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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第5章 聖夜の対話

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036 トークタイム椎名美鈴

ー登場人物紹介ー


※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


華蔵理人かぐらりひと・華蔵家現当主。

華蔵透子かぐらとうこ・理人の妹。


斉藤豊子さいとうとよこ・華蔵家女中頭。


 




 椎名美鈴(しいなみすず)は、眼鏡(めがね)の青年──松下寿明(まつしたとしあき)と9時になるとすぐに音楽サロンルームで会った。

 今日は振袖(ふりそで)になったので(はず)したが、椎名も普段(ふだん)は眼鏡をかけている話から始まり、10歳の年齢差はあったが2人の会話は途切(とぎ)れなかった。やはり松下の喫茶店(きっさてん)の話にもなり、祖父が老後に始めた"寿(コトブキ)"という喫茶店を()いで2年前から店長だと教えてくれた。


 松下は椎名の連絡先等はきかなかったが、喫茶店の営業時間は教えてくれて"いつでもどうぞ"と言ってくれた。

 椎名はクリスマス・イヴに見知らぬ土地で良い時間を()ごせたと思った。


 ────この後は桜田風晴と食堂で会う予定だった。








 応接室のさらに奥が食堂になっている。

 椎名が食堂に入るとき、1組の男女が丁度(ちょうど)出て来て入れ(ちが)いになった。

 あとは風晴だけのようで、彼は食卓テーブルの1番奥にいたが立ち上がって手を()ってくれた。

 椎名は嬉しくなって、()け出していた。



 桜田くんは言ってくれたんだ──包装紙(ほうそうし)を届けに行った私に

 "紅白饅頭(こうはくまんじゅう)は椎名が欲しいかなと思っていたから良かった"って



 人もいなくて助かったと彼女は思った……。







「桜田くん、ありがとう。私、紅白饅頭が本当に欲しかったんです。

 桜田くんがくじを引いてくれて良かったです。私、もう……いろいろ、いっぱいいっぱいで……」


 最後はもう椎名が泣きそうだったので、風晴は(あわ)てた。


「大丈夫!! 聞くくらいしかできないけど、オレで良かったらいつでも聞くから!! やっぱり、ミステリー同好会メンバーには……言いづらい?」


「みんな優しいから……言ったら変に気を回したり……応援(おうえん)してくれると思うんです。

 でも、そんなのって向こうに迷惑(めいわく)です。ああいう人だから……女の子にはみんな優しいもの。それが、変な空気になっちゃう気がします」


 2人は座る間もなく、テーブルで向き合って立ったまま話だしていた。


「桜田くんは……どこで気付いたんですか? 夏休みからですか?」


 風晴は答えた。


「──いや。夏休みは全然。

 昨日来てから、なんだかその……椎名がアイツが言ったあと、よく相槌(あいづち)うっていたり話しかけてたりして。それからその……なんとなくアイツを見てるのかなぁって思ったりしてたんだ」


 風晴が言い終わるが早いか


「わぁああ!!」


 と椎名は両手で頭を(かか)えてしゃがみ()んだ。風晴はびっくりしたが、彼女に近づいた。椎名が取り乱すのは初めて見た。

 しゃがんでうつむいたまま、椎名は話し出した。


「最近駄目(だめ)なんです。ついついつい隣に行っていたりするんです。どうしても……目で追っていたり。

 前はこうじゃなかったんです。ただ……ただ(あこが)れていました。水樹先輩と浅倉先輩がいるんです。私なんか無理だって分かってました。思わせぶりな優しい言葉は、嬉しくてもちゃんと冗談だって分かってました。──だけど……」


 風晴も隣にしゃがんだ。


「夏休みに水樹先輩と安西先輩が上手(うま)くいって、秋には正火斗先輩と浅倉先輩が付き合い出しました。

 ──彼の女子全員への賛辞(さんじ)は変わらないです。でも私……」


 椎名の(ひとみ)から涙が(あふ)れる。


「私……桂木先輩にドキドキするようになっていました……。……どうしよう……桜田くん……」



 ──どうにもしてやれなかった──自分には


 答えを与えてあげれなくて

 救うこともできない

 だけど苦しんでいる 大切な友達



 風晴は椎名の頭をなでた。軽く優しく。


 椎名はしゃがんだ姿勢(しせい)のまま、自分の(ひざ)に顔を()せて声を殺して泣いた。







 



 椎名はしばらくの間 泣いていたし、風晴はそれに()()っていた。

 その時──()()()廊下(ろうか)から聞こえてきた。


(しん)くん、ここの"告白ゲーム"は男性から女性にするだけなの。だから、突然(とつぜん)だけど今言わせて下さい!」


 "慎くん"?

 風晴と椎名は顔を上げて 話し声のしてくる扉を見る。まさか──


「東京に帰るまででいいの! お願いします! 私と付き合って下さい!!」


 "東京"? これって──

 風晴は立ち上がった。だが足音はひそめた。


「なんで? 会ったばっかりなのに。しかも東京に帰るまでって…………」


 桂木の声だ!! この扉の向こうの廊下で告白されてる!!

 椎名も涙を()いて扉に近寄って来た。やがて


「会えますよ! 私は斉藤豊子(さいとうとよこ)(まご)だもの。手伝いに ここにはよく来ていますから!」


 と言う声も聞こえてきた。風晴と椎名は顔を見合わせた。


 桂木の返事は?

  あのバカ"東京に帰るまでなら付き合うよ"なんて もし言ったら、後で水樹にもバラしてやる


 不安(ふあん)そうな瞳で扉を見つめている椎名の前で風晴は思った。

 桂木の返事は──……







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