2つもついている。行っても開けられないはずだ。
僕らが子供の頃に通り道に使った穴も、とっくの昔にコンクリートで固められたと聞いてる」
正火斗は珍しく感情的な声を上げた。
「誰かが今夜もそこに行って人間を3人置き去りにしてきている可能性はある!! ここから近くて、見つかりにくくて100年以上前からあり続ける──天然の冷蔵庫!
扉の錠前の鍵はどこです? 所有者がいるんでしょう!?」
「正火斗くん……」
理人の声だった。彼は妹のこともチラリと見て、気にしながらも──言った。
「所有者は……葉崎家だった。さっき話に出た、母の高校の恋人だった葉崎達哉の実家だよ。
鍵は達哉の父親が上着のポケットにいつも入れていたんだが、息子の達哉がある日その上着を着て出て行っていた。──それが1999年12月24日だ。
そして彼は翌日の25日に行方不明届けが出てる。父親の上着と共に──」
正火斗は理人の説明を聞いていた──呆然として。
「その後……鍵は作られていないと思う。
父が元気な頃、葉崎家ゆかりの人に鍵の話をしたら"山中側にも穴はあるし、安全のためにつけた扉だから閉まったままでいい"と……考えていたそうだ。
それから、葉崎達哉の父親は今は痴呆症で介護施設だ」
ドンッ!!!
その音の荒々しさに誰もが驚いた。
正火斗が両拳をテーブルに叩きつけていた。
悔しそうに唇を噛んでいる。
秀一も一拍遅れてだが気がついた。他のミステリー同好会メンバーも──次々に。
正火斗の仮説はかなり正しい可能性が高い。
1999年に葉崎達哉が父親の上着と共に連れさられ、その時犯人達が、彼の上着から洞窟の鍵を見つけた。
そして、彼はその鍵によって開けられた葉崎家所有の洞窟に……置かれたのだろう。
誰も近づけない冬の間は、鍵を持つものだけが行けるのだからこの上ない隠し場所だ。しかも、動けないようにして放っておけば確実に死なせられる。
春になれば鍵を使うなり入山するなりして、あとは雪が溶けた山の中に埋めてしまえば──
時が経ってたまたま入り口の扉横に穴があき、子供達が夏に涼しさを求め探検に通るようになっても、その頃には何も見つからない。
問題は今 所有者には鍵は無く、鍵を持っている者は決してすすんでは現れないだろうことだ。
当然だ──鍵を持っている者は、葉崎達哉連れ去りの誘拐犯であり 殺人者なのだから。
叩きつけた拳が震えないようにすることに、正火斗は集中する必要があった。
今このあいだにも
冴木拓眞
真淵聖
桜田風晴
3人の命が脅かされているかもしれない
冷たい──洞窟の中で……




