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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第6章 聖夜の悲劇

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041 そして失われる者達

ー登場人物紹介ー


※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


華蔵理人かぐらりひと・華蔵家現当主。

華蔵透子かぐらとうこ・理人の妹。


冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。


 



 和装(わそう)から着替えた正火斗は3階の当主の部屋に入っていた。


 当主の部屋は当然、(ぐん)を抜いて素晴(すば)らしかった。広々としていて────調度品(ちょうどひん)はアンティークの高級なものばかり。絵画も名のある画家のものばかりだ。


 母が屋敷(やしき)ごと欲しがるわけだ


 正火斗は1人納得(なっとく)した。


 壁には写真も何点か(かざ)られている。かつての当主達の(ゆかり)のものだろう。

 モノクロの軍服の男性達と包帯(ほうたい)を巻いた人々との写真もあれば、様々な世代の大人数で── 一族で撮ったらしい──写真、眼帯をした着物姿の女性の写真、男性や子供達と車椅子の女性のいる写真、ヘリコプターと白衣の人達とスーツの男性が写っているもの等がある。



 シャワーを使い、では寝ようかと思った時に何か違和感(いわかん)を感じた。────隣の部屋に。


 風晴や聖はもう休んだんだろうか?


 自分が隣に来て通じる扉もあるのに、彼らが一度も来ないことの方が……不自然(ふしぜん)な気がした。なんとなく。

 ────それに静かだ。静か過ぎるほどに。


 寝室の奥の“開かずの扉”を開いた。

 寝室も、その先のもう一つの部屋にも(あか)りが(まった)く無い。


 2人はまだここに戻ってきていないのだ──と理解する。


 同時に背中を()(のぼ)るような悪寒(おかん)が走る。だが瞬時(しゅんじ)に打ち消した。



 落ち着け!────大丈夫だ

 ()()()()()が起こるわけがないのだから



 だが、シャワーで()れた髪のまま靴下も()かずに足早に部屋を出た。


 聖は足を負傷(ふしょう)していた

 下でトラブっているのかもしれない


 階段を2階まで降りて、正火斗は衣装部屋(いしょうべや)に向かおうとした。──その時、1階からその絶望(ぜつぼう)の声はした。









「いない!! ……いなくなってしまった……!! ああ、やっぱり……やっぱり"白吹(しらぶき)の呪い"が……!!」


 それは華蔵透子(かぐらとうこ)の声だった。彼女はもう眼鏡(めがね)をはずし、女中服を脱いでいた。こんな深夜なのに、服の上にコートを来て手袋をしていて──近くには投げ出されたキャリーケースが見えた。


「……透子さん……どうしたんですか? 何が……」


 座り込んで涙目(なみだめ)の透子は正火斗を見上げた。


「…………いなくなってしまったんです。──冴木(さえき)さんが」


 そう言って透子は顔を(おお)った。

 階段の途中(とちゅう)の正火斗に、背後(はいご)から声がかかった。


「少し前に車が2台出て行くのは窓から見た」


 華蔵理人(りひと)だった。彼は続けた。


「変だと思ったんだ。招待客も手伝い人も帰ったはずの時間なのに。しかも2台って言うのが……」


 嫌な予感(よかん)(おそ)われて、正火斗は上下スウェットに裸足(はだし)だったが(かま)わずに


()ります」


 と靴棚(くつだな)の上に並べてある黒い長靴を取った。()いて玄関扉を開けるとそこには吹雪の光景(こうけい)があった。


「正火斗くん!! その格好(かっこう)じゃ寒いよ!」


 言いながらも理人もパジャマ姿だが、懐中電灯(かいちゅうでんとう)を取り、長靴に慌てて足を入れ着いて来た。

 極寒(ごくかん)の強風にさらされながらも正火斗は、かすかに残るタイヤ(こん)のところまで出て行った。 だが風と降り続く雪に、それはもうかなり(うす)れている。


 玄関脇(げんかんわき)にはセンサーつきの外灯(がいとう)があり、正火斗と理人に反応(はんのう)して灯りがついた。

 後ろからは理人の懐中電灯の灯りも正火斗の見つめる積雪(せきせつ)のあたりを照らしてくれた。

 正火斗は雪に埋もれながらも、キラリと光を(はな)ち、そして強い色味を出していた──()()()(ひろ)い上げた。


 そして 彼は動かなくなった。


 正火斗の異常に気付いて理人は彼の左手を(つか)み、力づくで引っ張って(やかた)の中に戻した。玄関を閉める。

 (こご)えるような寒さで、理人は屋内で尚 身震(みぶる)いした。正火斗の髪はいくらか()てついてさえいたが、彼はただ手のひらの中の拾ったものを凝視(ぎょうし)している。


「一体何を拾ったって言うんだ?」


 理人も正火斗の手のひらにあるものを(のぞ)()む。

 そして一言


「クソッ……!」


 と()らした。

 彼らの後ろからは透子の(なげ)く声が(ひび)く。


「私が告白したから……私が好きになってしまったから……。“白吹の呪い”が……あの人を連れ去ってしまった……」



 正火斗は何もかもを受け入れたくなかった。



 その手のひらの上には……

 玄関前のタイヤ痕近くで拾った

 ガラポン抽選機の金と青の玉が──確かにあった。









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