033 トークタイム安西秀一
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○天羽生颯・白吹村の引きこもり男性。
いなかった──聖、水樹、正火斗が大広間に戻ってくると、安西秀一はすぐに声をかけた。
「正火斗、ちょっと渡したいものがあるんだ」
兄だけを聖夜に彼氏が誘ってそう言うので、水樹は複雑な顔を一瞬した。
「"透子さん"とも後で話したい──凄く」
秀一は笑って言った。
トークタイムは他の人と話すことが禁じられているわけでもない。今は"透子"役の水樹とは2人だけで長時間いることはできないが、"ミステリー同好会の仲間"として話すくらいは許されるはずだ。水樹は深くうなずいてくれた。
秀一と正火斗は大広間の窓際の一角に移動した。
今はだいたいの人は他所で話をしているようで、人はほとんどいない。
窓から 降り始めた雪が見えた。まだ吹雪と言う程ではないが、強まる予感がした。2人はそれを確認はしたが、それには触れず秀一は本題を切り出した。──今は天候の方はどうにもならない。
「正火斗、浅倉の手袋のデザインって今言える?」
突然の──思いがけない問いかけだった。正火斗は無言だ。どんな難問も大抵答えを出してきた彼は、解答不可能だった。
「あの真淵くんのプレゼントの横にあったもう一つのプレゼント──僕がもらっただろう? 中身はこれだった」
秀一は持っていた手袋を、2人の間のテーブルに置いた。幅のあるブラウンとベージュが交互のデザインになっているストライプ柄の手袋だった。秀一は言葉を続ける。
「水樹と浅倉はよく一緒にいるから。僕は知っていた──浅倉の手袋はベージュと白のストライプ柄で……今年自分で編んだんだって」
そして彼は最後に告げた。
「これは正火斗が もらうべきだと思う」
正火斗は浅倉の編んだ手編みの手袋を手に取った。見つめて──
「ありがとう」
と言った。
「それ、僕に言う言葉じゃないだろう?」
幼馴染みは遠慮なく言った。正火斗は'もっともだ"と思った。それでも
「教えて届けてくれたことに、だ」
と述べて席を立った。
戻っていく正火斗の背中を見ながら秀一は考え込んだ。 正火斗は手編みの手袋に全く喜んでいる感じはなかった。むしろ……辛そうですらあった。どうしてか──あの2人はちっとも幸せそうじゃない。
視界にラブッキーくんのLOVEの刻まれた栗に触れ、拝んでいるような男性がいた。それを何度も何度も繰り返している。願掛けのようだとすぐに察しはついた。
誰かとこの後トークタイムだったり、告白しようとしているのかもしれない。片想いや恋って必死になるよなぁ……と、秀一は約4ヶ月前の自分を思った。
しかし、それをしている──黒のトレーナーにベージュのチノパンスタイル。髪の毛の頭頂部は薄く太り気味で背が低い男性が思い当たって彼は戦慄した──
それは天羽生 颯 だった




