039 フィナーレへ
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○橘信蔵・華蔵家執事。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○天羽生颯・白吹村引きこもり男性。
"家から少しは出て働け"────
聖が言った言葉は、天羽生颯に彼の母親が言っていたものだ。風晴が教えて言ったものを、聖はちゃんと覚えていた。
それを言われた途端、天羽生は早々に退場した。
残った聖にミステリー同好会メンバーは駆け寄った。
「聖! よく頑張った!!」
「やりましたね!」
「アレは効いたと思うな」
「カッコイー! 流石オレのマブダチ!!」
水樹、神宮寺、秀一、桂木である。正火斗は最後に来ると
「覚えていて偉い」
と聖の頭をポンポンした。聖は
「お母さんは大変……だから」
と言った。
この言葉の重さを、友人達は知っている────
風晴や浅倉、椎名も合流し、"告白ゲーム"では合計9組のカップルが成立した。
予定通り正火斗は聖に告白したが、思っていたよりもずっと周囲からの祝福は温かかった。天羽生颯のことをかなりの人が見ていたからかもしれない。
正火斗は珍しく楽観的な気持ちになった。この後行方不明者が出る展開とは──とても思えない。
今夜はこのまま終わるのではないか……と。
2025年12月24日午後10時20分
人々が帰る時間となり、正火斗と水樹は──それぞれ理人と透子として招待客の見送りをした。
帰り際の玄関ホールには、どデカいガラポン抽選機がいつの間にか設置されていた。
3位の景品が"当主のお天気予報"になっているため、正火斗はそこで例の
"12月24日深夜から猛吹雪。
12月25日早朝 吹雪はおさまる見通し。
最低気温氷点下4度。
12月25日 快晴。最高気温5度。
雪崩に警戒"
を連発しなければならなかった。
ガラポン抽選機1位は、華蔵家クリスマス宿泊券だ。朝食もついているので毎年喜ばれている。
今年はなんと──喫茶店"寿"の店長松下寿明が引き当てた。カランカランのベルも……シャンシャンではなく──鳴る。
椎名は驚いていた。
「松下さんだ!!」
松下は椎名に気づいて
「運良く、明日の朝メシまで ありつけたみたいです」
と笑顔で言った。
ミステリー同好会メンバーも最後に参加した。桂木、神宮寺、浅倉は5等のポケットティッシュだった。風晴と水樹は4等のペンライト。
椎名は2等で、ラブッキーくん缶バッチだ。椎名は本気で喜んだ。水樹は
「いいなぁ、ラブッキーくん私も欲しい」
と呟いていた。
風晴は、隣で安西が眼鏡に手をかけていたから少し怖かった。
こいつ、ラブッキーくんに入ろうとでもするんじゃないだろうか……
聖の番となり、聖は楽しみにしていたガラポンを回した。ガラガラと周りポンと丸い緑の玉が出る。緑は──
「3等〜お天気予報〜」
とラブッキーくんの"中の人"が言った。
松下はすでに宿泊部屋に案内され、その場にいるのがミステリー同好会メンバー、風晴と聖、橘とラブッキーくんだったため──正火斗は
「あなたが言われたらどうですか?」
とラブッキーくんの中にいる理人に言った。何しろ、正火斗は嫌になる程あの同じ内容の言葉を繰り返していたからだ。
「僕? ラブッキーくんは天気予報はしないんだよ。頼むよ"華蔵家当主"。最後の1人じゃないか」
「僕はもう40回くらいあの天気予報を言いました! 3等が4等より多いのはおかしい!!」
それに返した理人の言葉は予想以上に真っ当だった。
「今日はこれから吹雪になるから3等を増やしたんだ。悪天候を告げて注意するのが華蔵の役目だ」
だが正火斗も真っ当な理論を述べた。
「なら、天気予報は4等や5等にすべきだろう」
「"当主のお天気予報"は4等以下にはしない!!」
当主と偽当主がレベルの低い口論している中、ずっと聖が見つめているものに風晴は気がついた。
「聖もしかして……それ、欲しいんじゃないか?」
みんなも正火斗と理人も 風晴の指差した先を見た。
そこには抽選機から出た緑の玉が転がっていた。
聖は一度風晴の方を見てから、でもうつむいてブンブンと首を大きく振った。
「……………………これは……もらえないもの。……欲しがったら、駄目なもの」
聖は自分に言い聞かせるようにそう言った。
「だけど、欲しくなる気持ちはわかりますよ。私小さい頃ビーズやビー玉を集めていました。こういうカラフル球形、欲しくなります」
椎名は優しく聖に言った。
「オレは子供の時そもそも景品が貰えるって理解してなくて、出た玉が貰えるって勘違いしてたんだ」
風晴がそう言うと笑いがどっと起こった。彼は少し赤くなって
「なんだよ、出た黄色や白の玉がもらえる──って、椎名じゃないけど結構嬉しいんだ」
と説明した。
やりとりを聞いていたラブッキーくんが
「橘、予備の玉を」
と執事に声をかける。そして橘が金、銀、青、白、緑、黄色、赤とさまざまな色の玉の入った袋を持ってくると
「その子達にあげて。それぞれ、2等の銀に 4等の青のと──1等の金色で」
と言った。椎名と風晴は驚いて聖の顔は輝いた。
「華蔵が寄贈したガラポン抽選機だから問題ないと思う。クリスマスなんだから子供の頃の夢でも叶えて。真淵聖くんはとっても頑張ってくれていたから3等から1等にランクアップ」
3人はそれぞれ玉をそれぞれ受け取った。全くの子供扱いをされて風晴はやや複雑だったが、椎名や──そして聖がニコニコになり嬉しそうだったので良かったと思うことにした。
水樹がフフフと笑って
「理人さん、よく見てらしたんですね」
と言った。
理人は少し間があったが
「いつでもここから見ていたさ。当主だからね」
と少し諦めたように認めた。
それぞれのクリスマス・イヴが終わろうとしていた。
いろいろあったが、思っていたよりもずっと素敵な夜になった。
だが、正火斗は最後にラブッキーくんの呟きを耳にした。
「吹雪は来る。──それに白煙が舞い上がる」
窓の外は確かに、雪と風が混じりだし 吹雪になり始めていた────
シロクマシロウ子名物(?)幸せの時間の終わりです。
さあ、次の新章から………………いよいよ始まりますよ。
明日7月18日お休みを頂きます。連載から初お休み!ʕ•ᴥ•ʔ
そして7月19日より【新章 聖夜の悲劇】──事件が始まります!
7月19日夜21時半頃投稿で2エピソード
7月20日夜21時半頃投稿で2エピソード
7月21日夜21時半頃投稿で4エピソード
7月22日は午前4エピソード・午後(日中)7エピソード
投稿予定です。
はやくも今作では盛り上がりシーン参ります。
イッキにいきます。
よろしくお願い致します<(_ _)>




