038 ラストトーク真淵聖
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
桜田風晴がトークタイムに励んでいた頃、大広間では一つのある山場が起ころうとしていた。
振袖女装中の真淵聖の元に、黒のトレーナーにベージュのチノパンスタイル。頭頂部は髪が薄く太り気味で背が低い──そうだ! 天羽生 颯 が現れた!!
「真淵さん。来ましたよ。待っていてくれてありがとう」
天羽生はニタリと笑みを浮かべて言った。
水樹は聖を守ろうと前に出ようとしたが、正火斗の方が速かった。
「天羽生さん。ご苦労様です。しかし彼女は話すことは苦手なんです。大切な妹の友人ですから、無理強いはしないでやってほしいんです。」
静かで丁寧な言い方だが、正火斗の口調は有無を言わせぬものがあった。だがクリスマス・イヴに女子と話したい男の執着は、男前のカッコイイセリフによって、ますます燃え上がっていた。
「彼女は僕のプレゼントを受け取ったし、トークタイムを嫌がってもいない。それに、あなたの好意を受けるより僕に想われた方が幸せなんだ。──そこをどいて下さい」
なるほど
正火斗はある意味、納得した。
天羽生は、当然"白吹の呪い"を知っている。正火斗に好かれるのはその相手にとっては行方不明になるリスクがある──だから彼は聖のために、自分が退く必要が無いと思っている。
──ややこしいことになった。昨日から もう何度も思っている気がするが。
天羽生を撃退する方法はある。告白ではなく求婚すればいい。今この場で、聖に。
だけどそんなことまでするのか? しかも打ち合わせてもいない。聖だって断るかも。いや、受け入れてもらっても困るんだ!!!
大道正火斗の優秀な頭脳も軽くパニックっていると、後ろから羽織を聖がクイクイと引いていた。
正火斗が振り返ると、聖は言った。
「トークタイムに……参加する……」
聖は正火斗と目は合わせなかったが、ハッキリと言った。
正火斗は迷ったが
「……………………見てるから。水樹と」
と告げると身を翻した。
水樹は不安そうに聖を見ていたが、聖がうなずくのを確認して兄の後を追った。
秀一や神宮寺も近くに来ている。桂木も大広間の入り口に来たところだった。
聖の向かいの椅子に天羽生颯は座り、彼は自分の好きなバーチャルアイドルの話や声優アイドルの話、作ったグッズの説明をしたり、たまにYouTubeをあげていることを話した。それから白吹村の悪いところや不便なところ、不満を口にしたりした。
聖の体は大広間中央を向いたままで、天羽生と向き合ってもいなかったが 時折
「ふうん……」
とだけは言っているようだ。
やがて10分が経とうとしていた。
詰めだと思ったのか、天羽生は聖の方をしっかりと向いて言った。
「僕は見かけはこの通りですが、あなたに害したり危険は与えません。僕は優しく善良な人間なんです。真淵さん、あなたから見て僕はどうでしょうか?」
すると──聖がその日初めて体の向きを変えた。大広間中央を向いていたものが、天羽生颯に向いたのだ。
ミステリー同好会メンバー……に限らず、大広間にいる人たちの視線が集まる。
真淵聖はゆっくりだがハッキリと言った。
「" 家から 少しは 出て 働け "」




