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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第5章 聖夜の対話

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037 トークタイム桜田風晴

ー登場人物紹介ー


※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


華蔵理人かぐらりひと・華蔵家現当主。

華蔵透子かぐらとうこ・理人の妹。


斉藤豊子さいとうとよこ・華蔵家女中頭。





 椎名美鈴と桜田風晴のいる食堂の前の廊下で、桂木慎は告白をされていた。桂木の返事は──


「無理。そういうのは やらない」


 と言う(ことわ)りだった。

 そして廊下を歩き出す足音もして、斉藤豊子(さいとうとよこ)(まご)という女子の声も遠ざかりながらも聞こえた。


「分かった。分かりました。今日はそれでいいです。でもまだこれから知り合って、最後の日に付き合っても…………」


 そうして2人の声は遠ざかった。

 風晴と椎名は大きく息を()いた。


「あの調子(ちょうし)なら大丈夫だと思う。付き合いたくないんだよ、きっと」


 それにしても押しの強い女子だった。


「でも彼女……全然(ぜんぜん) (あきら)めてはいないです……」


 椎名もまだ気にしている。無理もない。

 風晴は聞いた。


「告白は……考えたりはしない?」


 椎名は(はげ)しく首を左右に()った。


「とってもできません。私はおかっぱのメガネ女子でオタクで……運動音痴(おんち)で、私服も可愛いくないです。

 告白は(おそ)れ多いし身の(ほど)知らずです。した後話せなくなる地獄(じごく)を思うと今のままでいいです。今のままなら、からかいでも話しかけてもらえます」


 冗談(じょうだん)()め言葉や賛辞(さんじ)も──だ。だけど……

 風晴は椎名が気の毒になった。この後この館では椎名は(つら)い想いが待っているかもしれない。せめて……


「告白は無理でも、もっと仲の良い先輩と後輩になったらいい。とにかくあの"紅白饅頭(こうはくまんじゅう)"──アイツにやって。そのために()ったんだろう?

 桂木が"食べたことないからもらったら嬉しい"って言っていたから」


 椎名美鈴は 風晴を見つめて 大きく うなずいた。









 椎名美鈴との話は延びた──桜田風晴は走っていた。


 もう1人の女性との約束に遅れそうだ……! いや、もう遅れてるかも……!


 とにかく走って音楽サロンルームに入った。

 部屋の時計がすぐ目に入った。9時53分だった。


 トークタイムが終わった人達がほとんどで、その人達は告白ゲームのために大広間に向かっている。

 それでも音楽サロンルームには、1人の女性がいた。

 コートを着ていて、自分がプレゼントにしたマフラーをまさに()いているところだった。

 風晴はその人が今、そのまま身支度(みじたく)をして帰ろうとしていたのだと直感(ちょっかん)した。──間に合って良かった。


「桜田風晴です。遅れて申し訳ありません。プレゼント受け取ってもらってありがとうございます」


 彼が息を切らしながら言うと、その50歳の女性──金森香世(かなもりかよ)はニッコリと微笑(ほほえ)んでくれた。


「まあまあ、私のような おばさんのために走ってきてくれるなんて嬉しくなるわ。ありがとう」


 それから見るからに気の良さそうな彼女は、申し訳なさそうに言った。


「申し訳ないわね。もっと若い子に渡したかったでしょうに。ごめんなさいね」


 風晴と金森は握手(あくしゅ)をした。


「息子がね、東京にいて今年は帰って来ないの。あっちで彼女が出来たみたいで。クリスマスはそりゃあ彼女と過ごしたいわよね。こっちに来るより」


 なんとも言えず、風晴は苦笑(にがわら)いをした。


「そうしたら"母さん今年はプレゼント探しに参加しなよ"って言われちゃったのよ。私がシングルマザーで長いことやってきたからだと思うわ。もう大昔に、趣味の雪山登山で夫が遭難(そうなん)してしまってね」


風晴は小さくうなずいた。


「オレの祖父が若い頃 山に登っていたらしくて、やっぱり冬に帰り道を見失ったことがあると言ってました。祖父は無事(ぶじ)に戻れたんですが……」


そして続ける。


「息子さんの気持ち……分かります。オレの母親もシングルマザーなんです。だから、今回ここに来るとき、1人にするのが(すご)く気になったんです」


 金森は"おや!"というふうに目を丸くした。


「母親のところには 他の用事もあって親戚(しんせき)が泊まりに来てくれています。

……だけどオレは良かったです。金森さんにマフラーが渡って」


 金森は目を細めてウフフと笑った。彼女は本当に嬉しそうだった。


「私わかるわ。あなたのお母さんは幸せよ。あなたという血の(つな)がりのある息子がいて」


 風晴と母に血の繋がりは無い──だが、彼は迷わず うなずいた。あの人が母で、自分は息子だ。


「マフラー本当にありがとう。外が寒そうだからいい物をもらったと思っていたところよ。──そうだ、良かったらあなたには これをどうぞ。この時期 私はどこにでも持ち歩くの」


 金森はコートのポケットの中の手袋と一緒に出てきた『貼るホッカイロミニ』を風晴に差し出した。

風晴は普段(ふだん)は使ったことのないものだが、(だま)って受け取った。


吹雪(ふぶ)いてきそうだからもう私は帰るわ。────ハッピークリスマス!」


 ニコニコした金森香世はそう言って手を振って出て行った。

 風晴も手を()った。

 そして大広間に行こうとサロンルームを出ると、すぐに


「桜田くん」


と椎名に呼びかけられた。

 泣き顔を洗ってから行くと言っていた彼女は、今 丁度(ちょうど)来たようだ。と思っていると──


「いいクリスマスですね」


と椎名に言われた。音楽サロンルームの扉は開いていた。会話は聞こえていたらしい。

 風晴は少し恥ずかしくなり


「オレは満足してる! 行こう!」


()け出した。

 椎名も にっこり笑って走り出した。









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